通学路の首なし軍人
希美が体験した首なし軍人の話は、著者が中学時代、実際に体験した話が基になっています。
自転車の首なし男の正体は不明ですが、部活帰りの通学路でいつも見かけていたのは事実です。
この物語も体験した当時に書いたものです。霊感が強い方とは思いませんが、当時はこのような怪奇現象がちょくちょく身の回りで起こっていました。
とある中学校。夏休みが近づき、生徒たちは夏休みの過ごし方で話が盛り上がる。
クラス会でも、夏休みのイベントについて話し合われた。
クラス全員で夜の学校に一泊するというもの。
夜十時には、皆で怖い話をして盛り上がろうという事になった。
楽しみにワクワクする生徒もいたが、一方で怖い話に怯える生徒もいた。
***
当日の夜、校門の前に集合し、全員揃って教室へ向かった。
教室に入った瞬間、いたずら好きな健太が口を開いた。
「ちょっと寒くなってきた気がしないか?」
怖がりな性格の咲は、体を震わせ希美の腕を掴んで、辺りをキョロキョロと見回し警戒する。
他の怖がる女子生徒も希美の側に寄る。
希美はいつでも冷静で頼り甲斐があるのだ。
担任の指示で、生徒たちが動く。
机を退かして教室を広くすると、丸くなって地ベタに座る。
担任が円の中心に、ろうそくを1本置いて火を灯す。
担任から順番に、皆で怖い話をして盛り上がる。
最後は希美だった。
彼女は怖い話が一番うまい。
冷静な性格で表情もいつもクールなために、余計不気味な雰囲気を演出できる。
希美は懐中電灯を持って話し始めた。
「これは私が部活帰りに毎日のように体験している話です」
希美は、いつも部活で帰りが遅くなってしまう。
そして霊感が強い。
「私、いつも帰りが七時すぎ。通学路でいつもすれ違う男の人がいるんだけど、その人、ボロボロの自転車に乗っていて、よく見ると……首から上がないの」
「なんで男だってわかったんだ?」
男子の一人が聞く。
「体系からして男だったし……ボロボロでよくわかんなかったけど、軍服を着てたから」
「希美は本当に話しがうまいよな」
霊を信じない晴樹は、どうしても希美の話を信じようとしない。
「だからこれは本当に体験した話よ」
咲は恐怖のあまり涙目になっている。
彼女は、来るんじゃなかったと後悔していた。
いつの間にか、希美の腕を離し、怖がりな女子同士で肩を寄せ合う。
希美は、その数日後、近くに住んでいる人から男の話を聞いた。
男は第二次世界大戦のときの軍人だった。
終戦後、家族が皆空襲で亡くなったと聞き、急いで自転車で帰る。
その途中で地雷を踏み、男は命を落としてしまった。
しかし、あまりに一瞬の出来事だったため、自分が死んだことに気づかず、今でも家に帰ろうと必死で自転車をこぎ続けているのだ。
希美が毎日同じ時間帯に見ていたのは、その場から離れられない悲しい兵士の霊だったのである。
≪おわり≫