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拓斗、スミレナとじゃれあう

4/15追記 後半部の会話部分を改変しました

 早足で歩くとエレベータホール前に利一たちがたむろしているのが見えた。わたしの姿に気がついたヴィオッレタが、利一たちに何か話しかけた後、わたしのほうへ歩いてきた。

「あら、お母様。やっぱりお母様になってしまったのね、残念だわ」

「ヴィオレッタ……何が残念なの?」

「だってお母様にはあたしの初めてを捧げられないんだもの」

「勘弁して欲しいわ、ヴィオレッタ」

「ごめんなさい、お母様」そう言いつつヴィオレッタは茶目っ気たっぷりに舌を出した。

「さっき、利一たちに何か話しかけてたけど?」

「ああ、あたしの妹がいるので皆に紹介したいのって言ったのよ」

「妹ってわたしのこと?」

「そうよ、お母様。だってお母様はあたしより年下でしょ? だったら事情を知らない相手にはあたしが姉、お母様が妹として振る舞ったほうがいいかな、と思ったの」

「わかったわ。わたしもそれでいいと思う。お姉さま」

いきなりヴィオッレタはわたしに抱きついてきた。

「ちょ、ちょっと……お姉さま?」

「ああ、お母様に『お姉さま』って呼ばれるなんて感激だわ!! お母様! もっと『お姉さま』って呼んでください!」

ヴィオレッタって普通の『娘』とは違うわね。結構好き勝手に振る舞ってるように見えるのは、やっぱり元がスミレナさんのせいかしら?

「ヴィオッレタ、いい加減になさい!!」わたしが少しきつめにヴィオレッタをたしなめると、ヴィオレッタは名残惜しそうにわたしから離れた。

「ヴィオレッタ、まさかわたしの胸に触りたくて抱きついたんじゃないでしょうね!?」

「お母様、いくらあたしだってTPOはわきまえてるつもりよ」


「……ふたりとも何をしてるんだ?」目の前にいたのはカリーシャだった。

「あら、カリーシャ」

「アリス、ヴィオレッタさんって言うのは、元はスミレナさんか?」

「さすがカリィちゃんね、そう、あたしはスミレナが変身した姿なの」ヴィオレッタはカリーシャに告白した。

「やっぱりか……アリス、どうしてスミレナさんを変身させたりしたんだ?」カリーシャが詰問口調でわたしに訊いてきた。

「ごめん、断りきれなくて。でもすぐに元に戻ってもらうつもりだったの。でも……」わたしは、ヴィオレッタに発現してしまった特能についてカリーシャに説明した。

「スミレナさんがいつまで経っても戻って来ないとなればリーチが怪しみだすぞ?」カリーシャが懸念を口にする。

「あ、そうだ! あたしが元に戻る呪文を唱えたらどうなるかしら?」

「ヴィオレッタ、あなたはその姿を特能によって強制的に固定されてるのでしょ? 無理じゃないかしら」わたしがそう言うと、カリーシャも同意した。

「試すだけ試させて、お母様」そう言うとヴィオレッタはエレベータホールから見えない位置に移動して「ミズデモカブッテハンセイナサイ」と呪文を唱えた。

しかし、何も起こらない。やっぱり特能の効果のほうが強いらしいわね。

「ダメみたいね……やっぱり」ヴィオッレタがつぶやいた。

「ヴィオレッタさんの特能、もうひとつが『自他共栄ウェル・フェア』と言ったか、恐らくその影響か? 私の中にいるアクアがおとなしいのは」カリーシャが苦笑いを浮かべた。

「とにかく、しばらく誤魔化しておくから、リーチに怪しまれない手段を何か考えてくれ」

「わかったわ、カリーシャ。それと、ヴィオレッタをお母様のところに連れて行くから、うまく話をしといてもらえる?」

「それはいいが、風呂には行かないのか?」

「用が済んだら追いかけるから、とりあえず先に行ってて」わたしが言うと、カリーシャは手を上げて利一たちのところへ戻って行った。


 わたしはヴィオレッタを連れてアリサお母様の私室の前に来ていた。扉をノックすると「どちら様?」アリサお母様の声がした。

「お母様、わたしです」

「入っていいわよ」入室を許可されたわたしはヴィオレッタを伴って部屋に入る。

「どうしたの、タクト? と、そちらは? 見たところあなたの娘のようだけど」

「アリサ様、あたしはヴィオレッタです。アリスお母様の娘です」

「アリス??」怪訝な表情を浮かべるアリサお母様にわたしは掻い摘んでこれまでの経緯を説明した。


「そう……あなたが水精を憑依させた相手は軒並み変身してしまうのね? 驚きだわ! あなたが元々天界人だったせいなのかしら」アリサお母様は驚きつつそう言った。

天界人というか……ラブドールだったせいかも? そんなことはさすがに言えないわね。

「というわけで、あたしはタクト……くんの保護者代わりのスミレナです。でも、今はアリスお母様の娘のヴィオレッタなんですけど」ヴィオレッタは微笑みつつアリサお母様に話しかけた。

「そう、よろしくお願いね、ヴィオレッタ。あなたにとって私は祖母になるのかしら?」

「関係性で言うとそうなるんでしょうけど……お祖母様とは呼びづらいです」

「……なら、アリサと呼び捨てでいいわ」

「さすがに呼び捨ては……アリサさん、でいいでしょうか?」

「結構よ」アリサお母様はヴィオレッタににこやかに応えた。

とりあえず対外的にはヴィオレッタが姉でわたしが妹、アリサお母様は良く似た他人で通すことにして、アリサお母様にも了解を取った。

「リーチがお母様にわたしたちについて話しかけてくるかも知れなかったですから。これで一安心です」

「アリス、あなたがタクトであることを、リーチさんには知られたくないのね?」

「いずれバレるかも知れないですけど……今はまだ知られたくないの」

「わかったわ、もしも訊かれてもうまく誤魔化しておいてあげるわ。安心なさい」

「ありがとう、お母様」わたしはアリサお母様に感謝した。


 お母様の部屋を辞した後、わたしはヴィオレッタと伴に足早で大浴場を目指した。

「お母様、アリサって、とってもかわいいわ」ヴィオレッタが口にする。

「ヴィオレッタ、いっそ姉妹の契りを交わしたら?」

「交わすまでもないんじゃない? だって……」

「まあ、今はそれは置いておく事にしましょう」わたしはアリサお母様の私室であった出来事についての会話を打ち切った。

「ところでアリスお母様?」

「な~に?」

「アリスお母様って元はタクト君なわけだけど、タクト君って転生する前は女性だったのかしら?」

「違うわ! 転生する前も男だったわ! どうしてそんなことを訊くの?」

「だって、お母様。あまりにも女らしいから」

「それはきっとね、わたしの女性としての人格はおそらく水精騎士の人格を元に形成されてるんじゃないかと思うわ」

「そうね、元々のお母様には女性的な要素は全くないものね」

「ちょっとヴィオレッタ、そうはっきり言わないでちょうだい。傷つくから」

「ごめんなさい、お母様」そう言いつつもヴィオレッタはあまり悪いとも思ってないように見えた。しょうがない『』。わたしは苦笑した。

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