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今日は疲れたのでさっさとお風呂に入ります





私の要求を聞いて、まず初めに動揺したのが向井さん。

いきなり震えだし、「そんな、えりに、家事を・・・。」とぶつぶつ呟いている。


武田さんは戸惑ったようで、おろおろしている。どうしていいのか分からない様子だ。


そして石川さん。驚いただろうが、冷静に考えているようで、難しい顔をして考え込んでいるようだ。


今日はいろいろなことがあったから、さっさと寝てしまいたいのだけど、明日からの生活にも支障を来すので、この要求は今主張しなければならない。また、慣れてから主張するとなると、人がしはじめたことに対して、自分がやると主張する形になるし、あなたたちのやり方が気にくわないという意味に受け取られる可能性がある。


だから、こういうのは早い方が良いのである。




三人の反応を見ながら、私は沈黙を守る。

何と返してきても主張を押し通すつもりである。


少し沈黙が続き、一人が私と目を合わせた。



「えりが怪我するかもしれないなんて・・・俺は嫌だ。けど・・・それがえりの望みなんだよね?」


武田さんだった。少し意外だ。私の表情を読んだ石川さんかと思っていたからだ。

武田さんは、納得できていないのだろうけど、私の意見を尊重しようとしてくれる。


そして、武田さんに続き、石川さんはため息をついた。


「・・・まあ、えりの話を聞く限りでは、この世界の常識や決まりを大分受け入れてくれたようだしな。この家の中では、えりの過ごしたいようにしてもらいたい、と思う。」


やった・・・!なんとか、二人は私の希望を尊重してくれるみたいだ!!


後は向井さんだけだ。


向井さんの反応を伺うと、彼は私の主張だけではなく、武田さんと石川さんの発言にも驚いているようだった。

私たち三人の顔を信じられないように見回す。


「わ、私は・・・」


かなり動揺しているみたいだけど、手を握りしめて私を目線で射貫いた。


「私は、えりに家事をさせたくありません・・・!」



え、

ええーー

そこは、向井さんも「わかりました。」って言うところじゃないの?

その流れじゃなかった!?


「ええっと、何故でしょうか・・・」


「先ほど申したことが理由です・・・!えりに、そんなことさせられません・・・!!」


そんなことって必死に言うけれど、前の世界では普通に家事してましたからね!?


「怪我をしたらどうするのですか・・・!そこからばい菌が入って、炎症を起こして、痛い思いをしたら・・・切断なんてことになったら・・・」


妄想力は私以上であることは分かった。

でも、おそらくそんなことにはならないよ。

今まで、27年間で料理をしてこなかったわけではない。得意というほどではないけれど、料理は小学生のころからしていたし、そうほいほいと怪我もしないと思う。

向井さんの心配は、料理をしたことがない子供に対しても過保護だと思うレベルだけど、料理をし慣れている私に対しては行きすぎなのだ。



私が反論しようとしたら、丁度ピーッと音が鳴った。


え、何々?



「あ。お風呂が溜まったみたいだね。」


お風呂が溜まったらちゃんと知らせてくれるのか。

こんなところも私たちの世界と同じなのね。


「とりあえず、えりは先にお風呂入ってきたらどうだ。疲れてるだろ?」


「え、でも・・・」


石川さんがそうやって気遣ってくれるのはありがたいが、今は向井さんを説得させたいのだけど・・・。


「まあまあ。話は後でしたらいいよ。俺たち待ってるし。」


だから行ってきてよーと、武田さんにやんわりと手で促された。

二人にまで言われると、嫌だと頑なに言うのも憚られる。

うーん。仕方ない。別に私って長風呂するタイプではないから、さっさとお風呂に入ってから話をすれば良いか・・・。

それに、さっさとお風呂に入らないと、後がつっかえちゃうし。

ん?なんで私が先に入ることが前提なんだ・・・?

まあいいか。

今日一日で分かったけど、この夫達も田中さんもレディファーストを当たり前にしている節があるので、ここで「私お風呂は後でも・・・」なんて言うと、また別の問題が出てくる可能性が高い。

今日のところは潔く入ってしまおう。


話をそらすわけにはいかないからね!



向井さんに、目線を向けると、向井さんも私を見つめていて・・・

一瞬目が合ったら、ちょっと驚いて挙動不審になり、それを石川さんが遮った。


「向井を見てやるな。ちょっと今はえりが家事をすることについて考えたいだろうから。」


だからってなんで見たらいけないんだ。


いや、見たいわけじゃあないけども・・・。


「じゃあ、お先に失礼します。」


気になることだらけだけど、今すべきことは、お風呂に入ってその後に話し合いである。

それ以外は突っ込みたくなっても、今は我慢だ。


聞きたいことや気になることを振り切って、三人に背中を向け、

お風呂に続くドアを開けて中に入る。






脱衣所まで来て、やはりまた一つ突っ込みたいことが出てきた。


武田さんがお風呂の掃除をしていたから、その時になんとなく思っていたのだけど・・・




「やっぱりお風呂でかいな・・・」


私の家のお風呂の、およそ三倍・・・


四人が一度に浸かれるくらいの大きさでした。





うん、突っ込みどころが満載である。




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