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ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


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5/17

5話

 日曜の朝、ケンジは再びスーツに身を包んでいた。

 オーロラグリーンとして、自由が丘駅前のイベント広場に立つ。今日の任務は「スポンサー合同PR戦」。

 スパルのレゴシー、ユニケロ、オロナミンG、そして新規スポンサー“ドラッグ・モリモリ”の販促を兼ねた戦闘演出だ。


「よし、スパルのレゴシーで出動だ!」

「ユニケロで寒さに負けないぞ!」

「オロナミンGで元気チャージだ!」


 オーロラレッドが叫び、オーロラピンクは「モリモリで美肌ゲット〜」とポーズを決める。

 オーロライエローは「お菓子コーナーもチェックだ!」と叫び、オーロラブラックは無言で立っていた。


 ケンジは、ポーズを取る手が震えていた。

 コンプレックスの“地域の声を聞く会”を見学したばかりの彼には、この光景が滑稽に見えた。


(俺たち、何やってるんだ…)


 戦闘が始まった。敵役はコンプレックスの戦闘員ではなく、スポンサーが用意した“販促怪人”だった。

 「風邪菌マン」「乾燥肌ビースト」「冷え性デーモン」――すべて商品に関連した“悪”だ。


 ケンジは、販促怪人に向かって叫ぶ。


「正義の力で、冷え性を撃退だ!」


 だが、声が裏返った。

 観客の子どもたちは笑い、プラチナ長官は無線で「もっと元気に!スポンサーが見てるわよ!」と指示してきた。


 その瞬間、ケンジの中で何かが切れた。


「……スポンサーが見てる? それが正義なんですか?」


 マイクを通して、ケンジの声が広場に響いた。

 戦隊メンバーが凍りつく。観客もざわついた。


「俺たちは、誰のために戦ってるんですか? 子どもたち? 街の人? それとも、スポンサーの売上のため?」


 オーロラレッドが慌ててマイクを切ろうとするが、ケンジは続けた。


「昨日、コンプレックスの活動を見学しました。彼らは“悪”って呼ばれてるけど、地域の声を聞いてた。俺たちは、聞いてますか? 誰かの声を」


 プラチナ長官の怒声が無線から響いた。


「ケンジ! 何を言ってるの! 正義は黙って任務を遂行するの!」


「……それが正義なら、俺はもう、正義じゃなくていい」


 ケンジはマイクを外し、スーツのヘルメットを脱いだ。

 観客の中にいた一人の少年が、小さく拍手をした。


 その夜、ケンジは戦隊のグループチャットを退室した。

 そして、コンプレックスのミナミにメッセージを送った。


「もう一度、話を聞かせてください。今度は、俺の声も混ぜて」


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