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ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


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最終話

 火曜の午後、自由が丘駅前に再び緊張が走っていた。

 ケンジたち“聞くヒーロー連盟”の支援ブースが、オーロラ戦隊の“秩序強化部隊”によって封鎖されたのだ。


「この活動は、正規の許可を得ていない。即時撤去を命じる」


 無機質なAI音声が響く。

 ケンジは一歩も引かず、目の前の子どもに膝をついて言った。


「ごめんね。今日は、話を聞けないかもしれない」


 だが、子どもは首を振った。


「話すよ。だって、ケンジさんは、ちゃんと聞いてくれる人だから」


 その言葉に、周囲の市民が次々と立ち上がった。


「この人たちは、私たちの声を受け止めてくれた」

「ヒーローって、こういう人のことじゃないのか」

「正義って、命令じゃなくて、共感から始まるんじゃないのか」


 秩序強化部隊が動きを止めた。

 AIは“群衆の感情値上昇”を検知し、行動を一時停止した。


 その隙に、オーロライエローとオーロラピンクが現れた。

 彼らはスーツを脱ぎ、ケンジの隣に立った。


「俺たち、ずっと迷ってた。でも、今ならわかる。誰かの声に応えることが、ヒーローの始まりだ」


「正義って、ポーズじゃない。誰かの不安に寄り添えるかどうかだと思う」


 プラチナ長官が現場に駆けつけ、怒声を上げた。


「何をしている! 正義は秩序! 感情はノイズだ!」


 だが、誰も動かなかった。

 長官の声は、もはや誰の心にも届いていなかった。


 その夜、ニュース番組が報じた。


「自由が丘で“聞くヒーロー”が市民の支持を集め、AI戦隊の活動が一時停止。プラチナ長官は責任を問われ、辞任を表明しました」


 翌週、ケンジは小学校の教室にいた。

 “地域とヒーロー”をテーマにした特別授業の講師として招かれたのだ。


「ヒーローって、戦う人ですか?」


 ある児童がそう尋ねた。

 ケンジは、黒板にチョークで一言だけ書いた。


「誰かの声を聞ける人」


 教室が静まり返った。

 だが、その静けさは、深い納得の証だった。


---


 ケンジは今も、自由が丘の片隅で活動を続けている。

 スーツもマイクもない。だが、彼の周りには、いつも誰かの声がある。

 それが、彼の“ヒーロー”としての証だった。


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