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デジャヴ




ベットで寝そうになってから、ふいに思い出して机に向かった。


この世界のことをパソコンなり紙なりにメモしようと思っていたことを忘れていた。

三人は俺たちを頼って、と言っていたけど、全部頼るのは嫌だし、説明を受けたことはきちんと忘れないようにしておきたい。


パソコンを起動して、メモ欄を開いて書き込んでいく。

パソコンの中身も、また今度確認しないといけないなあ。でも今日はもう疲れたので、メモだけにしよう。


およそ30分程度でメモをして、時計を見ると・・・大分良い時間だ。

そういえば、私はもう寝るけど、三人ともお風呂まだだったような・・・

ああ、私との話を優先してくれたんだよね。

今になって思えば、私結構自分勝手だったんじゃないかなあ。

あー自己嫌悪に陥りそう・・・

三人との話し合いの結果は、後悔していないしお互いの折衷案だから問題ないんだけど、自分の主張を聞いて貰いたくて話を急かしたおかげで、今ごろ三人はお風呂に入っているんだろうし。三人の寝る時間とかを考えてなかったな・・・


そう考えると、ちょっと眠れなくなってきた。

せめてそれを謝ってから眠ろうか。





パソコンの電源を切って、化粧室のドアからリビングに向かった。


「あの、すみませ・・・」

「え!!」


ドアをあけると、武田さんが半ズボン+上半身裸で髪の毛を拭いていました。


「ええええ、えり!?」


あ、これが眼福ってやつですね。

ごちそうさまです。

でも私、家で風呂上がりのお父さんが裸で自然乾燥していたのを幼い頃から見ているので、今さら上半身裸を見ても何とも思いませんよ。今まで彼氏もいたことあったしね。「きゃー!」なんて可愛いこと言えなくてごめんね。

だからって、武田さんの方が「きゃー!」なんて言わないで下さいね。すごく言いそうな雰囲気と表情だけど、不可抗力なので。他二人に変態なんて思われたくないので。お願いしますねホント。私が襲ったなんて誤解はされたくない。


「なんだ!今度はどうした!」


そしてまた、武田さんの悲鳴?を聞いて、丁寧語が抜けた向井さんと、遅れて石川さんがやってきた。

この二人は腰にタオルを巻いた状態で、濡れたままです。


「えり!!?」

「あー・・・。」


デジャヴだ。

うん、ごめんなさい。石川さん。タイミング悪かったよね。私が悪かった。だから、天を仰がないでください。今日は水難の相でも出てるのかな。風呂場ハプニングが多すぎる。


「えっと、すみません。三人の寝る時間が遅くなってしまったな、と・・・私の話を優先して頂いて、ごめんなさいって謝ろうと思って、来たのですが・・・。」


武田さんは自らを抱きしめる形で、向井さんは驚きのあまり硬直して、顔が赤くなっている。

初々しいなあ。

あ、これって、女性が男性に裸を見られた時の反応に似ているかもしれない。

ドラマとかで見たぞ。じゃあ、この後はやっぱり悲鳴かな、悲鳴だよね。


「うあああ!!」


羞恥心が限界突破した様子で、向井さんが風呂場へ消えていった。

同じく、そのタイミングで向井さんに触発されたのか、武田さんは肩にかけていたタオルで上半身を覆い、しゃがみ込んだ。

わあ可愛い反応。

今日一日で、武田さんと向井さんはいろんなものを失ったような気がするぞ。

とりあえず、見てしまったことは謝っておこう。


「あー・・・ごめんなさい。」

「・・・えりは何とも思わないのか?」


天井を仰ぐのをやめた石川さんが、それでも少し恥ずかしそうに、そう尋ねてきた。

普通はやっぱり恥ずかしいよね。

でも別に、なぁ。

三人とも、上半身の造形は、今まで見てきた男の人の中ではトップレベルで綺麗だなあと思う程度。

元の世界だったら俳優狙えるかもしれないね。

けど私はそれを見てどきどきしたり恥ずかしくなったりしませんよ。見なれているんで。興味もないし。


「綺麗な身体していると思いますけど、胸が高鳴ったり恥ずかしくなったりすることはありませんね。」

「そ、それはそれで・・・」


武田さんがちょっとショックを受けたように、項垂れた。え、なんで?

やっぱり、女の子に「きゃーかっこいー」って言われたかったのか?

でも私には難しい注文だなあ・・・。


「えーっと、かっこいいとは思いますよ?多分、元の世界の女の子だったら、黄色い声をあげて目の保養にすると思いますし。そのまま抱きしめて欲しいーって願望とか出る子も少なくないと思います。」

だから自信持ってください。

と、言った所で、リビングから出ることにした。

これ以上は三人とも身体を冷やして風邪を引くかもしれないし、謝罪は済んだ。これ以上こんな話をしても、実際そんな黄色い声あげる女性を見せろと言われても見せられないし。

うん、何より、興味はないがこの場に居続けることから、痴女と言われるのだけは勘弁だ。


「重ねてタイミングが悪かったようで、すみませんでした。今度こそ、おやすみなさい。」


ぺこりと頭を下げて部屋を出た。

ドアを閉める前に、石川さんが困った顔をしていたけれど、ごめんなさいねタイミングが悪かったことは見逃して下さい。

というかこの一日が本当濃いな。

もうさっさと寝てしまわないと、またドッキリを起こしそうで怖いわ!

そうと決まれば、さっさと布団に入るに限る。


布団に入ればさっき飛んでしまった眠気がよみがえる。

そうすると、さっきまで普通に動いていた身体が、鉛のように重たく感じる。

大分疲れていたようだ。

その感覚に抗うことなく目をつぶると、そのまま意識が飛んだ。


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