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千住高校鉄道旅行部  作者: 伊東 たかポコ
4/5

第四話 顧問を引き受けてください!

第五話の主な登場人物

土気 翼  二年一組(鉄道旅行部部長)

椎名 結  二年一組(鉄道旅行部部員)

高麗 玲美 二年三組(鉄道旅行部部員)

八代 春樹 二年一組(鉄道旅行部部員)

土山 直也 二年一組担任(物理教師)

蘇我 武司  千住高等学校長

久手 一馬  野球部第六顧問(国語教師)


第4話の続きから

椎名が鉄道旅行部に入ると決まった事で俺達は宝くじにでも当たったかのように喜んだ。

しかし俺ら鉄道旅行部に残された時間は余りない。何故なら、これから顧問の先生を5日で決めなくてはならないからだ。

熊本の話だと顧問の先生は以外と簡単には決まらないと言う。

先生が部活の顧問になるには以下の3つの条件をクリアしなくてはならない。

1 二年以内に異動される予定がない先生。

2 常勤の先生であること。

3 部活の活動日に顧問の先生がいらっしゃること。

部活の活動日は顧問の先生と話し合えば良い。千住高校には常勤の先生がたくさんいる。しかし二年以内に異動する予定がない先生が余りいない。

何故なら公立高校の先生は大体赴任してから3年くらいで別の学校へ異動してしまうからだ。

取り敢えず俺達は一組担任の土山先生に相談することにした。

終礼が終わったあと、俺達は四人揃って土山先生の元に行った。「土山先生、俺達は部活を立ち上げる事にしました。そこで一つ相談があるのですが。」俺が言うと土山先生は「マジで言ってるの?何部を創るの?」と驚いた。

俺は「鉄道旅行部です。もう部員は四人集まりました。しかし顧問の先生が見つからなくて、土山先生は誰か引き受けてくれそうな先生を知っていますか?」と言った。

土山先生は「鉄道旅行部?よその学校では聞いたことない名前だが... まぁ良いかぁ。で、顧問ねぇ~。俺も引き受けてあげたいが異動する話もあるからなぁ~。しかも今年は常勤の先生がみんな2、3個の部活で顧問をしているから今から新しい部活で顧問をやってくれる先生を探すとなると簡単には見つからないなぁ~。取り敢えず校長先生のところに行きなさい。部員も集まったし、届け出を見る限りしっかりとした部活みたいだから、多分力になってくれると思うよ。」と言った。

「分かりました。有難うございました。」俺はそういった。今一つはっきりしないアドバイスだったが取り敢えず校長先生のもとに行けばどうにかなると踏んだ俺たちは早速校長室へ向かった。

「大丈夫かなぁ?」歩いてる時に不安そうに言う八代が言った。椎名も「あと五日以内じゃ流石に…」と言った。

確かに俺が知っている先生は全員何かしらの部活の顧問をしている。職員室にいる先生たちもみんな授業だの質問だのでかなり忙がしそうにしている。授業が本格的に始まったこの時期のに本当に新しい部活の顧問をやってくれる先生は見つかるのだろうか?

しかし不安がっていても仕方がない。俺はみんなに「たぶん大丈夫だから」と言った。みんなも「うん」と頷いた。

校長室の前に到着した。俺は「ドンドン」とドアをノックした。中から「はーい」と声が聞こえた。

俺は「失礼します」と言ってみんなと一緒に中へ入った。

俺は校長先生に「こんにちは、ご相談があるのですが、今お時間よろしいですか?」と聞いた。

校長先生は「いいよ、まぁそこに掛けなさい。」と目の前のソファーを指した。俺たちは「はい」と言ってそこに座った。

俺はまず校長先生に創部届けを出して「先生、僕たちは部活を新しく創ろうと思います。そこで相談したいことがありまして、みんなで伺いました。」と言った。校長先生は「鉄道旅行部ねぇ、で何かな?」と聞いてきた。俺は「顧問の先生が見つからず担任の土山先生に相談したら、“校長先生の所に行きなさい”と言われたので、みんなで伺いました。」と言った。

すると校長先生は「顧問の先生かぁ~、今顧問になれる先生はどこかしらの部活で顧問をされているからね。」と言った。

続けて「鉄道研究部ではダメなのかね。あの部活も旅行とか行くみだよ。」と言った。出ました!ごもっともな意見。俺は何処かでその事を絶対聞かれると思った。しかし熊本や土山先生なと、鉄道旅行部を立ち上げる事に関わった人から一度もその事については聞かれていない。さすがに「鉄道研究部はオタクの集会だから行きたくない。」とは言えない。そんなこと言ったら「なら、君達で鉄道研究部をオタクの集会から本来の活動目的に沿った健全な部活を築きなさい。」とかなんとか言われてしまう。そうなってしまったら二度と鉄道旅行部の創部届けは受け取ってくれないだろう。そしたら1ヶ月弱の俺達の努力は水の泡...。そんなの絶対に嫌だ!しかし返す言葉が見つからない。あぁ、なんか思い出せよ俺!

そう俺が悩んでいると椎名が「今の鉄道研究部は旅行より研究の方に力を入れているようです。その為、この創部届けに記載された活動目的とは大きく離れると考え、新たに部活創りたいと思いました。」と言った。椎名ナイス!これで校長先生もゴーサインを出してくれる!と俺は思った。

そんな中、校長室のドアから「ゴンゴン」とノックの音が聞こえた。「失礼します」と男の先生が一人入ってきた。校長先生は「あぁ久手先生、どうされました?」とその男の先生に聞いた。

俺はこの先生を見たことがなく隣にいる高麗に思わず小声で「誰だ?あの先生」と聞いてしまった。高麗は「知らないわよ。新任の先生じゃない?」と言った。

校長先生との話が終わったらしく「久手先生」と言うその男の先生は俺達の方を向いてこう言った。

「今年から千住高校に赴任した"久手龍輝゛と言います。宜しくお願いします。担当科目は国語です。君たちは?」と言った。どうやら俺と高麗の話が聞こえてしまっていたようだ。

すると校長先生が「この子達は゛鉄道旅行部"と言う新しい部活を創ろうとしている子達だよ。それで今、部活の顧問を探していると言うから相談に乗ってあげている所だよ。あ、そうだ久手先生、あなたは何か部活の顧問とかされてましたっけ?」と聞いた。

久手先生は「野球部の第六顧問をしています。まさかっ、僕に"鉄道旅行部の顧問゛をとでも考えているのですか?校長先生」と言った。その顔は「僕には無理です」と言っているように見えた。

校長先生はニヤッとして「第六顧問の仕事は引率の手伝いと試合の時のマネージャーの手伝いくらいですよね。しかもあと三年はうちの学校にいるし、部活の顧問をお願いします。」と言った。

俺達は「え~ーー」と驚いた。野球部顧問が鉄道系の部活の顧問を兼任するなんて話は聞いたこがない。いくら第六顧問とは言えど野球部での仕事が少ないなんてことは決してない。それに久手先生は国語の授業もある。さらに野球部は土日祝日を中心に試合が行われる。鉄道旅行部の俺達も旅行等と言った校外活動は原則土日祝日にやるつもりだ。つまり野球部と鉄道旅行部のの中で顧問の取り合いが起きる可能性がある。ちなみに顧問が居ないときは原則として部活動は出来ない。

「幾らなんでも無理があるのでは」俺は校長先生に向かって言った。他のみんなも「無茶苦茶ですよ先生」とか「久手先生は大丈夫何ですか?」とか口々に言っている。

校長先生は俺達に「活動は原則君達だけで出来るんだよね?」と聞いた。

俺は「はい、活動は原則として月、火、木、金曜日に行い、旅行等の校外活動は学校が休みの日に行うつもりです。校内で活動する時は自分達である程度のことは出来ます。でも部活として正式に校外活動へ行くときは顧問の先生に付き添ってもらうつもりです。」と言った。

校長先生は「なら大丈夫です。君達だけで活動出来るなら久手先生は鉄道旅行部が活動中するときに校内にいれば問題ありません。顧問としての仕事は緊急時に部室に駆け付けることと、活動終了時に点呼を取ることです。後、鉄道旅行部の活動日に野球部の引率がある日は他の先生に代わりをお願いすれば鉄道旅行部は予定通り活動出来ます。つまりお互いの部活で活動日について揉めることは起きないはずです。後、ここで久手先生が顧問を引き受けてくださらないと鉄道旅行部は期限内に創部することが出来なくなります。創部に失敗した部活はうちの学校は廃部扱いとしますので、鉄道旅行部は多分廃部になります。ですからここはこの子達のためにも顧問を引き受けてぐださいませんか。」と言った。校長先生は本気で久手先生を鉄道旅行部の顧問にするらしい。

廃部はマジで嫌だ!俺達も必死に「久手先生お願いします。」と頭を下げた。

久手先生も校長命令となれば逆らえないのだろうか仕方なさそうに「分かりました、僕も皆さんが必死になって創った部活を廃部にはしたくありません。代理の先生を立てれば活動日にも野球部の引率に行けるのですよね?なら引き受けます。」と言った。

俺達は「やったー、ありがとうございます。宜しくお願いします。」と言って喜んだ。久手先生ありがとう。あなたは鉄道旅行部の恩人だ。高麗と椎名はなぜか泣いていた。嬉し泣きだろうか?八代は跳び跳ねるくらい喜んでいた。

俺達は久手先生に顧問を引き受けてもらい。所定の襴に"顧問引き受け"の印鑑を押してもらった。その後、校長先生に創部届けをみんな揃って提出した。

これで鉄道旅行部は千住高等学校の部活として認められた。

鉄道旅行部は部室として六階の第二選択教室を使用する事が認められた。

校長室に入ってからなんだかんだで2時間が経っていた。時刻は午後六時を回っていた。「取り敢えず今日は遅いから」と言うことで俺達はそのまま帰宅した。

いよいよ鉄道旅行部が始動した。部員は全員高校二年生、顧問は新任の野球部第六顧問。この部活はどんな部活になるのだろう。どんな思い出が生まれるのだろう。俺は高鳴る胸を抑えながら学校最寄りの北千住駅に向かい、常磐快速線で我孫子にある家に帰った。

          第五話へ続く

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