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【海峡の全寮制男子高】城下町ボーイズライフ【青春学園ブロマンス】  作者: かわばた
【20】愛とは君が居るということ【適材適所】
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プレゼントを探せ

「幾はプレゼントされるなら、やっぱサッカー関係?」

「そうだなー、今だったらケートスかファイブクロスのユニフォームかな。次のシーズン、福原先輩の妹さんが車で連れてってくれるんだ。まだどっちのチーム応援するか決めてないけど」

 福原先輩とは、グラスエッジのギター担当の福原で、実家が御門寮のすぐそばにある。

 カメラマンをしていて、サッカー関連の仕事も多い。

 地元のチームを応援していて、幾久も一緒に試合を見に行かないか、と誘ってくれている。

「どうせ応援するなら、ユニ欲しいじゃん」

「ファイブクロスなら、僕が持ってる」

 周防市のサッカーチーム、ファイブクロスのユースに所属していた御堀は当然、ファイブクロスのユニフォームを持っている。

 幾久が苦笑した。

「誉のってガチの奴だろ」

「そう。お下がり」

「着れないよー」

「彼シャツとかって人気になりそう」

「またそんな事言うし」

 もう、と呆れるが、応援に行くなら確かに欲しいなと思う。

「誉は?もし行くなら福原さんに頼むけど」

「行く」

「即答かよ」

「多分、ファイブクロスなら知ってる人いるし」

「だよね」

 そう言ってスポーツショップを去り、流れで鞄や小物を見る。

「雪ちゃん先輩は、なににしようかな」

 雪充は持ち物がかっちりしていて、大人っぽい雰囲気なので何を買えばいいか判らない。

 御堀が言った。

「案外かわいいもの好きだよ」

「そういや、イギリスのお土産も凄く可愛いお菓子だった。キーホルダーもテディベアだったし」

 夏にイギリスに留学した雪充は、幾久にも御門寮にもお土産を買ってきてくれた。

 寮の全員用にロンドンバスの形をしたブリキ缶に入ったショートブレッドと、絵本みたいに可愛いパッケージに入ったティーバッグ、それにキーホルダーも貰ったが、テディベアとユニオンジャックのついた可愛いものだった。

「あれ、雪ちゃん先輩の趣味なんだ」

「そう」

 なにがいいかな、と悩む幾久に御堀が言った。

「受験生なら、ノートとか文房具なら、あっても困らないんじゃないかな」

 文房具か、と幾久は頷いた。確かにそれなら、予算で十分良いものが買える。

「じゃあ、見てみよう!」

 丁度大きな文具店があるので、探してみようと幾久と御堀は移動する事にした。


 文具のほかに雑貨もあるので、麗子さんへのプレゼントを探す事になった。

 まずはバスグッズを探そうとうろついていると、御堀がコスメのコーナーに引き寄せられる。

「誉?どこいくの?」

「こっちのほう見てみたい」

 そういってどんどん進んでいく御堀の後を幾久は追いかける。

 御堀が足を止め、幾久に言った。

「これなんかどうかな」

「ハンドクリーム?」

「うん。栄人先輩も使ってるだろ」

「そうだね」

 麗子や栄人は水仕事をすることが多い。

 いろんな缶やチューブに入ったハンドクリームが山ほどある。

 ハンドクリームを見て、幾久はふと、ある人を思い出した。

 手を使う仕事だから、これがいいかもしれない。



「なんかこれいいね。いろんなのあるんだ」

 ハンドクリームなんか自分では持ってないし、寮ではもっぱら置きっぱなしの大きな青い缶のニベアくらいしか使っていない幾久は、種類の多さに目を奪われた。

 パッケージも缶やチューブ入りと色々あるし、香水みたいにきつい香りのものから柔らかいものまで色々だ。

(雪ちゃん先輩は文房具がいいけど)

 女性はきっとこういうのが好きなんじゃないのかな、と思い、幾久は麗子や六花、そして菫のことを思い出した。

 なにもない時にプレゼントをするのは気が引けるが、雪充のついでなら菫にも気軽に渡せる気がする。

「今日、江村君って寮に帰るんだよね?」

 幾久の問いに、御堀が頷いた。

「うん。恭王寮は二十八日から四日まで閉まるんだって。だから寮だよ」

 だったら、言付けて雪充に渡して貰えば大丈夫だろう。

「よし、じゃあハンドクリームにしよう」

「でさ、幾、僕考えたんだけど」

「うん?」

「ウィステリアの先輩達、どうする?」

「……ちっとも考えてなかった」

 そういえば、ウィステリアの先輩達には、本当に本当に本当にお世話になっていたというのに、これといってしていない。

 お礼は勿論、何度も伝えたし、向こうもいいよ、と笑ってくれた。

 時山の彼女である把子は、夏コミで幾久が本を買ってきたので全然オッケー!と言ってくれていたが、大庭や松浦には世話になりっぱなしだというのに、お礼は言葉以外したことがない。

「そうだよ、なんかしとくべきだよね、やっぱり」

 ああしまった、と幾久は思う。

 どうせならもっと早く準備しておけば、クリスマスにプレゼントできたのに。

「オレ、気が利かないなあ」

「気が付いたからいいんじゃない?」

 そして、これなんかどうかな、と箱を示した。

「セットの奴だけど、限定だって。いろんな香りがあるみたい」

「本当だ」

 御堀が示したのは、ギフト用のセットで、ギフト限定の香りのハンドクリームだった。

 それぞれ香りの違う小さいチューブのハンドクリームが箱に入っていて、それが六個ひとつにまとめられている。

「あ、じゃあウィステリアの先輩達はこれにする!」

 よく見ると、菫の香り、というのがあった。

(菫さん、これでいいかなあ)

 名前のままというのは安直な気がしないでもないが、あの人だったら喜んでくれそうだ。

「オレ、これ買うよ。六花さんにもお世話になるし」

 年末、御門寮が閉鎖される間、幾久は久坂の実家に泊まることになっている。

 家に帰らなくていい所か、麗子と全く同じ料理の腕を持つ六花のごはんが食べられるのでいいことずくめだ。

「でもハンドクリームだけってどうなんだろう」

 うーん、と悩む幾久に、御堀が笑った。

「ウィステリアの先輩には僕からリップを買うつもりだったから、二人一緒ならそれでいいんじゃない?」

「そっか、それならいいよね」

 ハンドクリームだけではちょっと少ないかな、という気がしたけれど、御堀がリップを買うなら別にかまわないだろう。

「麗子さんはそれに入浴剤でもつけたらどうかな。うちの姉が気に入っている入浴剤があってさ」

「誉のお勧めに従うよ。オレわかんないもん」

 それと、と幾久は誉に尋ねた。

「あんまり香りが強くないのってあるかなあ」

「探してみたら?試供品、いっぱいあるし」

 幾久は頷き、片っ端からキャップをあけては香りをかいでみたり、手触りを確かめてみたりした。

(これにしよう)

 香りも控えめで、使い心地もいいし、ドイツ製とあって、なんだか洒落ている。

 幾久が選んでいると、御堀が上からのしっとのしかかってきた。

「もう、邪魔すんなよ誉」

「あとさ、ちょっと不満があるんだけど」

「なに?」

「僕へのプレゼントは?」

「……全く何も考えてなかった」

 そういやそうだ、寮の先輩達へのプレゼントと雪充へ、麗子や六花までは考えていたが、御堀や児玉の事はすっかり頭から抜けていた。

「あーあ、幾ひどい。夫にクリスマスプレゼント、なんもなしって」

「夫て。まだロミジュリ引きずってんの」

「当然。だってすごいどかんどかん来るし」

「どかんどかん……何が」

 尋ねて幾久は「やっぱいい」と顔を背けた。なんかろくな予感がしなかったからだ。

「うーん、誉かあ。だってプレゼントいっぱい貰いそうじゃん」

「言い訳。幾、すっかりそんな事考えもしなかったろ」

「そりゃまそうだけど」

 しかしいざ、御堀にプレゼントとなるとどうすればいいのか。

 幾久はのしかかっている御堀を押し、まじまじと真正面から御堀を眺めた。

 見慣れているからちょっとは慣れたとはいえ、御堀はイケメンな王子様だ。

 今日だって私服だし、妙に気合が入っていてかっこいいし、そういえばコスメコーナーに居る女子がちらちらこちらを見ている。

「誉はそのまんまでかっこいいんだからそれでいいじゃん」

「どういう理屈」

 むっとする御堀に、面倒くさいな、と幾久は思って、目に付いたリップを手に取った。

「ほらこれ。これ買ってあげるから」

「すっごい適当に選んだね?」

「誕生日はちゃんといいの買ってやるから!いいじゃんもう」

「……幾って僕の誕生日知ってるの?」

「え?知らない」

 なんとなく、御堀の誕生日はとっくに過ぎているものとばかり思っていたが。

 御堀はむっとして言った。

「僕の誕生日は、一月一日。もうすぐ」

「えっ、マジで。じゃあ誉ってオレより年下じゃん」

「……」

 言うに事欠いてそれか。御堀は思った。

「なーんだ、年下かあ。よしよし、お兄ちゃんがプレゼント選んであげるね」

「すっごいむかつくんだけど」

 本当にむっとする御堀に、幾久は笑った。

「だって年下なのは違いないだろ?わーい、オレ、誉より年上だー」

「プレゼントいらない」

「嘘だって。いじけんなよもう。本気でなにか考えるからさ」

 そう笑うも、幾久は思いがけず御堀が自分より年下な事にうれしくなる。

「なんか誕生日だけは誉に勝てた!」

「やっぱむかつく」

「ごめんって」

 そう笑って、リップを籠に放り込んだ。


 商品を見ているうちにちょっとおなかがすいてきたので、幾久と御堀は食事をすることにした。

 幾久のリクエストは親子丼。

 お昼をちょっとすぎた時間だったので、そこまで待たずに店に入れた。

 二人で親子丼をほおばっていると、御堀が幾久に尋ねた。

「これ食べた後にさ、甘いもの入る?」

 御堀が尋ねると幾久は頷いた。

「全然いけるよ?なにか食べたいものあるの?」

「食べたいって言うか、営業、かな」

「営業?」

「そう」

 ふふんと笑う御堀に幾久は言った。

「悪巧みだな」

「そう、その通り。でもおごるからいいだろ?」

「おごりならね」

 おごりならかまわないと幾久は思っていたのだが、やはり御堀の営業と言う言葉は間違っていなかった。

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