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千住高校鉄道旅行部  作者: 伊東 たかポコ
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第五話 鉄道旅行部出発進行!

第六話の主な登場人物

土気 翼  鉄道旅行部部長

椎名 結  鉄道旅行部部員

八代 春樹 鉄道旅行部部員

高麗 玲美 鉄道旅行部部員

久手 一馬 鉄道旅行部顧問


第5話の続きから

常磐快速線の朝の上り列車は地獄だ。我孫子はベッドタウンの駅であるために多くの乗客が列車に乗り込む。常磐快速線を我孫子から北千住まで乗ると途中、柏と松戸に停車するが、この二つの駅は他の路線と交わるターミナル駅で更に乗客が増えて混雑度合いが増す。特に松戸からは車内で手を動かす事も難しい。しかしラッキーな事に俺は松戸の次に列車が止まる北千住駅で降りる。北千住は地下鉄線や東武鉄道がやって来るターミナル駅のため多くの乗客が他の路線に乗り換える。つまり降りる人が多く、ドアの前なんかに立っている人は北千住で降りなくても必ず列車を一旦降りて、再び乗車する必要がある。つまり「降りまーす」とか言わなくても人の流れで簡単に列車から降りる事が出来る。その為、俺は通学の時に満員電車から降りれなくなって学校に遅刻した何てハプニングには遭ったことがない。

俺の名前は土気翼。千住高校二年一組で鉄道旅行部に所属している。「鉄道旅行部?そんな部活は聞いたことがない」と言う人の為に千住高校鉄道旅行部がどんな部活かを軽く説明しよう。

鉄道旅行部は今年に俺と俺のクラスメートである八代が中心となって創った新しい部活だ。主な活動は国内の鉄道を使って旅行したり鉄道について研究したりして、そこで得たこと、学んだことをレポートにする事だ。ちなみにレポートは千住高校のホームページに掲載され、学校関係者に限らずネットさえ使えれば誰でも見ることが出来る。

メンバーは何となく理系クラスに進んでしまった俺土気翼、将来は鉄道会社に就職することが夢の八代春樹、クラス一可愛いお嬢様である椎名結、去年で廃部となった軽音部に所属していて鉄道のことは嫌いではないらしい音楽が大好きな女の子の高麗玲美だ。俺と八代、椎名は理系クラスの五年一組で高麗は文系日本史選択クラスの五年三組だ。

そして鉄道旅行部の顧問が国語(現代文)教師で野球部第六顧問である久手先生だ。野球部の顧問と聞くと怖い先生をイメージする人も多いと思うが、久手先生は新任の優しい先生であり、俺は久手先生が生徒を怒鳴り付けている所を一度も見たことがない。

そして久手先生は俺達の事を信頼してくれている。

そんな鉄道旅行部は先週の金曜日に創部届けを校長先生に出して、ようやく部活として認められた(詳しくは第二話から第五話を参照)。そして今日は始めて鉄道旅行部が活動をする日、俺は今日が待ちきれず、昨日は一時間位しか寝ることが出来なかった。間違えなく今日は授業中に寝る。 

「まもなく北千住、北千住お出口は右側です。東部スカイツリーライン、つくばエクスプレス線、地下鉄日比谷線と地下鉄千代田線はお乗り換えです。」

おっ、北千住に到着だ。ここからは北口改札を出て左に曲がり、そこから商店街を通って学校へ行く。学校までは歩いて大体10分くらいだ。途中、商店街を左に曲がって脇道へ入る。この脇道はとにかく分かりづらくて新入生はもちろんのこと、一年以上通い続けている俺達高二でさえもボーッと歩いているとたまに道に迷う。「道に迷った」と言う理由で朝のHRに遅刻してくる人は月に必ず二人は出る。

俺は道に迷わず無事に学校に着いた。教室に入ると八代と椎名が話していた。俺は「おはよー」って言い、二人の会話の中に入った。

今日の時間割りは「1限数Ⅱ、2限体育、3限家庭、4限家庭、5限現代社会、6限科学」だ。因みに今日は担任の土山先生が研究日の為にいないので終礼がない。つまり6限が終わったら直ぐに部活へ行って良いのだ。俺は1限と5限に居眠りをした。他の時間は起きていたが、ボーッとしていて余り授業が頭に入ってこなかった。

6限の終わりのチャイムが鳴った。よっしゃ、部活だ!

俺はダッシュで階段を上がり鉄道旅行部の部室である六階の「第二選択教室」へ向かった。教室には顧問の久手先生がいた。久手先生は野球部の第六顧問のため、鉄道旅行部の活動日であっても大会シーズンが近い野球部の練習を手伝う事に成っている。学校のルールとしては「顧問の先生が校内に居れば、原則として部活動が出来る」となっているため、特に大きな問題には成らない。

久手先生は昨日俺に「活動初日から僕は野球部に行くことに成っちゃったから、みんな集まったら活動開始していいよ。申し訳ないけど野球部の練習が忙しく成るから明日は多分部室に行けないと思う。だから解散するときは校庭来て声掛けて。多分マネージャーと一緒に端っ子で水汲みやっているから。」とか言っていたのだが何故ここにいる?

俺は久手先生に「こんにちは。今日は野球部の練習じゃないんですか?」と聞いた。久手先生は「いやぁ~、僕は一応鉄道旅行部のメイン顧問だから最初の時ぐらいは様子を見たいなと思ってさ。」と頭に手を当てながら言った。こいつ、たまたま行きたいと思って来たな。まぁ、「どうでもいい部活」と思われるよりは良いけど。

久手先生と今日の活動について話していると八代と椎名がやって来た。高麗は7限があるため少し遅れると言う。今来れるメンバーは全員集まったと言うことで久手先生が「じゃあ始めようか、今日は何するかもう決めた」と言った。俺は「GWの旅行について話し合います。」と言った。椎名は「後、新入部員の勧誘ポスターについても話さなきゃね。」と付け足した。久手先生は「Gwの旅行はいつ行くのか決めた?」と聞いてきた。俺は「3日に行きたいとみんなで話しています。」と言った。すると久手先生は「マジで!?」って顔をした。野球部で校外活動が在るのかな?久手先生は「その日、僕球部の手伝い行く日だ。」と言った。俺は「ほら、当たり」と思った。しかしそうなると部としての正式な活動が三日には出来ない。どうしようか、4日と5日はみんな用事があるからこの日にしたのに。俺は久手先生に「他の日は用事があるからこの日にしたのですが、久手先生は行けませんか?」と聞いた。久手先生は「ごめんね。その日は野球部の強化練習が有るから行けない。」と言った。

どうしようか、顧問が付き添わないと校外活動が出来ない。校外活動がメインの鉄道旅行部には死活問題だ。部が活動しなければ実績が残せない。そうなると鉄道旅行部が部としての在り方について生徒会で議論され、最悪強制廃部させられる。

椎名は「せっかくの連休だから、何処か皆さんでいきたいですね。」と言った。久手先生は難しそうな顔をした。俺は久手先生に「俺達だけではダメですか?」と聞いた。久手先生は「どうだろう?でも何か連休中にはしたいよね。取り敢えず今日、校長先生に相談してみるよ。結果は明日言うから。」と言った。

「キーンコーンカーンコーン」7限終了のチャイム鳴った。と言うことは高麗が来るな。これで鉄道旅行部のメンバーが全員集まる。

すると久手先生が「取り敢えず連休の旅行について話し合って。僕は野球部に行くから何か有ったらグラウンドに来てよ。後、解散するときも声掛けてね。」と言った。なんだかタイミングが悪い。

久手先生はダッシュでグラウンドへ行ってしまった。それと入れ替わりに7限上がりの高麗がやって来た。

取り敢えず俺達は連休中の旅行について話し合った。鉄道旅行部は鉄道や鉄道を使った旅行について研究する部活だ。その為家族旅行見たいに旅行先でダラダラするだけの旅行はしたくない。やるなら鉄道についての研究もしたい。しかしそうなると旅行で何をするかが簡単には決まらない。一応候補として挙がったのは「秘境駅探訪、鉄道乗りつくし、車両研究」だ。日帰り旅行のため、余り遠くには行けない。そうなると「秘境駅探訪」は難しい。かといって鉄道乗りつくしはただの遊ぶだけのように思えるためなしとなった。「車両研究」も何をするか具体的な事が決まらず没と成った。なかなか決まらない、俺は鞄の中にある時刻表をぱらぱらめくった。するとある付録が気になった。それは「特例乗車のルール」についての事だった。詳しく目を通すと鉄道旅行部の活動にぴったりの事が書いてあった。それは「大回り乗車」についての事だった。

゛東京近郊区間内のみを乗車券または回数券を使い、同じ駅を二度通らなければ乗車経路に限らずもっとも安い経路で計算した運賃で乗車できます。゛とネットに書いてあった。

「どう言うこと?」高麗は聞いた。

俺は黒板に円を書いて等間隔に8つ点を振り、横に品川、東京、上野、田端、池袋、新宿、渋谷、大崎と書いた。そう、山手線の路線図だ。実際山手線は他にも多くの駅が存在するがこの話には関係ないので割愛させていただく。

「例えば品川から大崎に行くとき、高麗はどうする?」

「簡単よ、山手線の外回り電車に乗って次でしょ。」高麗は自信満々に言った。鉄道の知識は鉄道旅行部の中で一番無い高麗でも山手線の品川の次の駅が大崎で有ること、どっちの方向が外回りであるかは分かるようだ。

「他には?」俺が聞くと「他には無いわよ」と言った。

「後、少なくともパッと3ルートは思い浮かぶぞ、俺は。」さすがにこのルールは高麗も知らなかったか。

俺はさっきの山手線の路線図の少し離れた所に横浜の点を打ち、品川から横浜までの東海道本線の線を引いた。そして横浜から大崎までの湘南新宿ラインの線を引いた。東海道本線の線には点をひとつ打ち川崎と書いた。湘南新宿ラインの線には点を二つ打ち新川崎、武蔵小杉と書いた。図を書くに連れて、高麗も゛あっ゛って顔をした。「分かった。山手線の内回り電車で東京→上野→池袋→大崎と進む方法と品川から東海道本線に乗って横浜で降りて、そこから湘南新宿ラインで大崎までいく方法だ!!。」

「正解!一応説明するけど、今品川から大崎まで行くとき、東京近郊区間から出ずに、同じ駅を二度通らなければ、どんなルートで行っても運賃は品川から大崎までの最短ルート、山手線の外回り電車を利用したときの運賃140円と同じなんだ。これ、鉄道旅行部の最初の活動にはピッタリだと思うんだけど、どうかな?」

椎名は「いいかも、私は賛成よ。」熊本は「これなら部費もだいぶ節約出来る。」と言った。これで鉄道旅行部の最初の活動は大回り乗車の研究をすることに成った。 

大回り乗車をするのは良いけど、問題はどこに行くかだ。どうせいくならなるべく遠くまで行きたい。東京近郊区間は東京、神奈川、埼玉、千葉を囲むように設定されていて、東海道本線は熱海、東北本線は黒磯、常磐線はいわき、中央線は塩尻までが区間だ。他にも篠ノ井線の塩尻~松本、伊東線全線など幹線のみならず多くの支線も東京近郊区間に含まれる。しかし大回り乗車は同じ駅を二度通ってはいけない、つまり行きと帰りが別々の路線でなくてはならないのだ。それを考えると東海道本線は茅ヶ崎、中央線はは八王子、東北本線は宇都宮、常磐線は友部までしか行けない。となると東京近郊区間内とは言えど、だいぶ行ける範囲は限られてくる。

「取り敢えず宇都宮とか高崎は行きたいよね。」と熊本は言った。

「私鶴見線とかの支線も乗りたいです。」と椎名。 

「ローカル線とか乗れないの?」と高麗。

みんな行きたいところはバラバラ。でも朝早く集合すれば宇都宮や高崎には十分行ける。東京近郊区間内には八高線や相模線などのローカル線もたくさんある。鶴見線等の支線も東海道本線や山手線見たいに本数は多くないが、タイミングを合わせれば一日で沢山の路線に乗る事が出来る。

「じゃあJRの最低運賃140円でローカル線を優先的に利用して、高崎や宇都宮を通り、鉄道ファンに有名な支線、鶴見線や南部支線を通る大回り乗車のルートを考えよう。」俺は言った。皆は「うん!」と頷いた。しかし俺たちは知らなかった。それがどれだけ難しい事で有ると言うことを。そして皆で何時間も時刻表や乗り換え案内とにらめっこをすることに成ると言うことを。

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