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Forte Vanno  作者: 月神 莉緒
16/19

第16話

第16話 転々承


 文化祭の準備期間が半分を過ぎ、残りは2週間。

 俺たちバド部の出し物も着々と進んでいた。

 今日は土曜で午前練を終えた丁度その時だった。

 『1年B組の不二崎花乃さん。今すぐに生徒会室に来て下さい。繰り返します。1年B組の不二崎花乃さん。今すぐに生徒会室に来て下さい』

 「生徒会のお呼びだってよ、花乃」

 「そうみたいだね。何だろ?まあとりあえず行ってくる」

 「おー」

 そう言って花乃は生徒会室に向かった。

 「ていうか、何で生徒会の人たちのんちゃんが学校にいるってわかったんだろうね」

 「部活の活動時間とか色々調べたんじゃね?とりあえず飯行こうぜ、学食」

 「そうね、お腹すいたわ」


 そして下駄箱で靴に履き替えている時、リリアが声をあげた。

 「ハヅマ君!」

 「どうした?」

 見ると、リリアは1枚の封筒を持っていて、俺はそれを受け取った。

 サイズは両手のひらくらいで、表には男の字で『桜咲さんへ』と書いてある。

 これは…………。

 「まさか…ラブレターか?」

 「多分………」

 リリアは特に赤くなることもなく平然としている。

 慣れてるのか?

 「まあ読んでみろよ」

 俺はその手紙を返すと、リリアは中を取り出して読み出した。

 「うん、ラブレターみたい。今日の…」

 「まじまじ!?ラブレター!?」

 すると上履きを履いて先に行こうとしていた弥とフーが目の色を変えて戻って来た。

 「リアちゃん告白されるの!?」

 「ばか声がでけえよ。で、リリアどうすんだ?」

 「D組の人みたい。今日の午後2時に第2体育館裏で待ってます、だって。付き合って下さいって話なら断るけど」

 「えー、もったいなくねー?てかリリアちゃん落ち着いてるねえ」

 「初めてじゃないからね。とりあえず学食行きましょ」

 「おう」

 リリアの声とともに、俺たちは学食に向かった。


 昼食を終え、その後バド部の出し物の教室の第3・4特別室に向かった。

 

 丁度着いたところで花乃が合流した。

 「おー、何の用だった?」

 「文化祭に有名人呼びたいから紹介してくれないかって話だった。とりあえず考えとくって言ったけど」

 花乃の返事に弥が返す。

 「そんなのほっとけばいーじゃん、こっちだって忙しいんだし。それより花乃、すっごいニュースだぞ」

 「え、何があったの?」

 「リアちゃんがラブレターもらったの!」

 「えーーー!?」

 「だからあんまでかい声出すなっての。リリア、そろそろ時間だろ?」

 「そうね、じゃあ行ってくるわ」

 「おう」

 そう言ってリリアは特別室を出ると、弥が口を開いた。

 「それにしても相手も何でわざわざ土曜に告るんだろうな」

 「邪魔が入りにくいからだろ。まあこの日の2時にリリアが学校にいるということが分かるやつじゃないと出来ない告り方だけどな」

 「そーいえばリリリんの相手ってどんな人なんだろうね」

 「………覗きに行くか」

 「は?」

 また弥がロクでもないことを言い出した。

 「やめとけよ趣味ワリィ」

 「何でだよハヅマ!気にならないのか!?」

 「そりゃ多少は気になるけどそういう問題じゃねえだろ?」

 「そういう問題だっつうの!よし、冬美!花乃!行くぞー!」

 「「おー!」」

 2人も乗り気らしい。

 全く俺の親友どもと来たら………。


 そんな感じで俺たちはまた第2体育館に来た。

 第3・4特別室から第2体育館は遠いんだし、告るやつもその辺のこと考えて欲しいもんだ。

 俺たちは第2体育館に向かう途中にリリアに追いつきそうになり、そこから尾行する形で第2体育館裏に到着した。

 「おお、あれが相手か」

 既に待っていたらしき男を見て弥が声を出した。

 「しっ!もっと声潜めてルンルン」

 「しっかしあの男、なかなかイケメンだな、フー」

 「そお?マーちゃんのほうがイケてるよ」

 「そうか?」

 「しっ!喋り出した!」

 さっきから一番真剣なのは花乃らしい。

 相手はずっと前から好きだった、付き合って欲しいといったことをリリアに話している。

 あいつは断ると言っていたが、相手もなかなかの好漢だ。

 だが、万一あいつが告白を受けでもしたら、部の活動に支障が出かねない。

 だが。

 「ごめんなさい。今は恋愛する気はないの」

 リリアは告白を受けなかった。

 「そっか。ありがとう、話聞いてくれて」

 そう言い残すと、男は背を向けて走り去って行った。

 青春してるなぁ……………少年。

 まあこうなったら隠れてる意味もないか。

 「よ、まじで断ったんだな、もったいない」

 俺は考えていたことと真逆のことを言いつつリリアの前に姿を現した。

 「ハヅマ君。それに皆も!見てたの?」

 「あははー、ごめんねリリリん」

 「んーまーいーけど」

 「つーかなんかあっさり終わったな。もーちょいなんかあってもよかったのに」

 弥がまたロクでもないことを言った。

 「なんかって、波風立てず終わるのが一番だろ。ほら、特別室に戻ろうぜ」

 「そうね」


 そして、特別室での準備進行中。

 「ハッチー、このレーザーってここでいいー?」

 「いや、その2個右のイスに鏡置いてレーザーはここに置いて出してみ」

 「おー!繋がった!」

 「マーちゃーん!これってどこに置くのー?」

 「それはそこの通路に隠して置け。でそこの天井に音波のやつな」

 「ハヅマくーん!この仕掛けってどこと繋げる?」

 「3個目の回転の上に紐通せ」

 俺は一応監督的な立場であるがゆえ、こうして質問攻めにされているのだ。

 まあ決して楽しくないわけではない。

 むしろやり甲斐があるし、これでリリアの言う通り部活部門の最優秀賞を取れたら俺は腹の底から喜べるだろう。

 夏の間にこの準備期間に備えて仕事はかなりこなしたし、個人の勉強は授業中に何とか縫いつつ進行しているため、俺は心置きなく文化祭準備に臨める。

 さらに部活動も準備の進行具合を見て毎夜スケジュールを組み立てているのはなかなか楽しく、学校のシステム上その分もしっかり内申点に加算されるため、俺はこのところかなり充実しているのだ。



 文化祭の前夜。

 俺たちは準備工程の最終段階を消化しきり、題して『レーザーラビリンス』と『牢獄屋敷』を完成させた。

 「「「「できたーーーー!!」」」」

 1ヶ月かかった準備に俺も深い安堵をもらし、4人は盛大に大の字で寝転がった。

 「おいおい、汚いぞ」

 「いいじゃねえか今日くらい」

 「あーー!明日が楽しみーー!」

 花乃が待ちきれない興奮を漏らし、解散となった。

 

 

 帰宅すると、留守電が入っているようだった。

 連絡の相手は………芸能プロからか。

 トゥルルルルルルルル……ガチャ。

 「もしもし、音宮です。電話もらってたみたいですけど」

 『音宮さん!よかった!大変なんです!』

 「どうしたんですか?」

 『ある企画の担当の作曲家さんが急に下りたんです!3日後までに2曲お願いしたいんですけど何とかなりませんか』

 「んー、クオリティをあまり意識しなければ何とかなると思います」

 『本当ですか!ありがとうございます!さすがは音宮さん……!』

 「大げさですよ。てかそんなに大事な企画なんですか?」

 『それはもう。社運も結構かかってますから。下りた作曲家の方は契約破棄になりましたよ』

 「そうですか。責任重大ですね」

 『はい、では早速曲のイメージですが……』

 数分後。

 『ではよろしくお願いします!』

 「はい、それでは」

 ガチャッ。

 正直3日で2曲は文化祭を回ることを考えるとキツいが、歌詞はいくつか貯めがあるし何とかなるか。

 

 **********************


 翌日、ついに文化祭が開催された。

 4日間ある文化祭で、初日と2日目を前半、3日目と4日目を後半といい、出店の場合は前半は各クラスの半分が出し物を開き、後半は各クラスのもう半分が担当するというシステムだ。

 部活別の出し物は前後半に部活ごとに分かれ、俺たちバド部は後半に開く。

 俺のクラスの出し物は劇で、初日に1回やればそれで終わり。

 しかも出番は午前中の最初に終わったため、あとは伸び伸び過ごし、後半の部活別の出し物に臨める。

 というわけで俺たちは、バド部5人で色んなライブや出店を回っているところだ。

 「次あれ行こう!ラーメン屋さん!」

 リリアは俺らの出番の前から絶好調で弾けている。

 「いいね!ほらマーちゃんと弥も!」

 「……なあハヅマ。子供の世話って大変だな」

 「全くだ。お前も含めて」

 「はい?俺のどこが…おーーー!!綺麗なおねいさーーん!!」

 「…その辺がだよ」

 「ねて見てマーちゃん!アンパンマンがいるー!写真撮ろうよ!」

 「アンパンマンって…完全に子供ウケ狙いだろ。恥ずかしいから行くぞ」

 「そんなこと言わずにさー!ほら!」

 「うおっ!引っ張んなってのに……ふふっ」

 「ハイチーズ!」

 「はいはい」

 「ふゆみーん!ラーメンお待ち!」

 「あれ、お前らそれ買ってたのか」

 「うん、ハッチのもあるよ。あれ?ルンルンは?」

 「あーあいつは…て帰って来た」

 「撃沈…………」

 「うん、だろうな」

 「はははははっ!またルンルンナンパしてたの?」

 「クッソー」

 「ねえハヅマ君!お化け屋敷行くわよ!」

 「え、どこの?」

 「2年E組だって。リリ達のお化け屋敷と比較の意味も含めて」

 「そーだな。よしお前ら、行くぞ」

 「「「おー!」」」


 俺の掛け声で来たお化け屋敷は、予想以上に空いていてすぐに入れた。

 2人ずつしか無理だということで、まずは言い出しっぺの俺とリリアが入った。

 「おおー、割と雰囲気あるな」

 「う、うん。そうね………」

 「……お前さ、もしかして怖い?」

 「ま、まあちょっとは……キャア!!」

 突然の悲鳴とともにリリアは飛び上がった。

 見ると天井から猫の死体がぶら下げられている。

 しかもこれがまた文字通り死ぬほどリアルだ。

 「また趣味ワリィなあ」

 「ほ、ほんとよ全く!びっくりしたぁ………」

 「俺はお前の声にびっくりしたよ。あとカーディガン引っ張りすぎ」

 「だ、だってぇ……」

 そんな甘えた声出されても……困る、ホント困る。

 その後も散々驚くリリアに驚き続け、何とかゴールした。

 だが、出口にはあいつらが列から外れて待っていた。

 「どうだった?」

 「うちのほうが勝ってるな。つかお前ら何で並んでねえんだよ」

 「いや、どうせなら全部のお化け屋敷制覇しよっかなってことになってな。次は花乃と冬美がいく」

 「そっか。んじゃ次行こうぜ」


 その後2時間かけて全てのお化け屋敷を攫った。

 その日はクレープやらたこ焼きやら文化祭の定番の出店をまわり、2日目も初日同様に過ごした。



 2日目の終わり、俺はリリアと特別室で最後のチェックをした。

 特に問題ないことを2人で確認し、帰ろうと校門を出た時。

 「あ、ごめん。リリちょっと忘れ物しちゃったから取ってくるわ」

 「おー、じゃあ俺ここで待ってるから」

 「う、あの………」

 「ん?」

 「で、出来れば一緒に来て頂けないかと………」

 あー、これは気が利かなかったな。

 「ああ、わかった」

 俺が了承すると、途端にリリアは顔を明るくした。

 「ありがとう!ごめんね、リリのために」

 「別に?早く行こうぜ」

 「うん」


 改めて校舎に入ると、中は真っっっっ暗だった。

 先生や明日の準備で泊まる生徒もいるらしいがこの光もなく、俺たちは真っ暗な廊下を2人で歩いた。

 「な、なんか夜の学校って不気味ね。ハヅマ君怖くないの?」

 「全く。つか何で暗いと怖いがイコールなわけ?」

 「だ、だってほら。で、出そうっていうか」

 「幽霊がだろ?そんなもん出るわけあるか」

 「は、ハヅマ君!バチあたるよ!」

 「あたらねえよ。大体幽霊なんざ昔の人が理解不能な現象をそう呼んでただけだろ?それが今世の中じゃ理解可能になってんだよ。そういう意味では神だの何だのも同じだよ。全く下らない」

 「す、すごいわねハヅマ君……キャア!」

 「え?なに?」

 「あ……風だった。ごめんなさい」

 「……それはいいが、痛い」

 「え?あ!」

 リリアは我に返って俺の肩を力強く握っていたことに気づいた。

 「ご、ごめんなさい」

 「まあいいけどさ。ほら行くぞ」

 「う、うん」

 その後もリリアは事あるごとに叫び散らし、何とか忘れ物を奪還して外に出た。

 「お前ビビりすぎだろ…」

 俺はもう耳がいたい。

 「ご、ごめん……」

 その後俺はリリアをバイクの後ろに乗せて帰った。

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