表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/17

10話

 火曜の午後、ケンジは自由が丘の児童館にいた。

 コンプレックスとの共同企画「声を聞く日」の第一回。

 ヒーローでも悪役でもない、ただの“大人”として、子どもたちの話を聞く役割を担っていた。


「学校で、先生に言い返したら怒られた」

「友達に“ヒーローになれないよ”って言われた」

「お父さんが、最近ずっと怒ってる」


 ケンジは、ひとつひとつの声に耳を傾けた。

 答えを出すのではなく、ただ聞く。

 それだけで、子どもたちの表情が少しずつ柔らかくなっていくのがわかった。


 コンプレックスの戦闘員たちも、スーツを脱ぎ、ボランティアスタッフとして参加していた。

 ミナミは受付で保護者対応をしながら、時折ケンジに目を向けて微笑んだ。


「ケンジさん、あなたの“聞く力”は、戦闘よりずっと強いかもしれない」


「……俺、ヒーロー辞めてからの方が、誰かの役に立ててる気がします」


 その言葉に、ミナミは静かにうなずいた。


「ヒーローって、肩書きじゃないんですよ。誰かの声に向き合える人が、ヒーローなんです」


 イベントの終盤、ケンジは一人の少女に声をかけられた。


「ねえ、ケンジさん。サンシャインピンクって、知ってる?」


「……うん。知ってるよ。昔、戦ってた人。でも、今は保育士さんだよね」


「私、保育園のとき、サンシャインピンクに会ったことある。すごく優しかった。悪役の子にも、ちゃんと話してくれた」


 ケンジは、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。

 “戦いを超えた人間関係”――タケシとサンシャインピンクの話が、今ここに繋がっている。


 その夜、ケンジはタケシにメッセージを送った。


「今日、サンシャインピンクの話を聞きました。いつか、彼女にも会ってみたいです」


 すぐに返信が届いた。


「彼女、今は三軒茶屋の保育園で働いてるよ。話すだけなら、いつでも歓迎だってさ」


 ケンジはスマホを見つめながら、静かに笑った。


(ヒーローのいない場所で、俺は誰かの声を聞いている。それだけで、十分かもしれない)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ