王都 第五衛兵隊長カーシャ 視点2
第二衛兵隊長を尋問しているが、一向に罪を認めない
こいつが指示を出した部下が犯人のアジトに向かっているのを見ていたし
部下たちを使って、俺たちがアジトへ向かうのを阻止しようとしていた
状況証拠は十分にある
だが、こいつが「部下が勝手にやった事だ」と言えば
それらは完全な証拠ではなくなってしまうだろう
こいつが上級貴族である事が、ここに来ても障害になっている
歯がゆく思っていると、『アルラド』の2人が戻ってきた
ルラさんに尋問の進捗を聞かれたので、素直に答える
彼女は自白薬を持っていて、しかも自作であると言っていた
Sランクとはそんなに凄いものなのかと驚いたが、ガロルドは「ルラが特別」と言っていた
確かに、自白薬は熟練の薬師でも材料が入手困難で、作る事は難しいと聞いた事がある
自分も実際に見た事がない
とにかく、彼女に考えがあるとの事だったので、少し任せてみる事にした
ダメ元だ、もしダメでも自白薬があるので問題はないだろう
そう思っていた
第二隊長のいる部屋に入って、尋問が始まったが
こいつは全て自分は関係ないと言い張っていた
「部下が勝手にやった事で、俺は真面目に仕事をしていた」そう言った
完全に開き直って、状況証拠だけでは自分は処罰されないと踏んでいるらしい
そこでルラさんが自白薬の事を話し始める
どうやらこいつを実験台として使いたい、ちょっと頭のおかしな薬師の設定でいくみたいだ・・・
見ているこっちも怖い・・・・演技には乗るけど・・・・
顔色が悪くなっていくあいつを見るに、効果はバツグンだ
トドメとばかりに笑顔であいつに近づいていくルラさん、手には紫の色の液体が入った瓶
どんどん顔色が悪くなるあいつはとうとう耐えきれなくなって
ベラベラ話し始めた
犯人達のアジトも犯行に使っていた秘密基地も知っていた
あいつらが捕まらないように捜査をしていた。そう話す第二隊長
こいつがやっていた事わかった
だが、理由をまだ聞いていない
上級貴族でもあるこいつがどうして獣人を目の敵にするのか、聞いてみた
帰ってきた答えは『人族至上主義』を強く信じているかのような答えだった
「守るべきは人族のみ、王都に獣人は必要ない。掃除をしてやった」
獣人が居なくなれば王都は美しくなる、本気でそう言っていた
俺にはわからない考え方だ
「獣人は、人と獣が混じった神の失敗作だ。奴隷として扱うのが妥当だ」
そういうあいつを心底気持ち悪いと思った
彼女が静かに言う
「あなたの神様は獣人を虐げる事を良い事だと言っているの?」
「ああ、もちろんだ。人族こそ、この世の全て、頂点だ」
そう返すあいつの顔は怖かった、まるで自分とは違う人間のようだ
彼女は返事を聞いて、静かに怒っていた
「じゃあ、私の神はそんな奴らを許さない、虐げて良いって言っているわ。誰かを虐げる奴らを許さない・・・どこまでも追い詰めて良いって・・・・」
そう語りかけながら、あいつに近づいていく
こいつがこいつの神を信じるなら
ルラさんはルラさんの神を信じる
何も間違ってはいない。こいつの言うことが通じるのなら、彼女のいう事だって通じていはずだ
黙って見守る
彼女はあいつの体の部位をなぞりながら「四肢を切り落としてから・・・」
「耳は切って獣人と同じ位置につけようか・・・」
そう言いながらゆっくりと追い詰めていく
ガタガタと震えるあいつは、動けもしない
こいつがやってきたことが、今、自分に返って来ようとしている
自業自得・・・・良い言葉だ
最後に「ああ、目玉。これも取り出さないとね・・・」そう言って目に手をゆっくりと近づける
彼女はうっすらと笑っていた
耐えられなくなったあいつは白目を向いて気絶した
しかも、漏らしてやがる・・・・・そうとう怖かったんだろう
まあ、自業自得だが
同情はしない
こいつが目覚めた時に反抗してきたら「ルラがお前とその家族をオークの巣に置き去りにする」
そう言っていたと言えばいいだって
なんて恐ろしいんだ
彼女の神は、かなり厳しいな・・・・
「はい・・・・わかりました。」
思わず敬語で返してしまった・・・・
彼女はあいつに水をぶっかけて起こし
再度、釘を刺してから、次の尋問に向かった
まだ若いのに・・・・尋問がこんなに上手いってどんな経歴だ?
疑問はあったが考えこんでいる暇はない
次は犯人のリーダー格の男だ、何も答える気がなく
少しも情報が引き出せない
彼女はこいつの様子を見て、話しを聞くだけ無駄だと判断した
「聞いても嘘の情報を言う確率の方が高い」確かにそうだ
自白薬を飲ませる事にして、どれぐらいの時間効力があるのかわからないので
聞きたい事を整理しておく
部屋に戻って、すぐに自白薬を飲ませた
少し抵抗はしていたが、動きがなくなって、虚ろな表情に変わった
試しに名前を聞くと素直に答えた
聞きたい事を順番に聞いて行く
ここでも出て来る『人族至上主義』の言葉
大陸中にアジトがあるらしく、子供たちはアジトにいる
地図にアジトの場所を記していく
こいつらの思想は想像よりもずっと支配的で、いずれは獣王国に攻め入り
すべての亜人と獣人を奴隷にする
そう言っていた・・・・なんて恐ろしい話だ・・・
元凶はおそらく、教皇国
これはすぐに上層部に伝えないといけない・・・
この国だけの問題ではない、大陸全てが関わることだ
ある程度話を聞きだした所で意識を失ってしまった
どうやら相当人体に負担がある薬のようだ
さっそく聞き出したアジトへ向かう手配をする
でも、彼女たちが手伝いを申し出てくれた
「先に行って制圧しておくから、犯人を運ぶ手配だけおねがいします」
そう、何でもない事のように言う
本気か聞き直したが、「問題ない」と言う
一瞬悩んだが、子供達を助けるのに時間が惜しい
出発だけ、衛兵たちに合わせてもらって、制圧は任せる事にした
Sランクとは自分の想像の上を行く・・・・そう思う事にした
そして、準備ができた衛兵たちと出発して
日が暮れる前には戻ってきた
部下の報告では「到着した時には終わっていました。犯人達は全て縛られて、子供たちは寝ていました。食事をもらって、安心して眠ったみたいでした。Sランクって凄いですね・・・」
そう報告を受けた
労いの言葉をかけて、捕まえたやつらの尋問に移る
『アルラド』の2人にここまで助けてもらったんだ
これから先は俺たちが頑張る所だ・・・・そう決意を新たにした
途中報告として、司令官と宰相閣下へ報告をした
想像よりも遥かに大きな組織として動いている
しかも国をまたいで活動しており、アジトも点在している
自白薬はあと3本しかなく、誰に使うのかよく考える必要がある
以上を話した上で、国王陛下を交えて会議を設けることになった
他にも国の上層部が参加する会議で、自分が発言をする
緊張で吐きそうだったが、そんな事を言っている暇はない
言う事リストを書いた紙を持って、報告をしていく
汗が止まらないが、何とか最後まで言えた・・・・
あまりの内容にざわざわとし始めたが、宰相閣下の一声で静かになる
宰相「此度の件は我が国のみならず、大陸中が関係してる。他国と連携を取り、捜査を進めていく。よってここにいるすべての者に告げる。大陸法によって、誘拐、不法な人身販売は厳禁である。宗教的な理由であろうと、他の種族を迫害する事は厳罰に処される!これを忘れる事なきように・・・私はこの国の王侯貴族を信じてはいたが、今回の第二衛兵隊長は侯爵家の4男だ、他家のもの達もご自身の家族、親族の教育を怠る事の無きように・・・・私からは以上です」
国王「・・・・宰相からの話で分かってくれたとは思うが、今一度考えてくれ。私は宗教は自由だと思っているが、『人族至上主義』などと言うのは神のいう事ではないと思っている。この中に『人族至上主義』を掲げる者がいるのなら、この国から出て行ってくれ。止めはしない。自分の信じるものを追えばいい。教皇国に行けば人族のみの生活ができるであろう・・・・ここには法がある、ここに暮らす人々を守る法だ。その中には当然、獣人も亜人も含まれる。私が治める国はそうでありたい・・・・・よって、ドーガミンク侯爵家は降格処分、罰金は金貨5万枚。四男はすでに除籍させたとの事だが、獣人の子供28人を攫った犯罪者に加担していた罪は重い。今後の子供たちへの教育の見直しをするように。・・・・最後に第五衛兵隊長、今回の活躍は素晴らしいものだ、後で褒美を取らせる。希望があれば宰相に交渉してくれ。今後の仕事も頑張ってくれ、必要であれば軍隊も動かそう。会議は以上だ」
陛下は立ち上がって退席された
その間、頭を下げて待つ
扉が閉まる音と共に頭を上げると、宰相閣下が近づいてきた
宰相「良い報告だった。で?なにか褒美に希望はあるかな?」
「え?っと・・・・希望ですか・・・。正直、今回の事はSランク冒険者の方が手伝ってくれたのでここまで早く対処出来た事なんです・・・・あいつが関与している事を証明できたのもあの人達のお陰でして・・・」
宰相「ふふっ、知っているよ。もちろん陛下もだ」
「え!?ご存じだったんですか?」
宰相「ああ、こっちはこっちで動いていた。だが、直接犯人と接触はしないもんでな・・・お手上げ状態だったんだが、あのSランク冒険者たちはとんでもない・・・」
「やっぱりそう思いますか?自白薬もそうですが・・・もはや私達の考えが及ぶ範囲外で事が起こるので、毎回混乱しました・・・・」
宰相「それでも、彼らの手伝いを受け入れる判断をしたのは君だろう。私はそこを評価している。誰にでも出来る事ではない・・・・私なら疑ってかかっていただろうしな・・・・」
「確かに、私も心底信頼していた訳ではないですが・・・・どこか信じたくなる人達でした・・・不思議ですよね」
宰相「ははっ、それだけ君の見る目があったという事だ。誇れ。褒美は『アルラド』の2人にも振り込まれる予定だから気にする事はない。自分が欲しい物を考えておいてくれ。もちろん金だけでもいいぞ」
「ありがとございます!彼らには自白薬4本も提供してもらっているので、お願いしようと思っていた所なんですよ」
宰相「ああ、そっちの分も含めた金額を振り込んでおくよ。君から彼らに言っておいてくれるか?」
「はい、必ず伝えます」
宰相「ではな、褒美の内容が決まればまた連絡をしてくれ」
「はい。ありがとうございました」
敬礼をする
手を振って宰相閣下は去っていった
これからもっと忙しくなるだろう、国を越えた捜査が始まる
頑張ろう・・・・・国王陛下が『人族至上主義』を掲げる人でなくて良かった
ありがとござした!




