【企んでるね】
あれから10分経っても 口には居れようとしなかった棗。
気にしず番人としての仕事に専念しようとしていた......とその時
何が起きたかは知らないが 丁度マキの隣の地面で鳥が大量発生していた。
今まで信じて居なかったハトの「ポッポー」という鳴き声にやっと信じさせられた。
だが、そのせいでイライラが増し、「うるさいなぁ!!」と叫んでしまった私。
......と同時に何故か見てしまった隣の木。
そこには思いも寄らない光景が待ち受けていた。
「......」
言葉を失ったマキ。
なんと 目の前には、ハトに野菜を投げる棗がいた。 そう、その野菜は先ほど嫌いと言っていたサンドイッチの野菜だったのだ。
「セコイことすんなよ、お前ぇぇぇぇぇええぇぇ!!!!!!」
これは 多分全力で自ら言った言葉だろうな
マキの声で驚いたハトは全て飛び去った。
目の前には耳を抑える棗。
「声でけぇよ......」
貴方が セコイことするからでしょぉぉぉぉぉぉぅう!!!!?
すぐあとに木を飛び降りた棗。 口には サンドイッチの食パンのみ!! はい、ウザい!!
「んじゃなー」
棒読みで手をふる。
ウザいのに、ウザいのに......なぜか手をふり返した。
しかもあっという間に怒りもおさまってしまう。
......最悪だ。
あれからは 誰も正門には 近づかなかった。 しかも今は23時。 夕飯の運び屋も無し。
さっすがに 腹が減りすぎて 腹音も鳴らなくなったよ。
「肌寒っ......」
ああ、そうか。 今考えればもう9月の下旬だった。
夏も終わりか......。
そういう間も、夜風はお構いなしに吹き続ける。 昼間とは明らかに違う暑さも、よく考えれば不思議なものだ。
「......たそがれちゃって......お腹減ったでしょ」
後方からする声は ちょっとだけ 幼さが残った 懐かしいものだった。
それはもちろん......セガレだったが。
「昼も食べてないからね。 感覚もおかしくなってるよ、ずっと座ってるから」
そう言って少しだけ微笑む。
「一緒に食べよ。 対したものじゃないけど」
そう言って ビニールに入ったおにぎりとお茶を差し出してくれた。
もちろん 受け取ったマキ。 そして言う。
「何を言わせたいのかな?」
「あは、バレた?」
ニコッと笑ってマキの隣まで車椅子を移動させた。
だって逃走しようとしてるとか思われてる身で 飯なんか貰えますか?って考えるのが普通だろう。