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金狼

オイラはキンロー。金狼だからキンローだ。本名じゃないぜ。

女にモテまくるオイラは美少女2人と両肩を組んで町を歩いていたところを不良に囲まれてふくろにされかけた。

美少女たちは体を張って逃したが多勢に無勢で勝ち目はゼロだ。

そんな時、ウサギマスクのヤンキー娘に助けられた。

飛び蹴りをぶちかまして颯爽と登場するとウサギのように跳ね回って不良どもの攻撃をかわしアッパーや回し蹴りであっという間にのしちまった。

めちゃくちゃ強かった。まるでまんがのヒーローだ。

ウサギマスクはウサミと名乗り怪盗キッズに誘われたオイラは一も二もなくうなずいた。

コンビニ強盗を成功させたオイラたちは1週間ぶりにアジトの公園に集まっていた。

オイラはライダージャケットを着てる。背中はとうぜん金狼だ。クマドンは特攻服を着てる。背中には暴飲暴食と書いてある。コッコはパーカー、ぷーやんはジャージだ。

みんなちゃんとマスクを着用している。これは互いに身分を隠すためだ。

サツに捕まっても仲間の身分は知らねえからしゃべりようがない。みんなの顔と名前を知っているのは姉御だけだ。姉御は拷問にも屈するようなおひとじゃねぇから取り調べにもオチねえだろう。

みんなでヤンキー座りして楽しくだべりながらウサミの姉御あねごを待つ。

「チィ〜す」

姉御は左手をポケットに突っ込み右手を軽く上げながら登場した。待ってました!真打登場だ。

「おつかれさまです」

オレはしゃきんと立ち上がり中腰で頭を下げる。

「ん、ごくろうさん」

姉御はポンと肩を叩いてくれる。光栄だ!姉御に触れてもらった!きっと金髪美少女であろう姉御に触れてもらえるなんて今日オイラは死ぬのか。感動で少し泣く。

「初仕事うまく行ったね♡」

「つぎはどーすんや?」

「もっといっぱいお金ほしいなぁ」

がめついやつらだぜ。けど、オイラも気持ちは同じだ。金はいくらあっても足りねーぜ。盗んだ金は女どもにおごりまくってあっという間にすっからかんだ。

腕組みをした姉御はニヤリと笑う。

「上野美術館を狙うよ。宝石展をやってるからね。根こそぎ頂くぜ」

「宝石ッ!?」

オイラたちは声をそろえて驚く。さすが姉御だ。スケールがでけえ。

しかし、大丈夫か?警備が厳しそうだ。

「作戦に組み込むからあんたたちの特技を教えな。ついでに金が欲しい理由もね」

オイラたちは順番に答える。

「オイラは鬼ごっこが得意ですぜ。女の子と遊ぶ金が欲しいんでさ」

「ぼかぁ、すもうが得意だよぉ。おいしいものたくさん食べたいなぁ」

「わいは料理が得意やで。最高級包丁が欲しいねん」

「あたしは歌が得意だよ。高価なギターが欲しいの」

姉御はふむふむとうなずく。

「把握したぜ。いまのメンツじゃちょいと厳しいヤマだね」

姉御は公園を見渡す。

「ここでの会議も目立ちすぎる」

少し遠くから小さなガキどもがオイラたちをじーっと見つめてる。

「あやちぃ」

「かわいい」

「かっこいい」

そのうち近寄って来そうだ。いっしょに遊んでやりてぇが、マスクをかぶったままの運動はマジできついので無理な相談だ。

「あたいが新メンバーとアジトを用意するよ。それまで待機しな」

「OKボスッ!」

オイラたちは敬礼する。

3日後、再び公園に招集がかかった。公園に行くといつものメンバーに加えて馬のマスクをかぶった少年がいる。ジーパンをはいて白シャツに黒いジャケットを羽織り馬のペンダントを首にかけている。

姉御が紹介してくれた。

「新メンバーのウマオだよ」

「オレ様は運転が得意だぜ。よろしく

ウマオは人差し指と薬指を立てて額の前で振ってウィンクする。オシャレなキザ野郎だ。

「よろしくな」

「よろしくね」

「よろしゅうたのんまっせ」

「よろしく~」

あいさつを終えると姉御は歩き出す。

「アジトへ行くぜ」

姉御に続く。公園の入り口に黒塗りの高級車が止まっていた。ヴェルファイヤだ。

庶民には縁のない車だぜ。これ見よがしに目立つところに置きやがって。

「ウマオ。運転頼む」

「あいよ」

「えッ!?」

オイラたちはウマオを見やる。ウマオは当たり前のようにロックを解除して運転席に乗り込んだ。

姉御は助手席に乗る。

「ぼやぼやしてねぇでさっさとのんな」

「はいっ!」

オイラたちは車に乗り込む。新品の車の匂いがした。

「夢みたいだぜ」

「のりごごちやっば」

「めっちゃ好きやねん」

「快適だぁ」

車はしばらく走ってタワーマンションの前で止まった。

オイラたちは車から降りる。ここからは歩くのか?と思ったら姉御は恐るべき言葉を口にする。

「ここがアジトだよ」

「ええッ!?」

オイラたちは飛び上がって驚く。

「駐車場に車止めてくるぜ」

「頼む」

ウマオは地下道に車を走らせる。地下に駐車場があるようだ。

オイラたちは姉御といっしょにタワーマンションに侵入した。ピカピカのエントランスだ。円柱の柱にソファーまである。ボロい団地に住んでいるオイラからしたら、ここは天国だ。

「あたしのような貧乏人には一生縁のない建物だと思ってたわ」

「わいも」

「清潔感えぐ」

「セレブだね~」

オイラたちは別世界に迷い込んだ異世界人のように呆然と立ち尽くす。

「アジトは何号室なの?」

コッコの質問に姉御は当たり前のように言った。

「ぜんぶ」

「ぜ、ぜんぶッ!?」

オイラたちは劇画の顔になって驚いた。

「パーティルーム、リラックスルーム、演劇ルーム、映画館、図書館、研究室、お宝ギャラリー、パソコンルーム、ゲーム部屋、宿泊室、ジム、温泉、プール。好きに使いな」

子供の遊び場にしては豪華すぎる。感動で体の震えが止まらない。言葉を失っているオイラたちに姉御は声をかける。

「新メンバーはあと3人いる。会いに行くぜ」

姉御とともにエレベーターに乗り込む。向かった先はパソコンルームだ。

ずらりとパソコンの並んだ部屋にカラスのマスクをかぶった少年がいた。

「わしはクロウじゃ。ハッキングが大得意じゃ」

クロウは黒いジーパンに黒いシャツを着ている。本物のカラスみたいだぜ。

オイラたちは自己紹介とあいさつをかわす。

次に演劇ルームに向かう。舞台にネズミのマスクをかぶった少年が手錠と足錠で拘束された状態で転がされている。足錠は鉄球つきだ。

「おーい!助けて欲しいっち!」

ネズ公は助けを呼んでいる。

「大変よ!」

「事件か?」

「なんやなんや!」

「やっば〜!」

慌てふためくオイラたちを尻目にいつのまにか姉御は舞台に登ってる。

「チューベエ。自慢の脱出術見せてやんな」

「まかせるっち!」

ネズ公は耳かきみたいな金属棒を袖口から取り出すと器用に手錠の鍵穴に差し込んでいじった。カチッと音がしてすぐに手錠は外れる。足錠も簡単に外してみせた。

「らくしょーっち」

自由の身となったネズ公は両手をひらひら振って見せる。オイラたちに実力をみせるショーだったようだ。オイラたちは拍手する。

「やるじゃん!」

「すごーい!」

「かっこいい!」

「ええやん!」

姉御はネズ公の肩に手を乗せる。

「チューベエは金庫破りの名人だ。どんな扉も開けるぜ」

ネズ公はえっへんと腰に手を当てて胸を張った。心強い味方だぜ。

「次は研究室に行くぜ」

研究室には白衣を来たキリンのマスクをかぶった少年がいた。

「ぼくはキリンです。発明が得意です」

研究室には試験管やフラスコ、顕微鏡など理科室で見かける実験道具が置いてある。

「頼んだものはできてるかい?」

「もちろんさ」

姉御の問いにキリンは力強い答えた。机の下から箱を取り出して次々と発明品を並べる。

「パーフェクトマスク。ステルスコイン。ジャンプシューズ。ビリビリグローブ。パワードスーツだよ」

「おおっ!!」

「わーすご~い!!」

キリンはカメレオンの刻まれたコインを手にする。

「ステルスコイン。電波を遮断するジャマー(通信機能抑止装置)で防犯カメラの映像を無効化するよ。スマホの通信も遮断する。ポッケにいれておくといい」

次にウサギのマスクの耳を握ってかかげる。

「パーフェクトマスク。肌にやさしい素材を使ってるよ。風通しもいい。暗視機能と通信機能付き。超伸縮自在だよ。通信機能は耳をいじれば使えるよ」

次は手の甲にカミナリ模様の入った手袋だ。

「ビリビリグローブはスタンガン効果を発揮する。スイッチは手首ね」

それから少し厚みのある上半身用の防具を手にする。

「パワードスーツだ。着ると30倍の力が出る。力士のぶちかましにも耐えられる」

最後にオシャレなスニーカーを両手で持つ。

「ジャンプシューズは最高10メートルの高さまで跳べる。着地時の衝撃も吸収できる」

こいつは天才だな。麒麟児ってやつだ。オイラたちは1人1枚ステルスコインをもらった。

新しいマスクをもらって後ろ向きでつけ替える。古いマスクはゴミ箱行きだ。

いままでサンキューな。

アイテムはそれぞれの特性に合わせて作られていた。オイラはビリビリグローブをもらう。

クマどんはパワードスーツだ。姉御はジャンピングシューズ。

試すためにジムに向かった。クマどんは重そうなバーベルを軽々と持ち上げていた。

オイラはぷーやんにちょっと触れてもらった。すぐに手を引っ込める。

「どれどれ?うわっ、めっちゃビリビリや!人に向けたらあかんで!」

「いや、人に向ける用だろ」

オイラは手首のスイッチを切る。疾風迅雷の金狼にふさわしいアイテムだぜ。

新メンバーたちの紹介が終わり、オイラたちはみんなでリラックスルームに向かった。

高級ソファーに壁にかかった巨大なテレビ、高そうなテーブルに置かれた花瓶にはバラが生けてある。高い階層なので窓から見える景色も最高だ!

「ふっふっふっ、人がゴミのようや」

ぷーやんは悪役になりきって楽しんでいる。

「ふかふかだぁ」

コッコはソファーで飛び跳ねてる。オイラも座ってみた。体が埋もれそうなほど柔らかい。クッションも手触りが上質だ。超富裕層の暮らしを体感してみんなテンションがマックスだ。

追いかけっこやかくれんぼしたいぜ。

「ほんとすごすぎだよ!ウサミちゃんってもしかして大富豪なの?」

棚に置いてあったクマのぬいぐるみを抱き抱えたコッコは姉御に問いかける。

ソファーに深く身を沈めた姉御は肩をすくめる。

「まあね。生まれてこのかた金に不自由したことなんて一度もないさ」

「じゃあ、なんで怪盗なんてはじめたの?」

「貧乏人がいない世界を作るためだよ。あたいが自由にできる金だけじゃ足りないからね」

「義賊になるってこと?」

「そーさ。もちろんあんたたちにはわけ前を与える。みんな協力してくれるかい?」

答えは決まってる。オイラは牙をむき出して笑った。

「地獄の底まで付き合いやすぜ」

「もちろんよ!」

「やったるでぇ!」

「やるぞぉ」

「とうぜんじゃ」

「力を貸すぜ。ベイビー」

「やるっち!」

「契約は守るよ」

姉御は立ち上がって両手を胸に前で握った。

「メンツはそろった!みんなでヤマを越えるよ!」

「おうッ!」

オイラたちも立ち上がって拳を突き上げた。

快進撃のはじまりだった。
























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