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武田side

これ以降、数話にかけて武田視点が続きます。





女性が生まれなくなって、早150年。


女性がいなくなる可能性が分かってから、社会が急激に変化したらしい。


俺はその時に生まれていなかったので、どのように変化したのかは分からないし、その変化を目の当たりにした人は死んでしまっていないので、歴史書などに残っている事からしか分からない。


女性とは、どのような者なんだろう。

昔は男性と女性が同じくらいいたらしいけど・・・。

今はもう、絵画などでしか見ることができない。


しかし、俺たちは女性がいることで、初めてこの世に生まれることができる。女性を見たことがないのに、俺たちの身体を形作る半分の細胞は女性から出来ている。

昔は女性の身体から赤ん坊は生まれたらしいけど、今は出産という女性の肉体に与える大きな負担を避けて、試験管の中で赤ん坊は生まれる。

俺の身体を形成した女性は、誰なのか分からないけれど、

俺はその話を10歳の時に学校で習って、女性ってどんなものなのか、気になった。


この世界では、女性と男性は同じ環境で育つことは無い。女性を見ることなく死ぬ人もいる。

それでも、女性と共に過ごすことができる制度が一つだけある。




それが、夫制度、だ。




夫制度があることも、その10歳の時に知った。

そして、女性の夫になるのは1人の女性につき、3人から10人まで。

女性は、人口八千万人程度のこの国だけでも、年に50人くらいしか生まれない。

これでも、科学の進歩が進んだおかげで50人も生まれるようになったらしいのだけど・・・。

そして、50程度生まれる女性以外にも、例外が一つあり・・・。

それが、神なる者が連れてくる、異世界人だ。


異世界人と言っても、見た目も言葉も何ら変わらない。

ただ、この世界に来る時に記憶がなくなってしまう。

夫制度があるから、異世界から来た女性は、生活のサポートも含めて夫をつけられると言っていたけど・・・


「夫制度、か・・・」




毎日学校でなんとなく勉強していた俺は、その時に、初めて本気で勉強しようと思った。


普通に勉強していたら自分のレベルに合った仕事を学校に決められて、そこに就職するものだと思っていたけど、女性に会ってみたいという目標ができた。目標を持つことなんて初めてだったんだ。


女性の夫になるためには、まず、15歳から進学する高等部で、夫予備コースに入らなければならない。そのコースは難関コースで、俺の通う地区の高等部だけでも入試で上位10人しか生徒を取ってくれない。


だいたいの男は、女性に会ってみたいしサポートしたいし・・・下世話なことを考えている人はいないだろうけど、まず夫予備コースを選ぶ。

俺はなんとか夫予備コースに10位で滑り込んだ。

すんごい勉強した。

けど、それ以降がもっと地獄だった。


普通のコースと同じ勉強をしながら、女性について、徹底的に学ぶ。

肉体の構造から、女性に対するマナー、記憶喪失の女性をサポートすることもあるので、何も分からない人に対してどうやって文化などを教えるのか、等々いろんなことを学んだ。

途中で脱落した人もいたけど、俺はなんとかぎりぎり進級できたけど・・・ほとんどテストに出てこない異世界の女性に対する勉強は、少しサボった。


異世界から来る女性は、基本は地毛が黒髪で同じ言語で、お米やみそ汁なんかを好むみたいで・・・

うん、異世界から来る女性の夫なんて、よっぽど優秀な人じゃないと回ってこない役割だから、俺は異世界の女性が好むものなんかの勉強よりも、マナーとかを必死に勉強した。


そして、なんとか高等部を卒業してから、夫資格を得て、学校が選んだ企業で就職した。


え、夫コースを無事卒業したら夫になれるんじゃないかって?


いやいや、女性が18歳になったら、夫を得ることになるけど、女性にも好みの男性がいるからね。

それに、女性が夫を何人必要とするかも分からないし、病気や寿命で亡くなってしまった女性の元夫も、再び別の女性の夫になることもあるから、コースを卒業してすぐに夫になる珍しい人もいるけど、だいたいは普通に就職して国からの連絡を待つことが多い。あ、夫になるからって仕事をしないわけじゃないよ。夫になってもならなくても、普通に皆就職するからね。ただ、夫になるとその分も国から給料を貰うことにはなるけど。

まあ、夫予備コースを卒業したってだけで箔が付くから、就職先は大手なのはありがたい。しかも、いつ嫁が出来るかわからないから、不意に休んでも良いようにだいたい人手が足りているところ。

だからって、だらだらと仕事をするつもりはない。

いつお嫁さんが出来るかわからないのだから、いつでも養えるように、プレゼントとかをたくさん買ってあげられるようにばりばり働いた。




そして、いつ国から電話が来るかなーと待ち続けること6年。

何度か電話があって、女性の元に出向いたけれど、夫にはなれなかった。



書類で通っても、面接で直接会って話したら、だいたい俺の声が少し高めなのと見た目が男らしくないせいか女性に夫として選ばれることがなかった。


けれど・・・この6年で、女性に対する気持ちが少し減ったかもしれない。



女性は、大切に育てられているから、優しくしないといけない。

重い物は持ってあげるのは当たり前だし、掃除洗濯など家事もさせない。危ないから。

男と同じように、女性も、見た目や身長、性格なんかもそれぞれ違う。

女性にお願いされたら何でも言うことを聞いてあげる。女性は移動範囲が限られているから、男が女性を喜ばせるものだ、と。

たくさん学校で学んだのに・・・。



「あなた、声たかーい。可愛いわねえ・・・私のわんちゃんだったら、枠をあけてあげてもいいけど?」


「やだあ。女の子の真似しているのー?華奢な身体。女装とか趣味だったりするー?」


「あんたの横にいたら、私が引き立て役になっちゃうじゃない!」


女性に、男性として見てもらえない。

女性に、敵意を向けられる。



俺の思っていた女性ってこんな感じなのかな。

守ってあげたいと思ったし、そのために仕事も頑張ったし勉強もしたのに・・・。



 


もういいかな。

もともと女性に会いたいって思ったところから勉強を頑張ったけど、でも、想像の女性とは違ったけど女性とは会ったし・・・。

どうせ、また国に呼び出されても、面接でバカにされて終わりだろう。


折角、仕事も頑張って貯金もたくさんしたのに、使い道がない。

ああー募金でもしようかな・・・。旅行に行くほどの時間をとるのも勿体ないし。



どこに募金しようか、と手に入れた資料に目を通していたら、数ヶ月ぶりに国から電話が掛かってきた。







そして、俺は高野えりと名乗る、異世界の女性と結婚することになった。



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