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温泉へGO!


 クソミズ温泉郷にはたくさんの温泉の源泉が湧いているのだが、中でも多いのは卵の腐ったような臭いの硫黄泉がダントツだそうだ。他にも食塩泉や炭酸水素泉、硫酸塩泉、強アルカリ泉もあるらしい。

例の出張所の前から、送迎用乗り合い馬車に揺られて3時間、オレたちはクソミズ温泉郷のゴクラク館近くの停車場で馬車から降りた。ゴクラク館まではゆっくり歩いても5分ほどだそうだ。みなで連れ立って歩くと、道行くひとがみなオレたちに注目する。美女揃いだからかな?


「例の霊酒の原材料になった霊泉と全く同じ泉質の温泉も、この温泉郷のどこかに湧いているらしいですわ」パストさんが言う。

「いいわね。探し出して、エリコをそこに叩き込んでちゃんとした女の子に変えたいわね」スミレナさんが言うと、エリムは顔を青ざめさせた。

「とはいえ、そんな簡単に見つかるところにはないと思います」

「そう、残念だわ」

「私まで参加させてもらって良いのだろうか?」とカリィさん。今日は私服姿だった。

「カリィさんにはいつもお世話になっているから。今日は心ゆくまで楽しみましょう」スミレナさんが笑顔で言う。

「ミノコちゃん、夕食は山海の珍味が食べ放題だからね」

「うん……楽しみ」ミノコは相変わらず口数が少ないものの、表情は楽しげだった。

「俺だけ……荷物持ちかよ」拓斗はひとり大量の荷物を運ばされていた。

「拓斗君は唯一の男手だから、活躍してもらわないと」エリムはまるでどこぞの貴婦人のように着飾らされていて、参加メンバーには女性として扱われていた。

「エリコ? さっきから黙ってるけど、どうしたの?」

「ねえさ……お姉さま、とっても楽しいよ……楽しいですわ」

「さすがはエリコ、良く出来た妹だわ!」


 ゴクラク館は地上5階、地下1階のホテルで、1階にはエントランスと喫茶室、それ以外のスペースは入浴施設だそうで、100人ぐらいは楽に入れる内湯が男女別にあって、内湯から外に出ると千人は楽に入れる巨大な混浴露天風呂があるらしい。とっても楽しみだ。


「混浴露天風呂ですか……リーチ様。水着を着て入りましょうか」とパストさんが提案してきたけど、オレは「パストさん! 温泉に水着を着て入るのは邪道ですよ。水着を着るぐらいなら内湯だけで我慢しましょう」と却下した。

従兄にいちゃんの口癖だったもんな。「いいか、利一。温泉は裸の付き合いが大事なんだ。恥ずかしいからって水着を着るなんてのはもっての他だぞ!」って。従兄にいちゃん、オレ、転生先でも従兄にいちゃんの教えを守ってるよ。


さて、皆で話しながら歩いているうちにゴクラク館の入り口に到着した。入り口の前に「歓迎! ○○さま」と書かれているのは日本といっしょだ。

その中に「オーパブご一同様」と言う看板といっしょに「聖神隊ご一同様」と言うのがあった。聖神隊……まさか……偶然だよな?


エントランスから中に入るとたくさんの人達でごった返していた。

「やあ、リーチちゃん。奇遇だね」

「ロドリコさん、聖神隊の人達も……」メンバー全員、揃ってる……。

「あの~? ここでお会いしたのって偶然ですよね?」尋ねると

「もちろんだよ、リーチちゃん」ロドリコさんは即答した。


なんでもここの温泉に湯治目的で来たんだそうだ。偶然同じ日に泊まりに来て、偶然泊まるホテルもいっしょ。

「こんな偶然ってあるんだな」そう言うと、拓斗が

「ホントに偶然か?  ここはクソミズ温泉の中で一番高いホテルだろ? 湯治が目的ならもっと安いところがいくらでもチョイスできるんじゃないか?」と冷静に突っ込んだ。

「そう言われればそうかもな……。でも……だったらなんで?」

「混浴露天でワニになるのが目的かもな」

「わざわざこんな高いホテルにワニだけが目的で来るかな?」

「ギガンテス級とインヴィンシブル級のバストの持ち主が泊まるんだぜ? おまけにギガンテス級のバストの持ち主は大の温泉好きで、しかも混浴では裸推奨派と来ればな」

「……えっ?」

「リーチ、お前、こないだオーパブの営業中にロドリコにここに慰安旅行に来ることを嬉々として話してただろ?」

「……あっ!?……でも、ここは素泊まりでも1泊2万リコはしたよな? あのひとたちそんなにお大尽なのかな?」

「マザークラーゲン討伐のときの治療費として聖神隊に200万リコを下賜しただろ。あの金をつぎ込んだんじゃないか?」

「や……でも……そこまでする??」

「あいつらならやりかねないと俺は思うぞ」


 「聖神隊ご一行様!! お部屋にご案内します!! 皆様は素泊まりですので食事会場はご利用になれません!! レストランをご利用されるか、温泉街の食堂等をご利用ください!!」係員が声を張り上げて叫んだ。

「うお~っぱい!!」メンバーが応える……普通に「了解~!!」とか言えんのか、あのひとたち!


「じゃあ、リーチちゃん。また!」ロドリコさんが手を挙げる。

「ア……ハイ」

「ところで……リーチちゃんとミノコちゃんもまずはお風呂だよね?」

「はい、そのつもりです……けど」


「みんな!! 部屋に荷物を置いたら、風呂に集合!」ロドリコさんがメンバー全員に呼びかける。

「うお~っぱい!!」

「じゃあリーチちゃん、あとで露天風呂で会おう!」そう言ってロドリコさんたちは係員に案内されていった。


「な? 俺の言った通りだろ?」拓斗が言う。

そこまでして……オレとミノコの裸が見たいのか……? あの人たち。確かに、混浴露天なら堂々と視姦できるけどさ……そこまでして見たいのか?


「オレには全く理解できない……」オレはそうつぶやいた。

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