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ブラックな戦隊ヒーロー ケンジの憂鬱  作者: 双鶴


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1話

 日曜の朝、自由が丘の空にオーロラが走った。

 ――という演出をするために、ケンジは朝5時から照明機材の設営を手伝っていた。

 ヒーローの仕事は、戦うことだけじゃない。むしろ、戦うまでが長い。照明、音響、衣装チェック、スポンサーのロゴ確認。すべて“正義の演出”のためだ。


「…ったく…ダークサイダーって、こっちの方が悪の秘密結社っぽいネーミングだし…」


 正義のヒーロー「オーロラ戦隊ダークサイダー」オーロラグリーンとしてのぼやきが、スピーカー越しに響く。

 今日の任務は“スポンサー営業戦”。戦闘というより、広報活動だ。

 ケンジは、オーロラグリーンのスーツを着ながら、心の中でため息をついた。


(俺たち、何と戦ってるんだっけ…)


「よし、スパルのレゴシーで出動だ!」

「オロナミンGで元気チャージだ!」

「ユニケロを着て寒さに負けないぞ!」


 オーロラレッドの熱血セリフに合わせて、ケンジたちはポーズを決める。

 だが、心の中は冷えきっていた。スポンサーの意向で、セリフは毎回変わる。しかも、語尾に“元気”や“笑顔”をつけるよう指示されている。


(なんで俺たち、こんなに必死に企業名叫んでるんだ…)


 スポンサーの店舗前では戦闘禁止。

 敵が現れても、商品棚を壊さないように戦わなければならない。

 しかも、今日の移動車両はプラチナ長官の私用車を借りたため、駐車許可証がない。


 案の定、戦闘中に緑の監視員が現れた。


「ここ、駐車禁止ですよ」

「いえ、ヒーロー任務中でして…」

「関係ありません。はい、キップ切りますね」


 ケンジは戦闘よりも早く心が折れた。

 戦闘後、プラチナ長官に報告すると、返ってきたのは冷たい一言。


「経費? そんなの自腹に決まってるでしょ。正義は無償奉仕よ」


 長官は、パワハラ気味の口調で言い放ち、今日も現場には一度も姿を見せなかった。

 オフィスでコーヒーを飲みながら「現場は若い子に任せるのが正義」と言っていたらしい。


(無償奉仕で、年中無休で、労災もなくて、駐禁も自腹…)


 ケンジはふと、自由が丘のカフェでくつろぐコンプレックスの戦闘員たちを思い出した。

 彼らは今日も、のんびりとラテを飲みながら「戦闘は午後からでいいっすよね〜」と笑っていた。


 コンプレックスは、悪の秘密結社とはいえ、福利厚生がしっかりしている。

 週休二日、有給あり、戦闘はシフト制。しかも、戦闘員同士の人間関係も良好らしい。


(いっそ引退して、コンプレックスに移籍しようかな…)


 そんな思いが、ケンジの胸をよぎった。

 だがその瞬間、オーロラレッドが叫んだ。


「ケンジ! 次のスポンサーは駅前の“ドラッグ・モリモリ”だ! 急げ!」


 オーロラブラックは黙ってスマホをいじり、オーロライエローは「お菓子あるかな」とつぶやき、オーロラピンクは「え〜、もう疲れた〜」と座り込んでいた。


 ケンジはため息をつきながら、再び変身ポーズを取った。


「オーロラグリーン、出動……って、もうやだ」


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