プロローグ
※この作品には、教師と生徒の関係をテーマにした描写が含まれます。
※未成年と成人の恋愛が直接的に描かれます。
※倫理面を重視し、恋が「想いとして留まる」形で描かれます。
校庭では、別れを惜しむ同級生の声が飛び交っている。
せっかくの晴れ舞台なのに風は荒れ狂っている。
私はひとり、人気のなくなった校舎にいた。
かつて教師の怒号が響いた廊下、教科書を抱えて駆け上がった階段、友達と笑い合った教室。
あんなに騒がしかった場所が、今は忘れ去られたように静まり返っている。
壁に貼られた祝電。
そこに記された名前を指でなぞる。
---泉 洋喜
その名前を追った瞬間、堰を切ったように涙が溢れた。
「なんでかな…卒業式では泣かなかったのに…どうして、あなたの祝電で泣いちゃうんだろう…」
すすり泣きだけが、がらんとした校舎に響く。
もしも、あの日あの時、ほんの一言でも伝えられていたら…
「ありがとう」
その言葉だけでも、ちゃんと面と向かって言えたら、少しは違ったのだろうか。
今さら後悔しても、時は戻らない。
笑った顔も、何気ない会話も、時には冷たく響いた言葉さえも。
すべてが私の心に刻まれて、消えない。
思い出すたびに胸は締め付けられる。
それでも、私は忘れたくない。
後悔と一緒に、この想いを抱いて生きて行く。
これは、私と先生の、誰にも言えなかった恋の記憶。
そして、私の中だけに残る、切ない物語。
更新が不定期になるかもしれませんが、必ず連載終了できるよう、頑張ります!




