年齢の話
私も、気がついたら武田さんにだけタメ口になっていたし、別に向井さんや石川さんに対して壁を作っているわけではない、んだけど・・・。
武田さんは、同じ歳か少し下くらいなので、抵抗なくタメ口になれた。でも、向井さんや石川さんは同じ歳か上くらいだと思う。年上の可能性がある人に、いきなりタメ口なんで出来るだろうか。ましてや出会って一日もたってないんだし。
「と、いうわけで・・・三人の年齢を確認しておきたいのですが・・・。」
「もし、もしも・・・その報告した年齢が、えりよりも年上だったら、今後も距離のある話し方になるのでしょうか・・・。」
「え、俺も?でも、年上だったとしても、もう丁寧語にならないよね・・・?」
「えり、女性に年齢を聞くのは失礼だって分かっているが、年齢を教えてくれ。」
いやいやいや。
それ、私が先に年齢を言ったら、その年齢より下を答えるつもりでしょ。
ここで嘘ついて、ずっとそれを貫くつもり?無理があるからね!
「いえ、夫婦なのに知らないというのは、おかしな気がしますので・・・。」
そう言って、野菜炒めを食べると、三人はちょっと難しい顔をしながら、手に持った箸を置く。
というか、石川さんがちょっと意外なんだけどなあ・・・。夫婦との距離とか、あんまり気にしないと思ってた。
お昼ご飯のみそ汁をみつめながら、向井さんがぼそりと呟く。
「・・・歳です。」
「え?」
ちょっとよく聞こえなかったので、私も箸を置いて、聞き返す。
「17歳です。」
嘘つけ!!
武田さんと石川さんが、驚いた顔してるよ!
分かりやすい嘘をつくな!
「俺、18歳だ。」
「俺はー16歳かなあ。」
二人も悪ノリしないでもらいたい!考えながら年齢を言ってるの、バレバレだからね!
なに、「かなあ」って。自分の年齢をそんな曖昧に言う人、あんまり見たことないよ!
「あの、年齢は正直に教えてもらいたいのですが・・・。」
「年齢を言う代わりに、普段の会話の改善を要求してもいいか?」
年齢を言うことと、普段の会話をタメ口にすることって、交換条件になるような同等の価値があるの?
年齢くらいさらっと言って欲しい。
「あの、年齢が上だったらずっと敬語を使うってわけではなくて・・・。慣れるまで待って欲しいだけです。そのついでに、年齢を聞いておきたいってだけで。」
流石にずっと敬語を使っていると、こちらも肩が凝るし。
というわけで、教えていただけませんかね・・・。
「・・・そういうことでしたら、年齢を言います。ほんとですよね?えり、近いうちに砕けた話し方をしてくださいますよね?」
と言う向井さん、あなたも敬語だけど、それやめてもらえるんだよね?
「じゃあ、その時は向井さんの敬語も無くしてくださいね。」
「私のこれは、癖なので・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・敬語を無くします。努力します。」
癖だから直せませんってのは無しだからね!何それずるい!
「じゃあ俺から。ついでにフルネームも含めて自己紹介し直しとくわ。石川俊太、29歳。血液型はA型。好きな食べ物は・・・、一緒に暮らしていくんだし、これはそのときに言うわ。以上。」
かなり簡潔に自己紹介をしてくれたけど、好きな食べ物を聞いておきたかった。いや、できれば嫌いな食べ物の方が良い。嫌いな食べ物が無い人なんだったらいいんだけどね。夕食のメニューで苦手なものが出てもアレルギーじゃない限り食べてよ?
「それでは、次は私が。向井智、27歳です。血液型はO型で、好きな食べ物は・・・いくつかありますが、今朝えりが作ってくれたご飯は、好物になりました。」
「あ、初めて食べるものがあったんですか?」
「い、いえ、そうではなく・・・。食べ慣れたものではあったのですが、今朝のは特別美味しかったのです。」
なるほど、石川さんが味付けしたあのご飯、美味しかったもんなあ。私も負けてないつもりではあるけど、あの味がお望みなのか・・・男を虜にする男の手料理なんて、流石料理男子、石川さん尊敬するわ。
「えり、そんな目で俺のこと見ているが、多分考えてることは見当違いのことだと思うぞ。」
「まだ私の表情が読めるんですか?」
「いや、今のは分かりやすかったからな・・・。」
なぜかあからさまに落ち込んだ向井さんを置いて、武田さんが自己紹介に入る。
「武田真人、24歳。B型で、好きな食べ物は・・・えり当ててみてー。」
「え、ハンバーグとか?」
「うーん、ハズレ~。でも、えりの作るハンバーグは食べてみたいな!」
私の作るハンバーグを気に入ってくれるかは分からないけど、作る限りは及第点をとれるよう頑張ります。仕事をしない分、家事で頑張らせてもらう。
「んじゃ、次はえりの番だな。」
「えっ?」
何が?
「え?って・・・。えりも、自己紹介してよね!えりの歳とか好きな食べ物、知りたいし・・・。」
「そ、そんな興味を持つような内容でもないんだけど・・・。」
そんな興味もたれると、ちょっと恥ずかしいよ。
歳とか伝えてどん引きされたりしないよね・・・?
思った通り、武田さんは私より三つ歳下だった。向井さんは同じ歳だし、石川さんは二つ上。まあ、誕生日が分からないから、お互いの年齢差は変動するかもしれないけど。
四人の中で丁度真ん中だから、よっぽどの年の差ではないけど・・・。
嫁は若い方が良いとか思われたり・・・しないだろうか。特に私よりも年上ではない武田さんと向井さん。
誤魔化す気は一切ないけど。
うーん・・・。
「高野えり、です。血液型はA型で、歳は・・・27歳。好きな食べ物とか嫌いな食べ物はあんまりありません。」
ちらっと三人を見ると、武田さんと向井さんがとても嬉しそうな顔をしていた。
ええ?
「えりよりも俺、年下だった!えり、俺と話しやすいよね?仲良くしようね!」
「いえ、武田よりも、私とえりの接点がありましたよ。同じ歳です。これで、私とも砕けた話し方をして下さいますよね?」
うん、年齢に関する懸念は無意味だったということが分かりました。




