初依頼は 工房のお手伝い
昨日、冒険者ギルドで依頼を受けてきたので
アモラを預けてから依頼書に書いてある所へ向かう
「タルパ魔道工房」 ここか
門を開けて入っていく コンコンコン「すみませーん依頼を受けてきましたー」
しばらくして足音が聞こえてくる
ドアが開いて出てきたのは40代くらいのヒゲのおじさん
「いらっしゃい、冒険者ギルドから?」
「はい、依頼を受けて来ました」 依頼書を渡すと、依頼書をみて私を見てを繰り返し
「加工の経験は?」
「はい、学校でやっていました。あとは趣味でいろいろやっています。」
「趣味ねえ・・・・・。あんたいくつだい?」
「もうすぐ8才です、あと、名前はアルノーラです。」
「俺はタルパだ、ここの工房長をやってるよろしく。8才か・・・ふう。」
「よろしくお願いします。」 何をさせてくれるんだろうか?楽しみだ
タルパ「説明を受けているとは思うが、製品を作れないなら報酬は出ないが、大丈夫か?」
「はい、聞いています。」
タルパ「・・・・わかった、じゃあこっちに。」
後ろを付いていくと個室だった、材料だろうか物がたくさん入った箱が積んであった
タルパ「どれくらい出来るか見たいんでな、コレを球体にしてみてくれ。」
渡されたのはブリキ?の板 コレを球体にか
「できました。」
タルパ「・・・・・は?・・・・・いま何をした?」
「えっと?球体にですよね?違いました?」
タルパ「いや、あってはいるが・・・・。つ、次は四角にしてみてくれ。」
「はい、四角・・・できました。」
タルパ「ちょ・・・・・できてる。」
「何かへんですか?」 何か失敗したかな?
タルパ「変・・・・・ていうか・・・こっちへ来てくれ。」
また後ろに付いていく
タルパ「ここだ」 ついて入ると作業場だった、何人か作業をしている
目があった人と軽く会釈しておく、 (邪魔しちゃダメだからね)
タルパ「ここではランプの傘と土台を作っている、ここに座って。」
「はい」
タルパ「こっちのこれが見本だ、仕様書はこれで、材料がこっちだ。完成したらこの箱に入れてくれ、とりあえず一個作ってみてくれ。」
「はい」 見本の傘を持って観察する、ここに突起があって溝がここにある
仕様書を見て、なるほどこの手順で形を作るのか
材料のブリキ(たぶん)を手に取って仕様書通りに形作っていく
こことここはこう、こっちは穴がある、と
最後に仕様書と照らし合わせて・・・・・
「できました、どうですか?」
タルパ「見せてくれ・・・・・・・・・・・・・・よくできている。これはほんとに学校で学んだだけなのか?」
「学校ではほとんど、魔道文字と回路図をやってました加工はもともととくいだったので。」
次の傘を作りながら話す
タルパ「もともと得意・・・・?もしかして回路図も引けるのか?」
「はい、すごく練習しましたんである程度は引けるようになりました。」
タルパ「幼年学校で?回路図を??」
「いえ、私は加工が得意だったんで先生がさせてくれたんです。作りたいものもあったので。」
タルパ「どんな先生だ幼年学校で魔法文字やら教えるやつは・・・・・。」
「フィク先生っていうすごくいい先生でしたよ。・・・はい、ここにある分は終わりましたよ。」
タルパ「は・?おわ・・・・?フィク先生だって?ちょっと情報量が多すぎて・・・。」
「はい?次は何しましょうか?」
なにやら頭をガシガシとかきむしっている だいじょうぶそ?
タルパ「考えてもしゃーねーか。つぎはこっちだ土台部分を作ってくれ。」
「はい」 見本を持ち 仕様書と照らし合わせて見る こっちはさっきより複雑だな
部品を引っかける部分と、はめる溝、ここは魔石をはめるとこだな
「よし、できました。どうですか?」
タルパ「・・・・・・。良くできている。残りを頼む・・・。」
「はい、ちゃっと作りますねー。」
タルパ「ちゃっとねえ・・・・・。とんでもねえな・・・。」
ブリキの加工は初めてだけど鉄より全然やらかいから加工しやすいや
ふんふん♪と言いながら 加工していく
「終わりました。次は何をしましょう?」
タルパ「もう終わったのか?いまから昼休憩だ、こっちの部屋で休んでくれ外にメシを食いに行ってもいい。」
「はーい、ありがとうございます。」
通してくれた休憩室はこじんまりしていたが 10人くらいは座れる
数人はすでに座って食事していた
私も家で作ってきたサンドイッチを取り出して食べることにする
「ねえねえあなた冒険者ギルドから来たってホント?」
年配の女性が話かけてきてくれた
「あ、はい。最近登録しましてこれが初依頼なんです。」
「まあ、そーだったの。あんまり加工が上手だからほんとに冒険者なのか聞いてみたくなっちゃってね。」
「ははは、まだ冒険者と名乗れるような事はしてませんが、一応冒険者です。」
「そーなのー、こんなに加工が上手だったら冒険者みたいな危険な仕事じゃなくてどこかの工房に入ればいいのにーここなら大歓迎よ?」
「そうですね、冒険者に飽きたらそれもいいかもしれませんね。」
なんて会話しながら楽しくサンドイッチを食べた
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タルパ視点
タルパは混乱していた
人で不足で納期に間に合いそうになく仕方なく冒険者ギルドに依頼を出した
どうせ戦力にはならんだろうが、いないよりはマシだ
だが、当日来たのは少女だった 見たことのない毛色のだ
加工の経験を聞いたら、「学校と趣味で」と、返事が返ってきた
おいおい学校って、幼年学校だろう・・・・・・
しかも趣味でって、終わったと思った あまりにもできなかったら帰ってもらおうと思った
だが、試作にと持たせたブリキを一瞬で球体にした・・・・・・は?だ
信じられなくて、そのまま四角にしてくれと言えば秒でできる
趣味?うそだろ???
信じられなかったがとりあえず作らせてみることにした
見本のランプの傘と仕様書を渡して これを作ってくれといっただけで
しばらく見比べたら 一気につくりやがった
なんだ?こんなのみたことねえ・・・・・・
ほんとに学校で習ったのか聞いたら 加工は得意だったから魔法文字と回路図をやっていたという
どんな幼年学校だ!!!!叫びたかったが我慢した 俺は工房長だ
そのまま数十分で傘を作り終えた バケモンかよ
もうできるだけやらそうと思って土台も頼んだらこっちも
見本と仕様書を見比べただけで作りやがった なんだ?
俺は夢でも見てるのか?
昼の時間になったから休憩室に連れて行った
疲れているのかもしれない・・・・少し仮眠することにした
昼休憩を終えて 休憩室をの覗くと談笑していた 仲良くやっているみたいだ
回路図が出来るといっていたからやらせてみる事にした
ほんとかはわからんが回路図が引ける人材は貴重だ
もし引ければラッキー 出来なければ加工をしてもらうだけだ
回路図を書く部屋に連れていき 仕様書を見せる
できそうか?と聞くと 「きれいな回路なんでできると思います」だそうだ
この回路図の良さがわかるのか? ほんとかわからんが 俺が書いた回路図だと自慢したかったががまんした 俺は工房長だ うん
そして俺は見た 恐ろしい速さと正確さで引く 回路図を
なんだこの速さは
「できました」 と言って見せてくれた回路図は美しく
思わず「天才か?」と言ってしまった
「えへへへ、いっぱい練習したんで」 とはにかんで笑っていた
この工房にいる回路図制作者は2人だけ どちらも10年以上やっているベテランだ
その2人より速い
もう認めるしかない この子は天才だ
その後も作業を続けてもらい 予定よりだいぶ早く仕上がった
これで納期に間に合う・・・・・
彼女が帰る時に丁寧にお礼を言うと同時に 強く工房への勧誘をしておいた
「いつか旅にでたいので」 と、笑顔で断られてしまったが
彼女の名前は忘れない アルノーラ 彼女は工房の神に愛されている
そう思った
彼女が帰ったあとも 彼女が引いた回路図を眺め 回路図担当者と話しで盛り上がった
とんでもない速さと正確さ、そして何より
俺がひいた回路図がきれいだと!!!
俺は叫んだ 工房長だが!
そんな事を言われたのははじめてだった これ以上の褒め言葉はない!!
その日は彼女が引いた回路図を見ながら酒を飲んだ
ああ なんてうまい酒だ
ありがとござした!




