5話
日曜の朝、ケンジは再びスーツに身を包んでいた。
オーロラグリーンとして、自由が丘駅前のイベント広場に立つ。今日の任務は「スポンサー合同PR戦」。
スパルのレゴシー、ユニケロ、オロナミンG、そして新規スポンサー“ドラッグ・モリモリ”の販促を兼ねた戦闘演出だ。
「よし、スパルのレゴシーで出動だ!」
「ユニケロで寒さに負けないぞ!」
「オロナミンGで元気チャージだ!」
オーロラレッドが叫び、オーロラピンクは「モリモリで美肌ゲット〜」とポーズを決める。
オーロライエローは「お菓子コーナーもチェックだ!」と叫び、オーロラブラックは無言で立っていた。
ケンジは、ポーズを取る手が震えていた。
コンプレックスの“地域の声を聞く会”を見学したばかりの彼には、この光景が滑稽に見えた。
(俺たち、何やってるんだ…)
戦闘が始まった。敵役はコンプレックスの戦闘員ではなく、スポンサーが用意した“販促怪人”だった。
「風邪菌マン」「乾燥肌ビースト」「冷え性デーモン」――すべて商品に関連した“悪”だ。
ケンジは、販促怪人に向かって叫ぶ。
「正義の力で、冷え性を撃退だ!」
だが、声が裏返った。
観客の子どもたちは笑い、プラチナ長官は無線で「もっと元気に!スポンサーが見てるわよ!」と指示してきた。
その瞬間、ケンジの中で何かが切れた。
「……スポンサーが見てる? それが正義なんですか?」
マイクを通して、ケンジの声が広場に響いた。
戦隊メンバーが凍りつく。観客もざわついた。
「俺たちは、誰のために戦ってるんですか? 子どもたち? 街の人? それとも、スポンサーの売上のため?」
オーロラレッドが慌ててマイクを切ろうとするが、ケンジは続けた。
「昨日、コンプレックスの活動を見学しました。彼らは“悪”って呼ばれてるけど、地域の声を聞いてた。俺たちは、聞いてますか? 誰かの声を」
プラチナ長官の怒声が無線から響いた。
「ケンジ! 何を言ってるの! 正義は黙って任務を遂行するの!」
「……それが正義なら、俺はもう、正義じゃなくていい」
ケンジはマイクを外し、スーツのヘルメットを脱いだ。
観客の中にいた一人の少年が、小さく拍手をした。
その夜、ケンジは戦隊のグループチャットを退室した。
そして、コンプレックスのミナミにメッセージを送った。
「もう一度、話を聞かせてください。今度は、俺の声も混ぜて」




