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説明を聞きま・・・しょう?





部屋の中は、上質そうな家具がきちんと揃えられていた。


部屋のドアを開けたら、広い玄関。


そこから廊下がまっすぐに続いていて、両サイドにドアが続く。

それぞれのドアがどんな部屋に続いているのか分からないけれど、廊下から続く部屋はだいたい十四くらい。

廊下はずーっと奥まで続くのだが、田中さんは、玄関から入って一番手前の左側のドアを開けた。


「こちらが、一番大きな部屋なのですが、リビングやキッチン、その奥には洗面台やお風呂があります。」


一番大きな部屋なのですが、ってさらりと言ったけれど、結構大きいぞこの部屋。


夫を10人まで選べるから、最大人数11人が生活できるように配慮したからこれほど広いのだろうか。

それにしても、でかい。


テレビも大きな薄型テレビで、ソファも3つあり、だいたい10人が座れるもの。ソファの前にある低いテーブルも大きい。

食事をする場所なのか、そこから少し離れた所に大きなテーブルと、イスが12脚。そこから少し距離を置いて、カウンター式のキッチン。キッチンも広い。ガスコンロも、5つくらいある。ここに住む予定の

4人が並んで料理しても、十分場所に余裕がある。

というか、この部屋を4人で使うの?むしろ寂しいんだけど。


「奥のドアは3つあるのですが、1つはお風呂場です。また確認しておいて下さいね。そして、後はトイレに繋がるドアと、化粧室です。」


化粧室って、私しか使うことないんじゃないの?

え、部屋で化粧しますけど・・・むしろ、外に出ることがないのなら、化粧したくないんだけど・・・お肌弱いし化粧水と乳液だけで過ごしたいです。

って、流石にそれはだめかな、給料をもらうのだから、不本意ではあるけど“妻”を勤めた方が良いかな。


ちょっと化粧をしないでいて、夫達の様子を見ながら考えるか。

綺麗にしておいて欲しいって感じなら、面倒だけどお金をもらっている分は頑張らねばならない。


「それでは、ソファに座って下さい。この家の説明や、社会保険など、確認してもらわなければならない書類がありますので。」


「あ、はい、分かりました。」



田中さんに勧められて、ソファに座った。

そして、この家に住む上での注意事項や社会保険、火災保険。ほとんど免除されるけれど、気をつけなければならないところや、問題があった時の連絡先などを説明された。主に私に対してだ。

そうそう、パソコンは各自部屋に用意されているみたいなので、通信ケーブルや、パスワードなんかの話もする。

ううん・・・別世界に来て、一気にその世界での暮らし方を説明されても、覚えてられそうにない・・・。ちょっとそろそろメモしながら聞いても良いだろうか・・・。これ以上の記憶は少し自信がないな・・・。


「大丈夫か?」


横から私を案じる声が聞こえたので、そちらに顔を向けると、石川さんがちょっと心配そうにこちらを見ていた。

生憎あまり大丈夫ではない。ちょっと集中力が切れかけている。学生時代の、いっぱい勉強した後の疲労感のようなものがある。懐かしい疲労感だ。最近は専ら肉体と精神がほどほどに疲れる程度だったし。

でも、また後日田中さんにわざわざ来てもらうことになるのは・・・それはそれで面倒だよね。

私も、知らないまま生活するよりも、知識だけでも詰め込んで生活している方が楽だ。


「大丈夫です。」


「ん。大丈夫じゃあねぇな。」


石川さんは、パン、と手をたたいて、話の流れを切った。


「田中さん、悪いが、話はここまでだ。えりを休ませたい。」


「そうですね。今日一日であり得ない体験をたくさんしました。ただでさえ疲労しているはずなのに・・・。気がつかず、すみませんでした。説明はまた後日でも良いので、今日は休んでもらいましょうか。」


「いえ、私は大丈夫ですので、話を続けてください。」


書類を片付けだそうとした田中さんを制止しようとするが、片付けの手を緩めない。

えええ、大丈夫なんだけどなぁ・・・。

仕事してる時だって、業務が終わらなければ多少疲れていても帰らなかったし、肉体的にそれほど疲労がないのだから、ぶっ倒れることもない。頭が疲れただけだ。話が終わって、ある程度のことは部屋に入ってからパソコンの中か紙にまとめるつもりだし、いくらか覚えてられなくても、夫たちに聞けばいいもんね、サポートのための夫って言っていたし。うん、問題ない。

あ、でも「一回話した内容、ちゃんと覚えとけよ」と思われるのも面倒か。一緒に暮らしているのだから、家にいる私が家のことを分かっていないのは無能給料泥棒だと思われても仕方が無いし、ずっと見下されるのは嫌だ。お言葉に甘えて、今日はここまでにしてもらうか・・・

うーん、でも、これくらいでへばっていると思われるのも印象が悪いし・・・給料はもらうのだから、しっかり家のことはこなさなければならないだろう。そのためにも知識は出来るだけ欲しい。



うん、今日全部聞いてしまって、知識だけでもたたき込んで明日から家事に従事することにしよう。


「明日からのために、今日説明を聞いておきたいんです。」


「分からないことがあれば、その都度私達に聞いてもらえれば、いつでもお教えしますよ。だから、今日はもう休んだ方が良いと思うのですが・・・」


ちょっと待って、まだ説明していない内容を、田中さんじゃなくてなんで向井さんが教えられるんだ?

分からないから今田中さんに聞いているんじゃないの?


「今説明してもらっていない内容は、田中さんにしか聞けないと思うのですが・・・。」


ああだめだ、頭が回っていないからか、気を使った質問ができない。

ちょっときつく言い過ぎたかな・・・。


「この家で暮らしていく上で必要な知識は、俺たちみんな持ってるよ。だから心配しなくて大丈夫だよ!」


武田さんが、ソファの背もたれから身体を起こして、安心させるように笑った。


ええ、どういうこと。じゃあみんなで話を聞く必要はなかったってこと?

じゃあ今までの時間は何だったんだ?

ああ、私への説明の時間か。

って、そうじゃなくて、うんと、


「ええと、一緒に説明を聞いていた理由は・・・」


「そりゃ、田中さんがどこまで説明してくれるのか、俺たちは把握しておく必要があるからだ。」


横に座っていた石川さんが、立ち上がった。

話はここまでだ、というように伸びをする。

前を見ると、田中さんも書類をかたづけてしまって、もう鞄を左手に持っていた。

帰る準備が早いな!

向井さん、武田さんもそれぞれ立ち上がって、みんなの飲み物を流し台へ持って行った。

ああ、もう話が続く雰囲気じゃない・・・。


「最後に、皆様の荷物を運び込んだ部屋を、それぞれ案内させていただきます。」


リビングの出口から出て、廊下に出てから左に曲がる。

廊下にたくさんドアがついているけれど、それぞれの部屋の大きさはだいたいおんなじくらいらしい。


「部屋が分かっていたら、何かあったときに安心ですからね。」


何かって何ですか・・・何かあるのでしょうかこの世界は・・・


「何かあるってのは、体調を崩したりとか、用事があるときって意味だからね」


武田さんが、こっそり教えてくれた。

え、表情に出てましたか?


「多分、結構余裕がねえからだろうな。今思いっきり難しそうな顔してたぞ。」


のどでクツクツ笑うのは石川さん。うん、イケメンがそれをすると様になるんですね!別に私は何とも思わないけど!




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