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結婚は断固拒否





この世界の大体の話はわかった。

私の、この世界の話を信じろという勘を、とりあえず信じてみるとして…。


卵子提供を断って良いなら、申し訳ないけど甘えさせてもらおう。

これがドッキリではないのなら、話の雰囲気で、元の世界に帰れそうもないだろうから…次は、私の住む家の話をしないといけない。


「私の住む場所なのですが…」


国が保護するって言ってたから、国の管轄地で住むことになるのだろう。


「国の管轄地に住んでもらうことになりますが…セキュリティがしっかりしているマンションの、一つの階が貴方様の住まいになるかと思います。」


一つの…階?


「セキュリティのしっかりした建物でなくては、安心して住んでいただけませんから。ほかの異世界からいらっしゃった女性も、この世界で生まれた女性も、同じく、そのような住まいでございます。」


なんて贅沢な!?


老後に独身貴族として悠々自適に暮らす予定を立てていた流石の私でも、ここまで派手なのは想像してなかったわ。

私って貧乏思考なのか…?お金持ちならこんなこともありえるのかな、よく分からないわ。


でも一人でそんなところで住んでると、むしろ虚しくなりそう。


あ、でも、もしかしたらそれほど大きなマンションじゃないのかもしれない。

一つの階に二部屋とか…


「ちなみに、一つの階の部屋数はいくつくらいなのでしょうか…」


「大体は…15ほどでしょうか…正確にはまだなんとも言えませんが…」


おっきいマンションだったよ…!


「そんな場所、家賃絶対払えません!普通のマンションの一室で良いので、変えてもらえませんか?」


「それはできません!そもそも、女性の住まいは国の管轄地!お金の徴収はしません!もちろん、光熱費や、水道代もですよ。ですので、住まいにお金の心配はせずとも結構です!」


はい!?

え、何それそんな美味しい話があるもの!?

住む場所を提供してくれると言っても、安くすませれば良いのに。それほどセキュリティに気を配らないといけない国なの!?

うまい話には裏があると言うし、なんか怪しいような気がしてきた。


私の表情から読み取ったのか、田中さんはふるりと顔を振った。


「女性が産まれなくなってから今まで、この国は女性を尊重し、大切にしています。貴女の世界には、そのようなことはなかったのですか?」


要は、絶滅しそうな種族を保護するようなことはないのか、ということか。

確かにあったなぁ…。絶滅危惧種なんかを保護して繁殖させたり、手厚く育てたり…

って、それじゃあ私は動物ってこと!?


「それに、多くの男性は、女性の生の声も聞いたことがないのです。生で見たこともなかなかないでしょう。しかし、我々の体は女性がいなければ存在しなかった物。感謝していますし、見守り、健やかに生きてほしいと思っている者が多いのですよ。」


そのためには、安全に過ごせる家が必要。

なるほど、なんか納得はできないけど…理解はした。



「わかりました。家は、有り難く住まわせていただきます。」


ポジティブに考えよう。家賃なしで、光熱費とか水道代も払わなくて良い。

これ、出費を抑えられて、この世界でも独身貴族目指せるんじゃない!?





「その他、この世界は貴女の生まれ育った世界とは異なることが多く、分からないことで不安になることがあると思います。日常生活のサポートや安全面を考慮して、夫を3名〜10名選んで、その者達とマンションで住んでもらいますので…。そうですね…高野さんの好みのタイプを伺ってもよろしいでs」

「夫!?」


今夫なるものを複数人選べというような言葉が聞こえたんだけど…!


「結婚しろってこと!?」

「あ、は、はい…」


食い気味の私の反応に、田中さんは思わず仰け反った。申し訳ないけれど、今は田中さんの反応なんて気にしていられない。

本日一番私を絶望させる言葉を聞いた。


独身貴族願望がある私に…結婚しろと宣ったのだこの男は!



説明を聞いていても、よく分からない世界ではだけど、元の世界にそれほど未練があるわけでもないし、この世界で生きて行かないといけないのなら、それはもう仕方がないかもしれないと無理矢理納得しようとした。それでも、これだけは納得できない。


結婚せずに、一人で生きていくこと…これは、私の夢でもある。


こんなよく分からない世界で、唯一私に説明してくれる田中さんに対して、失礼な態度は極力取らないでおこうと思っていたけれども、これは別件。


「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。」


「え…ええ!?」


田中さんはあり得ないという表情をするけれど、この世界の常識はどうなっているんだ!

さらっと夫を決めるものなの!?

女の人が少なくても、子供は胎外受精でなんとかなるって言ってるし。果たして夫はいるのか…?


「失礼ですが、高野さんの世界での結婚観はどのようなものなのでしょうか…」


正直、こんな重要な話をさほど問題ではないように説明しだしたことにはすごく驚いた。でも、田中さんは親切に、この世界の常識を押し付けるのではなく、まず私の世界の常識を理解しようとしてくれる。

ならば、私も歩み寄るべきか…と、一般的な結婚を田中さんに説明した。


一夫一妻制で、恋愛結婚が普通で…一部お金持ちの人は違うかもしれないけど…と、結婚願望ない人が結婚の知識を披露するなんて滑稽な姿だと思う。

話してて恥ずかしくなってきた。


「なるほど…高野さんの世界と、この世界の地軸が変わる前の結婚までの順序や一般論は、あまり違いがないようですね…」


ないのかい!

真面目に説明したのが恥ずかしいんだけど!



「すみません。私の配慮が足りなかったようです…。この世界に来る女性は記憶がありませんので、分からないことだらけで不安にある人が多く、一生助けてくれるパートナーを数人選ぶ旨を伝えると、少し戸惑いますが安心してくれることが多いのです…。」


だから、分からないことがあれば尋ねられる人が複数人いるし、ずっとサポートしてくれるから安心して過ごしてくださいねーといった雰囲気で最後に説明するのだという。

そう言われると、なんかちゃんと説明しなさいよ騙してるんじゃないのか、と思う反面、

何も分からない、自分のことも知らない状態では、暮らす上での説明をされてもそれだけで頭がパンクするだろうし余計混乱してしまう。最低限説明するけど、サポートしてくれる人がいるから、困ったら何でも聞けるし生きていける環境を提供しますねーと言われた方が、安心かもしれない。


なるほど、私がイレギュラーであるために、田中さんも丁寧に説明はするけれど、どう配慮して良いのか分からないのかもしれない。


仕方がない。いきなり結婚の話を持ってきたことはもう置いておく。

しかし、この話の流れだ。田中さんは、夫を最低3人は決めて欲しいという主張を変えるつもりはないだろう。というか、決まりごとっぽいし変えられないのかもしれない。



それでもこれだけは伝えなければならない。




「私、生涯独身でいることを目標に生きようと思っていますので」


結婚はお断りさせていただきます!





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