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ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


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9/17

9話

 月曜の朝、ケンジはオーロラレッドと並んで、戦隊本部の扉をくぐった。

 プラチナ長官の執務室は、白と金を基調とした豪奢な空間。壁にはスポンサー企業のロゴが並び、机の上には“正義の理念”と書かれた分厚い冊子が置かれていた。


「で、何の用? 任務報告ならチャットで済ませて」


 プラチナ長官はコーヒーを啜りながら、書類に目を落としたまま言った。

 ケンジは一歩前に出た。


「長官、僕たち、話したいことがあります。正義についてです」


 長官の手が止まった。

 オーロラレッドが続けた。


「最近の任務、スポンサーの意向ばかりで、住民の声を聞く機会がありません。僕たちは、誰のために戦ってるんでしょうか」


「スポンサーのためよ。彼らが資金を出してる。だから、彼らの望む“正義”を演じるのが仕事」


「それは“演技”であって、“正義”じゃないと思います」


 ケンジの声は震えていたが、目は真っ直ぐだった。


「僕たち、地域の声を聞きたい。子どもたちと話したい。コンプレックスのように、対話を重視する活動もしたいんです」


 長官は鼻で笑った。


「コンプレックス? あんな“ゆるい悪”と比べてどうするの。私たちは“正義の象徴”なのよ。黙ってポーズを決めて、セリフを叫べばいいの」


「それじゃ、僕たちはただの広告塔です。ヒーローじゃない」


 オーロラレッドが拳を握った。


「長官、僕たちの声を聞いてください。現場の声を」


 長官はしばらく沈黙した。

 そして、冷たく言い放った。


「なら、辞めれば? 正義に疑問を持つ者は、正義じゃない」


 ケンジは、静かにうなずいた。


「わかりました。僕は、正義を辞めます。ヒーローは辞めません。誰かの声を聞ける存在として、これからも動きます」


 オーロラレッドも、ゆっくりとヘルメットを机に置いた。


「僕も、考えます。正義の形を」


 二人は背を向け、執務室を後にした。

 廊下の窓から差し込む光が、彼らの背中を静かに照らしていた。


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