【己のために】
なんで早く気づかなかったのだろう。 私がコピーでテレポートを使えば......一瞬だったということを。
シュンっ
と、いうことでテレポートを使って組織正門に戻って来た。 正門の奥からは生徒の声が聞こえない。 ということは、みんな 室内での学習か。
「素晴らしい。 言霊の持ち主がいるのなら、ここはひとまず安心だな」
ケラケラと笑うレオン。 はっきり言ってしまおう。 気に入らない。
「これからはむやみに魔法を使うなよ。 お前が『妖姫』と ばれたら、みんながみんなここに押し寄せて来てしまうからな。 まぁ、制御アイテムがあるから平気か。 これから兄さんにもらうハズだから」
ズラズラと 止まらず、しかも噛まずに言ったレオン。 最後には『バイビー』と手を振って車で何処かへ行ってしまった。
こんな短時間でいろんなことが起こりすぎだ。 なぜか私の人生がいつの間にかスリリングへと化している。 心臓に悪いな、全く。
ハァ~......とため息をしてから正門隣の石段に腰をおろした。 そうするとすぐ近くでズルズルっという音がかすかにした。
「ため息一回で 幸せ一個逃げちゃうんだから!!」
ズルズルの正体は、車椅子の包帯男。 そう、セガレ・パーパトラ
セガレは スッと持っていた紙袋をマキの前に差し出す。
「全部 君のものだ。 つい先ほど君が行って来た任務のことが詳しく書いてある資料も、君が『妖姫』と呼ばれている資料も入っている。 僕は忙しいからね、目を通しておきなさい。 時間は山ほどあるんだから」
もちろん。 あんたが番人なんかやらせちゃったからね。 まぁ、私から承知したんだけど。
差し出された紙袋を受け取ったマキ。
「制御アイテム、ちゃんとつけるんだよ!!」
それだけ言ったあと、すぐに室内に戻って行った。
「......何を急いでいるのかって......」
そう一言呟いて紙袋の中を見た
中には制御アイテムと思われるアクセが大量に入っていた。
「多っ......」
それは、ネックレスが2個、ブレスが3個、ヘアゴムが1つ、リストバンドが1つ、最後にはピアスが4つ。
これ全部 つけろって?
ダサ。
そういいながらも全てをつけたマキ。 髪はいつもといっしょで後ろだけいわいていた。
全部つけたあと、すぐに資料を手にとった。 最初に手にとったのは......『任務』と書かれた資料だった。
ピラッと、疑いも無しに資料をめくる。 そのあとすぐに 目が驚くほど丸くなった。
「......世間に出回ったレベル5の能力者の情報を取り消すため」
思わず声に出して読んでしまった。
その他の内容は、思ったよりも簡潔に書いてあった。
情報が出回ると、その中でも優秀な能力者が誘拐されることもある。そうであっても全員が自分の情報を消して行けば 広まることなどあり得ない。
死にたくないのなら、全力で任務を遂行すること。
それだけ大文字で書いてあった。
情報だけ消せばいいじゃないか......とか思ったが、もちろん相手も能力者。 そんな甘いこと言ってられないってか。