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ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


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4/17

4話

 土曜の午後、ケンジは私服姿で自由が丘の一角に立っていた。

 今日はコンプレックスの活動見学の日。ミナミから「気軽にどうぞ」と言われていたが、戦隊スーツを脱いで敵組織に足を踏み入れることに、少しだけ罪悪感があった。


(俺は、裏切ってるんだろうか…いや、ただ話すだけだ)


 コンプレックスの拠点は、カフェを併設した多目的スペースだった。

 中に入ると、ラテの香りと柔らかなジャズが流れていた。

 戦闘員たちはスーツではなく、パーカーやジーンズ姿で談笑していた。


「ケンジさん、いらっしゃい。今日は“地域の声を聞く会”なんです」


 ミナミが笑顔で迎えてくれた。

 壁には「不満を語ろう」「モヤモヤを共有しよう」と書かれたポスターが貼られている。

 参加者は近隣の住民や商店街の店主たち。戦闘員は聞き役に徹していた。


「最近、駅前の喫煙所が撤去されて困ってるんですよ」

「うちの店、若者が入りづらいって言われてて…」

「行政に言っても動かないから、こういう場がありがたいです」


 ケンジは驚いた。

 “悪の秘密結社”とされる組織が、地域の声を真剣に聞いていた。

 しかも、戦闘員たちはメモを取り、うなずき、時に共感の言葉を返していた。


(俺たち、こんな活動…したことない)


 オーロラ戦隊の“地域交流”は、スポンサーのチラシ配りやイベント出演が中心。

 住民の声を聞くことはなく、むしろ“正義のイメージ”を押し付ける場だった。


「ケンジさん、どうですか? 違和感あります?」


 ミナミが静かに尋ねた。


「……あります。正直、俺たちの方が“悪”っぽい気がしてきました」


「それ、よく言われます。でもね、私たちも完璧じゃない。時には批判されるし、誤解もある。でも、話すことで少しずつ変わっていけると思ってる」


 その言葉に、ケンジは深く頷いた。

 だが、心の奥には別の感情も芽生えていた。


(この空気、居心地が良すぎる。俺は…甘えてるだけじゃないか?)


 その夜、ケンジはオーロラ戦隊のグループチャットを開いた。

 オーロラレッドは「明日の戦闘、気合い入れていこう!」と叫び、プラチナ長官は「スポンサーの新商品、必ずセリフに入れてね」と指示していた。


 ケンジはスマホを閉じ、静かにため息をついた。


(俺は、どこに向かってるんだろう)

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