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ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


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7/17

7話

 土曜の午後、自由が丘のコミュニティセンターには、子どもたちの笑い声が響いていた。

 コンプレックス主催のイベント「ヒーローと話そう」。

 “戦わないヒーロー”として、ケンジはゲストに招かれていた。


 スーツは着ていない。

 緑のパーカーにジーンズ。胸元には小さな“G”のバッジだけ。

 それでも、子どもたちは「オーロラグリーンだ!」と駆け寄ってきた。


「ねえ、どうして悪と戦うの?」

「ヒーローって、疲れないの?」

「コンプレックスって、悪なのに優しいよね?」


 ケンジは、質問の嵐に戸惑いながらも、ひとつひとつ丁寧に答えた。


「戦う理由は、昔は“命令されたから”だった。でも今は、“誰かの声を守りたい”って思ってる」

「疲れるよ。でも、話すことで少し楽になるんだ」

「コンプレックスは、悪って言われてるけど、僕よりずっと人の話を聞いてる。それって、すごいことだと思う」


 子どもたちは真剣に聞いていた。

 その中に、一人だけ黙って座っている少年がいた。

 ケンジはそっと隣に座った。


「話したくない日もあるよね。でも、聞くよ。何でも」


 少年は小さくうなずいた。


「……学校で、ヒーローごっこするとき、僕は“悪役”ばっかりやらされる。強いって言われるけど、なんか、悲しい」


 ケンジは、しばらく黙っていた。

 そして、静かに言った。


「僕も、昔は“正義”って言われてた。でも、命令ばかりで、自分の気持ちは誰も聞いてくれなかった。だから、今は“役割”より“気持ち”を大事にしたいと思ってる」


 少年は、少しだけ笑った。


「じゃあ、僕も“話せる悪役”になる」


「それ、すごくかっこいいと思うよ」


 イベントの終盤、ミナミがケンジに声をかけた。


「今日のあなた、ヒーローだったと思う。肩書きじゃなく、誰かの声を受け止めたから」


 ケンジは、静かにうなずいた。

 そのとき、会場の外に赤いスーツの影が見えた。

 オーロラレッドだった。


 彼は遠くからケンジを見つめ、何か言いたげに立ち尽くしていた。

 ケンジは、目をそらさずに見返した。


(次は、あいつと話す番かもしれない)


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