お金の話2
「じゃあ、お金の管理方法とか、誰が管理するのかとかも、学校で習いましたか?」
「ああ、生活費は夫たちで管理するように習ったが・・・。」
ふむ。生活費は、夫たちの給料から2分の1を合算したものだけど、夫たちで管理してくれるなら、それは任せても良いかな。今の話から推測すると、この夫たちだったら、お金を管理しつつ余ったお金をギャンブルに使うこともないだろうし。
「それじゃあ、お金の管理は皆さんにお願いしますね。ただ、給料が変動する可能性を考慮して、その都度金額を変えるのも面倒なので、全員が毎月10万円ずつ、と決めるのはどうでしょうか。」
「10万円、ですか?それだと少し安いのではないかと・・・。」
「3人分の給料しかないからな。12万円でいいと思うんだが?」
「えっと、じゃあ石川さんにお伺いしますが、一人暮らしをしていて、毎月どれくらい生活費で支払っていましたか?」
ここでいう生活費は、食費とかその他消耗品のこと。物価が元の世界の日本と同じくらいだったら、恐らく・・・。
「大体、多く見積もって5万程度か?外食とかもあったから、家で食べてると3万程度だ。」
「一人5万円なら、四人で30万円だと十分ですよね。」
「ま、まあ十分だけど・・・。でも、えりが食べるご飯なんだから、良い食材の方がいいんじゃない?」
「今日の朝と昼の食材は、どちらで入手されたんですか?」
「時間もあまりなかったので、近くのスーパーですが・・・。」
そのスーパーで買った食材で十分だ。
野菜も新鮮だったし、お肉も良い色をしていた。
私がお金がなくてきつかった時は、もっと色が茶色になっていたものを使って料理していたんだから、あの食材で十分贅沢だと思う。
「そのスーパーで買ってきてもらった食材を見ましたが、お肉も野菜も新鮮でよさそうでした。下手に高い食材を使うより、あれくらいの食材の方が扱いやすいし、食べやすいです。もしも、三人が普段からもっと良い食材を使っているのなら、そちらの良いのですが・・・」
「いや、そこは俺の行きつけのスーパーだからな。新鮮さが売りで、値段もそこそこだから、あそこ以外は使ってないくらいだし。」
「私は・・・近くのスーパーや職場からの帰りに寄ったところで買うだけですので・・・。」
「俺も、あんまりそういうの考えたことなかったけど・・・」
「それじゃあ、今日買い物に行っていただいたスーパーで食材を購入すると仮定して、毎月30万円の生活費で十分ですね。」
三人は、納得したように頷いて、反論はなかった。
よし、ここで、あの話を切り出そう。
生活費を三人のお金だけでまかなうなんて、私の良心と罪悪感がそれを許さない。
「それで、生活費は30万円で足りると思うのですが・・・ちょっとそれだと私が納得いかないので、私のお小遣いからも10万円出させていただきまして、毎月40万円の生活費で家計を回してもらいたいです。」
「「「え!?」」」
「えりにお金を出させるなんて・・・!!」
「お金が足りないなら、やっぱりもっと僕たちの給料からお金を出して・・・!」
「いえ、お金は足りています。暮らしてみないと分からないですけど、多分毎月大分余ると思います。そうではなくて・・・三人にだけお金を出させるのは、不公平というか・・・。」
働いていないけど、私も国から給料は貰っている。しかも余るほど。40万円も自由に使えるお金があって、そこから生活費のために10万円払ったとしても、痛くもかゆくもない。むしろ、残る分の30万円も、毎月のお小遣いとして使える気がしない。外出しないから使い道もないし、さっき聞いた贅沢三昧な生活をするつもりもないので、お金が余ることは確実だろう。
まあ、不足の事態が起きたり、予想外の出費があるかもしれないけどね。
「不公平も何も、妻っていうとお金を自分のために使うもんだ。俺たちが働いて稼いだ分で、生活費をまかなうのは当たり前のことだぞ?」
「そうですよ!えりにお金を出させるなんて・・・。」
「でも、私だけお金を出さないなんて、肩身が狭いです。国からもらえるお金ですけど、生活費って私の分も含まれていますよね?それなら、私も払わないと、平等じゃありません。」
そう言うと、三人は眉間にしわをよせて俯いた。
私の言っていることは理解していると思う。
間違ったことは言っていないし、この世界の常識とは違うかもしれないけど、彼らにデメリットはないのだから、これも受け入れてくれる。
そう、思っていたんだけど・・・
「えり、それはちょっと受け入れるわけにはいかない提案だ。」
石川さんが、重々しくそう告げた。
「え、なんでですか?」
「この世界の常識と言ってしまえばそれまでなんだが・・・。はっきり言うと、俺たちがえりから生活費を貰うのは、俺たちの名誉にも関わる。」
名誉・・・?
「名誉って、どういう・・・。」
「嫁にお金を出させるっていうのは、甲斐性の無い男だと世間的に思われるし、俺たちのプライドとしても譲りたくないところなんだ。」
甲斐性の無い男・・・。
って、別にそんな風に思われるほどのこと?夫婦で平等にお金を出し合うだけだよ?
「そんな、だいそれた話なんですか?」
「それくらいのことだ。えりにとっては、理解しがたいかもしれないが・・・。そうだな、例えばの話をしよう。」
そう言って、いつの間にか向井さんによって用意されていた紅茶を飲んで喉を潤した石川さんは、意を決したように話し出した。




