03 転生した王子様
ブックマークありがとうございます。
完結まで頑張ります。
前に出てきた第4王子視点です。
私の小説あるあるなのですが名前はまだ決まっていない。
皆さんは転生者というものを聞いたことがあるだろうか。
輪廻転生、簡単に言えば生まれ変わりと言うやつである。
最近はそういった小説もうれてて異世界でハーレム作ったりバトルしたりスローライフをおくったりと。まぁ一度ぐらい聞いたことがあるという人も多いだろう。
そんで俺が何でこんな話をいきなりし始めたのかと言うと俺がその噂の転生者と言うやつなんだ。
いや、本当だって。そんな痛い子を見る目でこっちを見ないでくれ。
俺には前世の記憶があるのだ。
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俺は前世、日本という国のただのサラリーマンだった。
俺には年の離れた弟がいて俺が大学を出てからようやく小学校かというぐらいの年齢差があった。
そんなんだから弟がすっごい可愛くて俺もよく相手をしたし、弟の方もよく懐いてくれていた。
だがある日、悲劇は起きた。
弟とスーパーの帰りで歩道を歩いていると突然車が猛烈なスピードで突っ込んできた。
そのあとも事はあまり覚えていない。
無我夢中で弟を抱え込んでその瞬間体に物凄い力がかかって俺は吹っ飛んでいったような気がする。
弟が助かったかどうかもよくわからなかったのは後悔しているがおそらく即死だったのだろう。
そのあと気がついたらなんかよくわからん部屋にいて、変なやつと話した気がする。そのときの記憶は思い出そうとしてもよく覚えていない。
ただそいつが転生者の掃き溜めみたいな世界に転生させてあげると言われたことだけは覚えている。
そうして目が覚めると俺は赤ん坊になっていて、成長するにつれて俺がとある国の第4王子ということがわかった。
ま、と言っても何かやるわけでもなし。
何かしようにも俺には転生特典なんてなかったし知識チートしようにも転生者の掃き溜めみたいな世界だけあって簡単に出来るようなものは既にあるものも多い。
大きいものなんて最早どこから手を出していいのかすら謎だ。現代日本の方々は素晴らしかった。
末端の第4王子だから特に権限などないし何しろ今はただの学生だ。
改革なんてものは若いやつが汗水垂らして試行錯誤して行えばいい。
だいたい目立ったら殺されそうだし。
結論として俺は無能でも有能でもないふつーの成績を出して、ふつーに可愛い婚約者と結婚してどっかの土地をもらいそこそこに生きるのがベストということだ。
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「例の転入生につきまして会長にご報告がありますのでお伝えさせて頂きます」
「ああ、例のご令嬢か。お前にしては随分仲良くしてたもんな。なんだ婚約でもするのか?」
そう言うと目の前の男は露骨に眉を潜めた。
アルレス・オルヴィエート・ファルス。
王国でも1,2の力と地位を持つオルヴィエート家の嫡男。
成績優秀、社交能力も抜群で人当たりもいい。運動は少し苦手なようだがかと言って一通りはこなす才能の塊みたいな人間だ。
親は彼から言わせれば化物らしくそれには及ばないと豪語しているものの王家も信頼も厚く将来は俺らの年代の中で最も出世すると期待されている有望株だ。
あいつは俺がいるからこの学年は人数が多いと勘違いしているようだが所詮俺は王位継承権からも遠い第四王子。
貴族たちの目的は大部分がこいつに近づくことだ。
そんなやつが将来落ちぶれるしかない俺みたいな人間と一緒に行動をともにしているというのがまた面白い。
何というか兄たちの嫉妬の目が。
ま、でもどんなことでもこいつと出来を比べられるから俺みたいに転生とかしてなきゃ嫉妬で発狂してるか我儘放題の馬鹿になりそうだが。
そういうこと見越して親父もこいつを俺にあてがったのかもしれない。
そんなこいつだが苦手なものが2つある。
こいつのおやっさんと他人だ。
おやっさんはなんかノリと勢いが幸運を背負って生きているような人間だ。超人、チート、ご都合主義。そんな言葉が当てはまる。
ファルス曰く無闇矢鱈と魔法をうっても何故か全て的に当たるような人と言っていたが言い得て妙だと思う。
そんな偉大すぎる父親を持つファルスだが彼は打って変わって非常に常識的な人間だ。
努力家で計画的、常に人の1歩後ろで見ているよう全体を見渡している。
運動の方はできなくもないといったところだが勉強にしても前向きでもちろん彼の才能もあるのだろうが努力を惜しまない。
生徒自治会でもどんな行事であろうと会議の事前に資料を準備して挑んでいる。
当たり前といえば当たり前だが学生、しかも人を命じる立場の貴族の坊ちゃんどもができる範囲などそうしれている。実際に例年、自治会で行事の可否や新しい企画の立案などは行っていたが段取りなどは教師や各自使用人が行っていたのだ。
こちらが多少無理を言ったとしても苦笑いしながら必要なことをまとめていってくれる。
要はサポート能力が高いのだ。
貴族というよりも執事のような本当にできる、人間。
それがファルスというやつだ。
彼の親が超人な人間だと言うなら彼は優秀な人間であると言えよう。
まぁそんな努力家なやつと楽天的なあの人が気が合うわけもなく、父親の方はともかくファルスの方は苦手としている。
そんなやつだが周りに対しても1歩引いた距離をとる。口調も誰に対しても丁寧で嫌味がないが逆に容易に踏み込めない空気がある。
それを見下されていると感じ、斜に構えた嫌なやつと口悪く言うやつもいるが別に下に見ていると言うよりは他人を集団として捉えている気がする。
それが名もしれぬ平民だろうが悪名高い貴族だろうがその他人という箱に放り込まれた瞬間、扱いが同じになるのだ。
極端に言うならば悪も善も、王も民もやつの前ではある意味、敬意を持って話すに値するのである。
その反動なのか、やつが大切なものであると認識した瞬間、人が変わったように接し方が違う。
他の人間も大なり小なりそんなとこはあるがあいつは極端だ、という話でしでしかないのだが、しいて言うなら人間関係の構築が苦手と言うべきか。
そんな父親や他人と話すのが苦手というやつが珍しく積極性をもって転校生と接したので、ようやくこいつにも春が来たかと思っていたのだが…
こいつが俺に敬語で話すってことはそんな甘酸っぱい話ではなくこの国に対する真剣な話なんだろうなぁ。
「例の転校生、トゥレディッチ・オン・イエディ嬢ですが少し気になることありました。」
「トゥレディッチ、確か国境近くの街を領地に持つ伯爵だったか。
件のご令嬢は伯爵が引き取ったという話だったが…」
「正確には関係のあるさる高貴なお方の御息女を引き取った、という話です」
ずいぶんと回りくどい。その高貴なお方という何某は認知するのが不可能だったということか。
「それで、何が気になるんだ?別に貴族ならば珍しい話でもないだろう」
父親の方が入婿で女性優位の家であれば浮気で子供が生まれたなど嫁やその親にとって醜聞でしかない。
別の貴族が引き取ることはあまり無いがその手の話なら社交界で聞き飽きている。
「先日、学校内を案内したわけで、その際思ったのですが、妙に距離が近いのです」
「いや、それは…」
お前に気があるとかそういう話では?
「もし自分に気があるとしてもこちらは上位侯爵家あちらは精々、中程度の伯爵家です。であるのに初対面であの態度というのはいくら平民の生まれで社交に疎いといえど少し違和感があります。
出が平民であるならばなおさらこちらに配慮した態度をとるよう言われているはず。
ましてやここは王立の学園ですよ。
小さな社交場であるここで起こることは親である彼の評価にも関わってくる。
いかにも目のつけられそうな市井の出のものをろくな教育も受けさせずに学園に出すというのは自分の腹を切るようなものです。
見過ごすには少々、不可解すぎる。」
確かに言われてみればおかしな話だと思う。
他人の庶子を引き取ったと言うだけでも少し顔を潜めるものなのにその引き取った娘のマナーが悪ければ、伯爵はろくに教育していないものを社交に出したと非難されるだろう。
いくらこちらと関係を結びたいとはいえリターンに対してリスクが高すぎる。
それにこちらがその態度を不快に思ったら、婚約も何もない。
もう1年、様子を見てから入学させるという手もあっただろう。
「なるほど、確かに少しおかしいな。
ちなみにその令嬢、お前にどんなことを言ったんだ?」
「笑顔が、うさんくせぇと。」
あ、そりゃアウトだわ。
逆立ちしても良い印象は与えられないだろう。
「探るため少し話ましたがご令嬢はお茶や刺繍などの教育は一通りされているようでした。」
「となると、ご令嬢の社交術が伯爵の判断よりも劣っていたか、目先の利益を求めすぎ焦ったか」
または…
「ある程度無礼であろうとも、黙らせることが出来るような何かがある、かも知れません」
お読み頂きましてありがとうございました。