歌姫
あたしの名前はコッコだよ。路上ライブしていたら不良に絡まれてウサミちゃんに助けてもらったの。
ウサミちゃんは路上ライブの時に見回ってくれるようになった。ギターが近所のゴミ捨て場に捨ててあったボロボロのを使ってるからもっといいギターが欲しいって言ったらウサミちゃんから怪盗キッズに誘われて加入する。
今夜は上野美術館の前に実行部隊が集合していた。通信部隊のクロウくんと料理部隊のぷーやんはアジトだよ。
親には友達の家に泊まってくるって伝えてる。
アジトは宿泊もできるから便利だね。
跳ねてるウサギの絵柄が描かれた大きなトラックはウマオくんが運転してきた。あたしたちはタクシー移動だ。
クロウくんからみんなに通信が入る。
「停電させたで。もう通報でけへん」
ウサミちゃんはニヤリと笑う。
「了解だ。チューベエ頼む」
「OKっち」
チューベエくんは入り口の扉の鍵穴にピックを差し込む。すぐに解錠した。
ウサミちゃんはチューベエくんの頭をなでなでする。あたしたちはトラックから宝石を入れるための梱包ケースの入った段ボールと台車を積み下ろして館内に運ぶ。正面から懐中電灯の灯りに照らされる。ヤバっ!
「止まれッ!何者だッ!?」
警備員が2人もいる。固まっていると警備員の背後にぬうっと狼が現れた。
「ぐぁあああああ!」
2人の警備員は雷を喰らったようにしびれて床に倒れ込む。
ビリビリグローブは疾風迅雷のキンローくんにぴったしのアイテムだ。キンローくんは警備員2人を用意していたロープで円柱の柱にくくりつけた。
縄で人を縛る練習もみんなでしていた。邪魔者を片付けたあたしたちは安心して宝石を盗み出す。
チューベエくんがショーケースの鍵を開けてくれるので中から宝石をどんどん奪う。根こそぎ頂いちゃう♩宝石が傷つかないように梱包ケースに納めて段ボールに入れて台車に乗せてトラックへ運ぶ。流れ作業だ。
トラックへの積み込みは怪力にクマどんが大活躍した。
ウマオくんに全部積み終わったことを伝えたらあたしとウサミちゃんを助手席に乗せてくれた。
ほかのみんなは乗れなかったから交通機関でアジトに帰還した。
お宝ギャラリーに盗んだ宝石を運び込んでミッション終了♩パーティルームでうたげが開かれる。
白いクロスのかかったテーブルにはぷーやんが作ってくれた豪勢な料理が並んでいた。
「かんぱ〜い♩」
ジュースのなみなみ注がれたジョッキで乾杯する。一気に飲み干した。
仕事終わりに飲むジュースが1番うまい。
「ぷは~五臓六腑に染み渡るぜ」
キンローくんはドンっとジョッキをテーブルに置く。
あたしはカツ丼に手を伸ばした。カツがジューシーで卵はふわっとしてて玉ねぎはシャキシャキ。味付けも最高でほっぺが落ちる。
「どや?うまいやろ」
コック姿のぷーやんが声をかけてくる。
「すごいおいしい♩2杯いける!」
「おかわりもあるで。もりもり食べてな」
「うん♩」
あたしはカツ丼をかきこんだ。クマどんが大皿に山盛り乗ったから揚げをバクバク食べてる。
めちゃくちゃおいしそう。あたしもひとつもらってカツ丼に乗せて食べた。うまい♩
麻婆豆腐や中華丼もあるしパスタもいろんな種類がある。いっぱい動いたし子供は食欲旺盛だから、料理はどんどんなくなった。けっこう満腹になったところでウサミちゃんに声をかけられた。
「コッコ。初仕事に成功祝いに一曲頼む」
「いいよ!」
あたしはギターを持ってステージに立つ。パーティルームには舞台もあるの。演劇ルームほど広くはないけどね。マイクスタンドはすでに用意されていた。準備がいい。
「歌います!怪盗キッズの歌!」
あたしはジャジャーン♩とギターをかき鳴らす。くちばしを開いて叫ぶ。
闇に立ち向かう天使たち
小さな手を罪で汚し
幼き背に覚悟を刻み
燃えるハートで突き進む
行け行け怪盗キッズ
即興ソングだけどなかなかの出来栄えだ。心の中で自画自賛する。
「すごいっち!」
「うますぎじゃ!」
「染みるぜ!」
みんな盛り上がってくれて拍手が巻き起こった。調子に乗っちゃいそう。
ぺこりと頭を下げてステージを降りる。ワイングラスを傾けてぶどうジュースを飲んでるウサミちゃんに声をかけた。
「ねえねえ、宝石って売ればいくらになるの?」
「200億ぐらいだね」
「どひゃ〜億万長者だッ!」
あたしは頬に両手をそえて絶叫する。話を聞いていたみんなもざわつく。
「あんたたちの通帳用意しておいたからあとで配るけど派手に使うんじゃないよ」
「OKボスッ!」
あたしたちは敬礼する。
「売るあてはあるのか?」
ウマオくんは素朴な疑問をぶつける。
「宝石マニアを何人も知ってる。すぐに売れるさ」
「姐さんの人脈はすげーや!」
「さすがっち!」
「まあね。ところでケーキはないのかい?」
「わいはスイーツはムリやねん。パティシエスカウトしたほうがええで」
「ドライバーも増やすべきだ」
「楽器隊もね♩」
さっきギターだけじゃさびしかった。バンドが組めるといいなぁ。
「りょーかい。やれやれまた旅にでなきゃなんねーな」
ウサミちゃんはみんなの要求を簡単に飲んでくれる。旅ってことは新メンバーは全国から有望な仲間を集めてるんだ。近所から集めてるのかと思ってた。でも、さすがに天才少年少女が一部地域に固まってないから当然かな。
3日後、通帳にすごい金額が振り込まれた。さっそく新しいギターを買った。古いギターはいままでありがとうってお礼を言ってさよならした。一週間後、新メンバーのラクダくんとゾウさんといっしょにふたつ目の山にとりかかる。狙うのはプール付きの大豪邸だ。
おしゃれな鉄の扉を前にしてウサミちゃんに訊く。
「とつぜん帰ってきたらやばくない?」
「海外旅行中だ。あと1週間は留守だよ」
ウサミちゃんは堂々としてる。どこから情報を仕入れてるんだろう?うさぎ耳だ。
キンローくんから通信が入る。
「姐さん。通行止めにしておきやしたぜ」
「ご苦労。戻ってきな」
「あい」
キンローくんは大豪邸に続く左右の道に通行止めの看板とバリケードを立てて来てくれた。足が速いので仕事も速い。
「門の鍵と玄関の鍵開けたっち」
「よし行くぜ」
あたしたちは大豪邸に正面から侵入した。ひとんちに勝手に入るのはドキドキするなぁ。
どかどか歩いているとランプを手にしたメイドさんと出くわす。あっ・・・てなる。
悲鳴をあげられる前に動く。
「ハッピィハロウィン♩お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ♩」
あたしたちは陽気に歌いコミカルな動きをする。
「なんだハロウィンですか〜お菓子ご用意しますね」
ホッとしているメイドさんにウサミちゃんは手早く小型の睡眠スプレーを吹きかけた。キリンくんの発明品だ。
倒れ込むメイドさんをみんなで抱え込む。ロープでしばって床に転がした。
「ふーっ。あっぶねぇ」
ウサミちゃんは額の汗をぬぐうしぐさをする。どろぼうはスリル満点だ。
広いリビングに集まる。
「金目のものは片っぱしからいただきな。かかれッ!」
ウサミちゃんの号令であたしたちはいっせいに動き出す。あたしは宝石や高級腕時計や毛皮をリュックに詰め込む。
キンローくんは宝箱を見つけて運び出す。クマどんとゾウさんはいっしょに名画を運んでいた。




