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夫会議「議題」:嫁に注意をすること 武田視点




えりが部屋で休むと言ってリビングから出て行ってすぐ、俺たち三人は重々しい空気を背負って、リビングのテーブルに座した。

そりゃそうだろう。

このリビングで話しているときのえりの顔、

「ちょっと部屋で休みますね」と言ったときのえりの声、

リビングを出て行くえりの後ろ姿、

どれもこれも、俺たちの動きを停止させた。




「やっぱり・・・あの話は衝撃的だったのでしょうか・・・。」


ぽつりと呟く向井さんのその言葉に、俺は戸惑う。


「衝撃をうけたのは事実だが、あれは伝えておかないと、今後の俺たちの関係に支障が出るだろう。」

「それはそうですが・・・。」

「それとも、えりと離縁することになってもいいのか・・・?」

「そんなこと・・・!嫌に決まっているじゃないですか!でも、もう少しこの世界に慣れてからでもよかったんじゃないですか・・・?」


向井さんは、えりに甘々だからなぁ・・・。ま、俺も石川さんも、えりからすれば、過保護に見えるのかもしれないけど。

でも、石川さんの判断は間違っていなかったと思う。


「あのな、えりは記憶喪失じゃないんだぞ?」


そう、えりは、記憶喪失じゃない。

でもこの世界の常識を知らない。前の世界の常識しか知らない。

むしろ、前の世界の常識が、えりの判断を誤らせる。


「えりに記憶がある以上、記憶喪失の異世界の妻や、この世界の妻と違って、危険なことが多い、と考えた方が良い。」

「それなら、私たちがフォローすれば良いではないですか。」

「そのフォローも、三人でできるのはあと三日間だけだ。三日後には2人になるし、一週間後には1人になる。目を離したり買い出しに行っている間に、何があるか分からない。」

「それは・・・。」


うん。そうだよね。本当に、何があるか分からないんだ。

俺たちが、えりの世界の常識を理解していれば、事前に察して動けるけど、生憎俺たちもえりのいた世界の常識を知らないのだから、その場その場で常識の違いを確認していかなければならない。

そう考えると、さっきの石川さんのあの話は、良くも悪くも、えりの自由な行動を制限することに成功しただろう。

そう、良くも悪くも、だ。


「ただ、まぁ・・・。俺も予想外だよ。えりのあんな顔。ちょっと俺に対して当たってくるもんだと思ったのに・・・。」

「そうだね・・・。」


俺も、そう思った。えりって、ちゃんとしている所があって、ちゃんと周囲のことも気遣ってくれるし、優しいんだけど、えりの中でコレっていうものを譲らないところがあるんだよね。だから、俺たちがえりの意見を突き返したら、ちょっと拗ねたり、機嫌が悪くなる程度だと思ってたんだ。だから、俺も石川さんの話を止めなかったし、むしろ損な役回りをさせて申し訳なかったなぁって思ったくらいだった。


それを、あんな・・・。



「えりの、あんな、諦めたような顔・・・見たくなかったです・・・。」



俺も、向井さんも、石川さんも、えりのその表情を見たとき、本当に言葉が出なかった。

まさかそんな表情をされるとは思わなかったし、俺たちの話の何がそんな顔をさせたのか分からなかったから。

多分、三人ともびっくりした顔をしていただろうけど、えりは俺たちと顔を合わせないまま会話をさっさと終わらせて部屋に戻ってしまったから、気付かれなかったんだと思う。



「あの話を聞いて、どう思ったのでしょうか。」

「えりの質問から想定すると、"離縁"より"職を失う"ところに興味があったようだな。」

「職を失うなんて、別にまた新しく仕事を探せばいいから、問題ないんだけどなぁ。」

「ま、"離縁"したとしても、"嫁の我が儘で離縁した夫"の就活よりも"嫁のために国によって離縁させられた夫"の就活の方がなかなかうまくいかないとか聞くけどな。」


そう。嫁の我が儘で離縁することって実は結構ある。特に、この世界で生まれた女性は、それが多い。夫が気にくわないから、さっさと離縁したり・・・夫が10人いるけど欲しい男がいたら飽きた夫1人と離縁したり。まぁ、そんな女性が多いって言っても、あんまりないらしいけど。

そういう場合は、もともと夫候補になる者は学力が高い人ばかりだから、就職先も結構あるのだ。夫になるための申請を取り下げたら、どんな職場でも働けるし・・・忙しい職場とかで就職して、仕事一筋で生きていく人もいる。

だけど、えりに話した方の"嫁のために国によって離縁させられた夫"は、確かに就職しにくい。できるとしたら、今の社会に対して不満に思っているところだけだろう。社員数が少ない中小企業とかになる。

この世界は、女の人に対して害を為す者に対してとても厳しい。

俺だって、女の人を悲しませたり傷つけたりする人を許せないし。

もしかしたら、この常識も、えりの世界とは異なるのだろうか。


「俺たちが職を失うってところに衝撃を受けた、って考えなんだが、どう思う?」

「そうですね。恐らく、そうなのだと思いますが・・・。でも、それって、えりが私たちの心配をしてくれている、ということでしょうか・・・。」

「多分そうだよ。だって、えりって優しいし。」

「嬉しいことですが、そのことからえりが諦めたような表情をする理由は、分かりませんね・・・。」

「なんであんな表情をしたんだろう・・・。」


しゅんとする俺たちと違って、石川さんは、ちょっと思案しているようだ。

それにしても、石川さんってメンタルすごいなー。

俺たちよりも石川さんの方が落ち込んでいると思うのに、それを見せないんだもんなあ。


「ちょっと、想定以上にややこしいことになったかもしれないな。」

「え?」

「それは、どういうことでしょうか?」


石川さんの、不穏な発言に、俺も向井さんも一瞬で気持ちが冷めた。


ややこしいこと?





*長文注意(読んでいただかなくても問題ありません)*


以前に感想でいただいていた一つのご指摘、夫たちの休みが3日と1週間と、矛盾が生じているとのことでしたが、ちょっとした伏線でした。田中と石川がさらっと言ったことですが、えりがちゃんと認識していなかったために流してしまっています。

本当は感想をいただけたことが嬉しくて、すぐに返信をしたかったのですが、このような理由でネタバレになると思い、返信できませんでした。申し訳ありません。

こちらでこの説明をしている理由としては2点あり、1つは感想を書いていただいた方がどのタイミングでこの話を御覧になられるのか分からないので、下手に感想に対する返信をするとネタバレになったり、今さらの返信でもう見るのをやめたのに「見て下さい」という催促でその方の負担になる可能性があるので、それを避けたいために、この場を借りて感謝と謝罪をしたかったからです。ありがとうございました。そしてごめんなさい。

そして2つめは、今後、感想を書いていただいた方には、完結後に返信することを宣言しておきたかったからです。ネタバレ分を明言せずに返信すると「伏線」の存在をネタバレすることに繋がったり、返信できる方だけに返信するとそれもおかしな話だと思いましたので、誠に勝手ながら、そのようにさせていただきます。ですが、いただいたご意見・ご感想は、大切に読ませていただきますので、いつでも受け付けております。むしろいただきたい←


長文になりましたが、いつも読んで下さっている方、ありがとうございます。

たまたま立ち寄った方も、ありがとうございます。

初心者が気ままに書いている作品故、つたない文章で読みづらいかと思いますが、ブックマーク・感想・評価に励まされています。

これからも気が向いたときに立ち寄っていただければ、有り難いです。


それではまた機会がある時に、「後書き」にてお会いしましょう。

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