01 天才、と言うよりプロフェッショナル
2話目
楽しんで頂けたら幸いです。
眠い午後の授業
一応成績優秀者の烙印を押されている身としては生徒の模範となるために寝てはならぬと必死で閉じそうな瞼を俺は開けていた。
授業は現代史。特にこの学園ができるまでの由来を教師が熱く語っている。
一昔前まではこの学園、というか集団での教育の場というものはなく貴族であっても家が家庭教師を雇って行っていた。
そんな中、一貴族の権力の集中や豪商人の台頭、役職の知識量の違いの差などあらゆる面で問題が浮上してきたため王が学院の設立を議会に提案。
議会は保守派と革新派ですったもんだありながらもなんとか収集を収め、とりあえず国立の学院を設立知ることが決定した。
この時とりあえず学院作ってから問題は考えようぜ☆という革新派といやいややはり市井のものが勉学を学ぶなど…と言った保守派の考えにより対立したわけであるが今のところ特に保守派が心配したような問題があるというわけではない。
何故ならば市井の人間と言っても入学には厳しい試験がありそんな問題が解けるものなど子供に家庭教師をつけることのできる金持ちの商人ぐらいなものだ。
商人の中には下手な領地もちの貴族よりもよっぽど金があるものもいるので、平民と貴族の間には特に現状問題が起きているわけではない。むしろ貴族間の上下関係の方が軋轢しているほどだ。
あーでも知り合いの王子曰くもうちょっとそこんとこなんとかするっていう話を聞いたので近々平民も増えるのではないかと思う。
眠気覚ましにうつらうつら他ごとを考えていたらふと筆箱に目が行った。
そこにはシックな万年筆があり日付が刻まれている。この間休日に市場へおもむいた際、弟と妹にその日のお礼ということで渡されたものだ。
お兄様にはいつもお世話になっておりますからと言ってはにかむ二人の姿は間違いなく天使であった。俺、兄で良かったわ。
そういやあの時の朝父親に呼び出されたよな。
お互い忙しさにかまけて話ができなかったが結局テンセイシャとは一体何だったのだろうか。
うーん、父親の話だし特段たいしたことでは無いだろうが一応教師の方に聞いてみるとしよう。今度話すときは話も合わせなきゃならんし。
とりあえず授業終わりに歴史担当の教授に聞いてみることとしよう。
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「アスター教授。授業とは関係ない個人的な質問なのですが聞いていただけますか?」
「おや、ごきげんようファルス様。もちろんです。いかがいたしましたかな?」
授業が終わったあと俺は早速歴学に詳しいアスター教授のもとを訪れた。
アスター教授は世界古代史からこの国の現代史まであらゆる歴史を紐解いてきた貴族の家系でありその知識量の多さには感嘆の意しかない。
そんな彼ならば歴史と関係ない事項であっても知っている可能性が高い。
「アスター教授、テンセイシャ、という言葉に聞き覚えはございませんか?」
「テンセイシャ、ですか…
ふむ残念なことですが聞いたことがありません。私の至らぬところで申し訳ありません。」
むむむ、まさかアスター教授が知らないなんて、最初っから宛が外れたぞ。
かくなる上は母にきちんと意味を聞くしか…
「しかしながら、語感的にに王国の言葉ではなさそうです。外国の言葉に詳しい方にお聞きされたらどうでしょうか?」
「なるほど、そうさせて頂きます。
ご教授ありがとうございました」
さすがアスター教授知らないことを分からないで済まさないお方だ。
俺もこういうアドバイスができるようになりたいものだ。
それに確かに父はあちこち飛び回っているし外国語、下手をすると亡国の言葉だったりする可能性もある。
ただ王立の学院とは言えさすがにそう何カ国語も知ってる人間は少ないので図書館の辞典をひくか…
「あらファルス様、今テンセイシャという言葉をお聞きされましたか?また随分と古い言葉をお知りであられるのね」
と、その時次の授業の準備をしていた教授が声をかけてきた。
「ごきげんよう、ビオラ教授。テンセイシャという言葉に聞き覚えがあるのですか?」
「ええ、一種の言い回しですわ。アスター教授がお知りでなくてもしょうがありません」
まさか国語の教授が知っているとは、盲点だった。
「しかし古く地域的な言葉であるのにファルス様は博識でございますのね」
「いえ、たまたま書籍で見まして、聞き慣れない言葉だったので…」
嘘も方便である。
うちの父は性格はあんなんだが名は知られているのでおちおち会話に出せないのだ。噂になったら困るし。
「とある地方の古い言い回しで昔その地方の領主が自らをテンセイシャ、と名乗ったのです。
その方は戦闘がお強くて戦では負けなしだったそうですが統治の方は失敗ばかりで…
結局、領主の座を追われました。
変わった方だったそうで行動に理解できない所があったとか。
それで領民が、その…気が触れている方のことをテンセイシャと呼ばれるようになったそうです。
基本的に地位の高い方を貶める隠語ですが市井が読む娯楽小説ではまれに使われているようですね」
「そうでしたか、答えにくい質問に答えて頂きましてありがとうございます」
「いいえ、何かに疑問を持ち調べるということはとても尊いことです。
また何かありましたらお声がけ下さいね」
最後にそう残して2人は授業の準備に戻った。
にしても気が触れてる、か。
つまり父は俺に自分が頭がおかしいということを伝えたかったわけか。
うん。父よ、そんなこと知ってたけど…
読んでいただきありがとうございます。
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