朝食を食べましょう
「えり、手際がいいな。」
「石川さんこそ。」
向井さんと武田さんが食器などの準備をしている間に、私と石川さんで簡単に朝食を作っているのだけど・・・。
味付けは石川さんに任せることにして、私は野菜の皮むきをしています。
皮むきは・・・ピューラーだけどな!
包丁で剥こうと思ったら、三人から全力で止められた。
比較的女性の扱いが元の世界の男性と近いと思っていた石川さんでさえ、ぎょっとして止めてきたから、潔く言うことを聞いたよ。この世界では包丁で剥かないの・・・?そんなことないよね・・・?
「にんじんとジャガイモ剥けましたよ。」
「ああ、じゃあ俺が切るから、えりはたまねぎを「どれくらいのサイズで切りましょう?」っと・・・そうだな、じゃあ二センチくらいの幅でいちょう切りにするか。」
私が切ろうとしたら、取りあえず様子を見ようと、包丁を譲ってくれた。皮を剥くのを反対したのは、その方が怪我しやすいからかね。まあ、包丁で野菜を切ることくらいはさせてもらわないと、三日後のご飯が心配だし、強引にでも譲ってもらう。
無理せずに、普通にトントンと切っていく。
普段使っている包丁と違うので、ちょっと使いにくいけど、しばらく使っていると慣れるだろう。
「えり、ほんとに料理してたんだね・・・。」
「こら、武田、えりに話しかけてはいけません。集中が切れて怪我をしてしまうかもしれませんから。」
「あ、ごめんなさい・・・。」
気がついたら、横にいる石川さん以外の二つの視線を感じた。
調理台の向かいにあるカウンターから、向井さんと武田さんがこちらを見ている。
うーん。そんなに見られていると、ちょっと緊張するな・・・。
「小学生のころからご飯は作っていたので、これくらいは・・・。」
お父さんとか親戚の影響で、小さいころからご飯は私が作ることが多かったからなあ。お母さんは朝から晩まで仕事だったし。得意でなくても小さいころから取り組んでいたら、ある程度は出来るようになるものだ。
「大丈夫そうだな、それじゃあ野菜は任せたわ。」
「あ、はい。」
ある程度私の手際を見て判断して、石川さんは鍋の方に向かった。
ちょっとは信用してもらえたみたいだ。
よかった。
これでちょっとは過保護が無くなるかな。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
ただ、向井さんと武田さんの視線はずっと感じているのだけどね。
見過ぎ!!
さて、野菜をさっさと切って、ウインナーもちょっと切って鍋にいれる。
その間に、石川さんがサンドイッチに入れる具材の調理。卵とハムを簡単に焼いて、塩コショウで味付けをした。
「石川、パンの用意は出来ていますよ。」
「ああ、さんきゅ。そのまま皿に乗せて持ってきてくれ。」
向井さんが、焼いた四枚のパンを皿に乗せて持ってくる。
そのパンの上に、卵とハム、マヨネーズとケチャップを混ぜたソースを塗って、パンで挟む。
「えり、このパンを二つに切ってくれるか?」
「わかりました。」
私は様子を見ていた鍋の火を弱火にして、パンを切る。
私と交代で、石川さんが鍋の様子を見て、小皿に少量スープを入れた。
「えり、パンが切れたら味見を頼む。」
「はい。」
てきぱきと石川さんが動くのだけど、一緒にご飯を作るのは初めてなのに、私も自然に身体が動く。作り方が分かるし、多分調理工程とスピードが同じくらいなのだろう。次に何をお願いされるのかだいたい分かる。
私たちの動きを見て、武田さんがスープの皿を出してきた。
向井さんは、カウンターでいつ配膳を頼まれても良いようにスタンバイしてくれている。
料理をするときって一人の時ばかりだったから、皆で協力して作るって楽しいかもしれない。
「石川さん、私はちょうどいいと思います。ただ、念のため、石川さんも味見をしてください。」
「そうか。えりがいいっていうならそれでいいんだが・・・一応みてみるか。」
私の持っていた小皿をさっと取って、それにちょっとスープを入れて味見する。
「ああ!」
武田さんが、石川さんを指さした。なんだなんだ。
「また新しく皿出すと、洗物増えるだろ。」
「だからって、えりが使ったお皿をそのまま使うなんて・・・!」
向井さんが石川さんに牙をむく。
別に同じお皿使っても何とも思わないんだけど。
「効率的だと私も思うのですが。いけませんでしたか?」
いちいち新しく皿を出してから味見をして、さらに洗物が増える。ちょっと味見をするだけなのだから、同じのを使ってもいいだろう。
もしかしてこの考え方、雑だったりするのだろうか。
「え、えりがそう言うなら・・・。」
ちょっとだけ悔しそうに引いてくれたけど、あまり納得はしていない様だ。
うーん。正直、何に対して怒っているのかイマイチ分かっていない。え、マナー違反だとか、下品とか、そういうこと?向井さんって丁寧語で話しているからか、決まり事とかマナーにはうるさそうだもんなあ。
「はしたないとか、そういうことでしょうか?」
「え、」
「いえ、私が使った皿をそのまま使うのが、はしたなかったのかな、って思ったので。」
「え、ち、違います・・・!」
そうじゃないんです!と必死に訂正してくるが、それじゃあどんな理由でだめだと言うのか。
ちゃんと説明してもらいたい。
「とりあえず、ご飯できたから食べないか?」
向井さんがなんとか説明しようとしているところで、石川さんから待ったがかかった。
すでにスープを皿に入れている。
「じゃあ俺がスープ持って行くから、向井さんはサンドウィッチ持って行ってね。」
武田さんも行動は早い。
私も、慌てて切ったサンドウィッチをそれぞれ皿に乗せて、向井さんに渡した。
なんだかんだと料理中に一悶着はあったけれど、完成した朝ご飯はなかなか美味しかった。
「えり、このスープ美味しいです。」
スープの味付けは石川さんがしたんだけど・・・。
けどまあ、なんだか分からないが、向井さんの機嫌が一気に良くなったので、突っ込みは入れるまい。




