【裏のやつだ】
棗の授業が終わったあとの夜。
マキの任務が終わったあとの夜。
今は9月下旬。 25日の深夜2時。
さすがに2日連続で睡眠なしで見張りなんかやっていると、仕事にもならないということで、いつもより早く終わった。
すぐに部屋に戻ったマキは、風呂に入り、歯を磨いて、着替えて寝ようとした。
コンコン......
布団をかけて寝ようとした時だった。
ベットの隣の窓に、カーテンで隠れるシルエットが月光でよく見えた。
「......んだよ......」
あくびをしながら 小声でそう言うと、カーテンをめくった。
目の前にいたのは 龍雅 棗。 窓をコンコンと叩いてマキを呼んでいた。
「はぁ~......」と、ため息をついたマキ。 仕方なく窓を開けて「何?」と聞く。
「話したいこと 山程あんだよ」
......深夜に? よく眠くならないよね...... 貴方はどうやった生活をしているのですか!!
頭の中でそう呟いた。 ......が、口ではこう言っていたらしい
「......いいよ? 眠いから早くね」
一体 私はなんなんだって......
ここじゃ聞かれるかもしれないと棗が言ったもんだから、深夜には滅多に人は現れないという 端の森の中に入り込んだ。
運が悪いと幽霊が現れるとかあるらしいから人が居ないんだろう。
そんなことも恐れず、ズンズンと奥へ行く棗。
月光でしか見えないような真っ暗な所まで行くとやっと足を止めた。
「......で、何?」
足にまとわり付く虫やクモの巣を死ぬ気で振り落としながら言った。
「お前知ってるか? 今日 俺らんとこにマキ・リンカーンが来たってこと」
単刀直入に言われるその言葉。
すごく驚いてしまった。 だって......
「......裏のやつだ」
「は?」
知っていたからだ。
「私より15年は若い。 イザベラ様の妹の娘さんだから......母さんの姪っ子ってとこだね」
一番簡潔に答えたマキ。
「......お前らの家族構成 分かりにくいな......」
「はぁ~」とため息をつかれたマキ。 別に貴方に分かってもらおうとしてるわけじゃないんですけど......と言おうとしたが、やめておいた。
「でも おかしいね? 誰かの守護に来たのかな? 自分の姿隠しきれないのって結構な素人だよ?」
腕を組んでマキをずっと見る棗。
......私もですね
「......やり方がわかんないんだよ!! 教えてもらう奴だっていないんだから!!」
投げやりに答えたマキ。 「別にいいんだけどよ」と言った棗は、組んでいた腕を下ろした。