04 転生したプリンセス様
遅くなりまして申し訳ございません。
今回はこの前出てきた第4王子の婚約者の話です。
皆さんは転生者というものを聞いたことがあるでしょうか。
私も詳しい話は覚えていませんが輪廻転生、簡単に言えば異なる世界や人物へ生まれ変わることを言ったと思います。
最近はそういった小説も流行っていましたから異世界で婚約破棄されたりご飯でイケメンを釣ったりスローライフをおくったりと。そのような話を一度ぐらい読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。
それで私が何でこんな話をいきなりし始めたのかと言うと私がその転生者と言われるものなんです。
いやーやめて、そんな痛い子を見る目でこっちを見ないで。信じられないだろうけど本当のことなので!
私には前世の記憶があるのです。
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前世といってもその記憶は曖昧です。
こんな事件があったとか、こんなものが好きだったとかそういうことは覚えていますが私や家族、友人の名前なんかは全く覚えておりません。
いちおう、魔術などもあるファンタジーな世界に転生したのですが特に俺TUEEEEのようなチート能力もいや一体なんに使えるんだよこんなもん的な雑魚能力もなく平々凡々とした生活を営んでおります。
というか未だ男尊女卑が割と強い世界なので女の人が剣を持ったり、戦ったり、というのは本当に稀なのです。
そんな平凡な私ですが2つラッキーだったのは生まれた家が裕福だったことですかね。
結構衛生観念も低い世界なのでその辺はよかったと思います。
もうひとつは嫁ぎ先がもう決まっていることです。
この世界では女の子の婚活事情は結構シビアで、嫁ぐ先で自分のこれからの将来が決まってくることですし。ほら女の人は自活できないので結婚が就活みたいなもんなんです。
そんな中、第4王子である会長と懇意にして頂けているのは幸運なことなのでしょう。
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「そういえば、お聞きしましたか。ソフィア様」
午後のお茶の時間。私は仲の良いソフィアちゃんにお茶菓子を振る舞い、最近の社交界で最も熱い話題を提供します。
「長らくお相手がいらっしゃらなかったファルス様についに想い人ができたとか。社交界では彼を狙っていた女性達が悲鳴をあげているそうですよ」
ソフィアちゃんは病弱であるからかはたまた両親が過保護なのか社交界への参加はあまり見られません。
なのでこうして時たまお茶会を開いて情報交換をしているのです。
でもそんな非社交的なソフィアちゃんですが聞き上手で友人も多く、私が知らないような話も知っているのでお話しててもとても楽しいのです。
「あの寡黙なファルス様を仕留めたのはなんと噂の転校生であるイエディ様ですって!
なんでも転校初日に学園を案内したことでお知り合いになったとか」
「そうですか、季節外れの転校生が副会長と親密に…」
そういうとソフィアちゃんは眉間にシワを寄せて何かを考え込んでおりました。
え、これはまさかまさか…
ソフィアちゃん実はファルス様のことを好ましく思っていたりいなかったり…?!
いえ、間違いありません。
生前、さんざん鈍いと言われた私ですがこれには乙女センサーがびびっと反応いたしました。
前世何年女として生きていたと思っているのですか!
あの心ここに在らずという状態はまさしく恋に悩める女の子!
きゃー!素敵!
いいですね。学園!同級生!芽生える恋心!
これこそまさに青春ですわ!
おばさん、婚約から絆を深めるのももちろん好きですが恋愛結婚もいいと思います!
ソフィアちゃんならファルス様と身分も釣り合いますし胸はそれなりにありますし、顔も知的で実際物知りです。
そんなクールな頭の良いお姉さん風なのに身長がちょっと小さくて可愛らしいのです!
常々どうしてこんな子が婚約者もいないのか心配していたのですが杞憂だったようです。
そりゃあ秘める想い人がいるならば婚約に消極的にもなろうもの。
あ、でもファルス様には今意中のお方が…
イエディ様は可愛らしいお方で常に明るく振舞っています。平民育ちということで肩身が狭いであろうにもそんな周囲の目に負けず振舞っていらっしゃる姿は健気で思わず応援したくなるというもの。
天真爛漫という言葉がよく似合う、笑顔がとっても素敵なお方です。
そんなイエディ様を想っているということはファルス様はそのような明るいお方を好んでいらっしゃるのでしょう。
いやいやいや、でもソフィアちゃんにはイエディ様とは違った魅力がありますし。
頭も良いですし会話も豊富で飽きませんし、たまに見せる花が綻ぶような笑顔には思わず見惚れてしまいます。
胸はちょっとイエディ様に負けていますが…
でも女の子で大事なのは胸じゃありませんし!
きっとファルス様はソフィアちゃんにあったことがないと思うのです。ですからこんなに可愛らしいソフィアちゃんが自分のことを想っていると知ったらファルス様も少しはこちらを意識するようになるはず。
いえいえ。もちろんファルス様とイエディ様の仲を壊すなんてそんなお恐れたことを考えている訳ではありませんわ。もちろんソフィアちゃんの恋が叶った方が私的には嬉しくもありますが。
ただ、ソフィアちゃんも何もせずただぼうっと見ているだけよりも1歩踏み出した方が次の恋愛にも前に進めると思いますの。
「ソフィア様!私お二人の仲を応援しますわ!」
「え」
そういうとソフィアちゃんはあたふたと手をふってあ、とかでもとか言っております。
ふふ、きっと照れていらっしゃるのでしょう。
こんな可愛らしいのですもの。きっとファルス様もソフィアちゃんみたらこちらにも目を向けていただけるはず。
「ソーラ様、あの。その、」
「大丈夫ですわ。このお話はアールトン・ティスアタ・ソーラの名にかけて私の心に止めておきますわ」
そう言って私はソフィアちゃんの手を握りしめ、安心できるよう笑顔を浮かべました。
私が絶対お二人を引き合わせてみせる
そう心に誓いながら。
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