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ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


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12/17

12話

 木曜の朝、自由が丘の一室に、かつて“敵”と“味方”だった者たちが集まっていた。

 コンプレックスの広報ミナミ、元オーロラレッドの翔太、元ダークネス団のタケシ、そして元ヒーロー・サンシャインピンク。

 その中央に、ケンジがいた。


「今日、ここに集まってもらったのは、“聞くヒーロー連盟”を正式に立ち上げるためです」


 ケンジの声は静かだったが、確かな熱を帯びていた。


「戦わないヒーロー、肩書きに縛られないヒーロー、誰かの声を聞くことを使命とするヒーロー。そういう存在が、今の社会には必要だと思うんです」


 ミナミがうなずいた。


「私たちコンプレックスも、ずっと“悪”というラベルに苦しんできました。でも、声を拾うことをやめなかった。だから、共にやりましょう」


 翔太――かつてのオーロラレッド――が口を開いた。


「正義の名のもとに、俺たちは多くの声を無視してきた。でも、ケンジの言葉に背中を押された。俺も、もう一度ヒーローをやり直したい」


 タケシは笑った。


「俺はもう現役じゃないけど、運転席から見える街の声なら、いくらでも拾ってやるよ」


 サンシャインピンクは、静かに言った。


「ヒーローは、戦うだけじゃない。育てること、支えること、聞くこと。それを信じて、私は保育士になった。今なら、あなたたちと並んで歩ける気がする」


 その場にいた全員が、深くうなずいた。

 こうして、“聞くヒーロー連盟”は正式に発足した。


 その日の午後、ケンジたちは記者会見を開いた。

 場所は自由が丘の駅前広場。

 スーツもマスクもない。あるのは、それぞれの言葉だけだった。


「私たちは、戦わないヒーローです。誰かの声を聞き、共に考え、共に動くことを使命とします」


 ケンジの宣言は、SNSで瞬く間に拡散された。

 「#聞くヒーロー」「#正義の再定義」「#ケンジの声」がトレンド入りする。


 だがその夜、オーロラ戦隊本部では、プラチナ長官が記者会見の映像を無言で見つめていた。

 やがて、冷たい声でつぶやく。


「“正義”を私物化する気か……ならば、こちらも“新しい正義”を見せてやる」


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