王都での行方不明者捜索
行方不明が王都で発生している
冒険者ギルドマスターからの依頼で、情報収集することになったけど
正直、依頼がなくても手伝うつもりだ
誘拐して人身売買が行われているって、ちょっと理解できない
人が人を売る?
そんな事を考える時点で許せないけど、買う方も買うほうだ
この国にも奴隷はいるけど、みんな犯罪奴隷か借金奴隷だ
借金奴隷は借金を返すための手段として、全額返金できるまで働かないといけない制度だ
奴隷とは名前がついてはいるけど、人権や衣食住が補償されているものなので、理解はできる
でも、ただ捕まえて、売る
どんな理由があっても、許されるものじゃないでしょう
怒りをふつふつと感じながら、孤児院へ向かった
教会に隣接する孤児院は、王都なだけあって大きい、子供も多いはずだ
中に入って、掃除をしていたシスターへ話を聞く
「冒険者ギルドマスターからの依頼で、行方不明者について話を聞きたいんです」
そう言えば、すぐに奥の部屋へ通してくれた
しばらく待っていると、年配の男性が来た
「はじめまして、ここで司祭をしております。アーランドと申します」
「はじめまして。冒険者ギルドマスターからの依頼で来ました。Sランクパーティ『アルラド』のルラです」
ガロルド「ガロルドだ」
司祭「Sランク・・・そんな方が事件に協力して下さるんですね。ありがとうございます。協力できる事はなんでも致します。どうか・・・よろしくお願いします」
穏やかな印象の司祭さんは、とても悲しそうな顔だった
「はい、私達も出来る事は全てやります。行方不明者について詳しく話を聞きたいんです」
司祭「わかりました。順を追って説明いたしますね」
司祭さんが説明してくれたのは
最初の行方不明者は約3か月前、獣人の子供が帰って来なかった事が始まりで
夜になっても帰って来ないので、衛兵に連絡をして
自分たちでも探してみたが、翌日になっても帰って来ないどころか、足跡もわからなかった
衛兵が検問を厳しくして、王都から出ていく馬車も厳しく調べたがわからなかったと報告があった
何かの事件に巻き込まれたのか、捜索をしてくれたが進展はなく今に至る
1人目が居なくなってから6日後に2人目が居なくなり
衛兵からの説明では進展はない。の話しか来ない
その日から、子供たちへは町へ遊びに出てはいけないと言ったが
子供が我慢できずに脱走する事もあったそうで、今までに5人が孤児院から失踪しているらしい
町の住民も失踪者が出ていて、どの人も女性か子供、特に獣人の子供で
孤児院で一番最近失踪したのが、ウサギ獣人の子供でマルリちゃん
孤児院から卒業して奉公予定だったらしく、その日は出勤したまま、帰って来なかった
奉公先にも確認したが、店には来ていないとの事だった・・・・と
その失踪がどれも、目撃者がいない
未だに何の情報もないと、衛兵からは言われるそうだ
司祭「町から出ていないのだとしたら、この町のどこかにいるはずなのに、衛兵がそれを見つけられない。神に毎日祈っていてもあの子達は帰ってこない。一体なにが起こっているのでしょうか?無力な私をお許し下さい・・・・」
悲痛な声を聞いて、胸が痛い
でも、どうしてそこまで何も情報がないのだろうか?
多数の失踪者がいるのに連れ去る目撃情報もない?
ガロルド「情報がないのなら、とにかく王都中を探すしかないか」
「そうだね、一番最近の女の子の足跡をたどってみようか」
コンコンコン 「失礼します!あの、シゼがまた脱走したみたいで!」
慌てた様子のシスター
司祭「またですか?あの子は本当に・・・危険だと言っているのに」
「子供が脱走したんですか?」
シスター「はい、マルリが居なくなってから毎日、どこからか町へ脱走するようになってしまって・・・今日も気が付いたらいなくなっていて。どうか探すのを手伝ってくださいませんか?」
「もちろんです。すぐに探しましょう」
ガロルド「ああ」
ひとりで歩き回っているのなら、危ない
シスターから子供の特徴を聞いて、町へと探しに行った
5才、犬獣人の男の子、シゼ、茶髪の髪で活発
情報はこれだけだけど、とにかく探そう
一番最近の失踪者のマルリ、この子が働いていたっていうお店にまずは向かう
ガロルド「目撃情報がひとつもないっていうのは、やっぱりおかしな話だな」
「うん、ひとりになった時に、誰にもバレずに誘拐できる場所がないとそんな事できないよね」
誘拐するにしても、相手も抵抗するだろうし声も出すだろう
それを一瞬で隠せる、もしくはバレずにするっていうのは難しい事だろう
ひとり、ふたりならバレずにする事も可能だろうけど
30人近くが何の目撃情報もないなんて、あり得ない
きっと何か訳があるはずだ
早歩きでマルリが務めていたお店へ向かう途中で
「はなせーーーー!!」
子供の声が聞こえてきた
「急ごう!」
ガロルド「ああ」
声がする方へ走っていくと、通りで男の子が叫んでいた
「はなせ!ばか!」
「離さない、子供がひとりで町にいたら危ないって言われただろう」
「うるさい!姉ちゃんを探すんだ!」
子供の服を掴んで逃げようとするのを止めている衛兵と
それから逃げようとする子供、犬っぽい獣人の子供だ
シゼ君かな?
「俺が孤児院まで連れていくよ」
「ああ、じゃあ俺たちは巡回しておく」
「わかった、戻ったら合流する」
「あ、あの、その子を探していたので私たちが孤児院まで連れていきますよ」
衛兵さんが連れて行ってしまいそうだったので、そう声をかけた
衛兵「は?あんたは誰だ?おい、知っている人か?」
「いや、しらない。いいからはなせよ!」
衛兵「離したら逃げるだろうが。すまんが、知らない人間には渡せない」
「あ、そっか。私達Sランク冒険者で、司祭のアーランドさんからシゼ君を探してきて欲しいって頼まれたんです」
衛兵「Sランク冒険者!?お前シゼっていうのか?」
「うん。しさい様にもうバレちゃったのか・・・」
しょんぼりと大人しくなったシゼ君
「なので、私たちが孤児院まで連れて行きますよ」
衛兵「じゃあ・・・
「ちょっと待て、冒険者タグを見せてもらおうか」
偉そうな男性が割って入って来た
ガロルド「ほら」
男性は怪訝そうな顔でタグを確かめて「なんでSランク冒険者が?」とつぶやいている
「俺はこの隊の隊長だ、Sランク冒険者なのはわかったが信じるわけにはいかないな。子供は俺が連れていく」
そう言って、シゼ君の服をひっつかんで持ち上げた
「や、やめろ!もちあげるな!」
バタバタと暴れるシゼ君
「ちょっと、そんな持ち方はないんじゃないですか?シゼ君が苦しそうですけど」
隊長「こんな野蛮なんだから仕方ないだろう」
「やーーめーーーろーーー!!」
さらに暴れるシゼ君
「そんな持ち方しているから、暴れているんです。降ろしてあげて下さい」
隊長「は?俺に指図するな。犬はこうやって持つもんなんだ」
犬?シゼ君のことを犬って呼んだの?
ガロルド「シゼは犬じゃないだろう、獣人だ」
隊長「一緒だ、畜生だからこうして話も聞かずに暴れているんだろうが」
「その子を離せ、子供をそんな風に扱うな。獣人の子供を犬と呼ぶあなたには任せられない」
睨みつけならがそう言うと、一瞬たじろいだ
隊長「お、王都の衛兵にたてつく気か!」
「子供を離せ!」「最低ね!」「いい加減にしろ!」
「失踪した子供を探せよ!」「どこで時間潰してんだ!」「ふざけんなよ!!」
騒ぎで市民が集まって来た
隊長の態度に怒った住民が、ヤジを飛ばし始めた
かなり嫌われているようだ
「さあ、シゼ君を降ろして」
隊長「くっっ」
悔しそうな顔で、シゼ君を地面に降ろした
「こっちおいで」
しゃがんで、シゼ君を呼ぶと、走ってこっちに来てくれる
隊長「お、覚えていろよ。問題行動をすればすぐにしょっ引いてやる」
ガロルド「そんな暇があるなら失踪者を探せ。こんな所で時間をつぶすな」
「そーだぞ!」「何やってんだ!」「仕事しろ!!」「子供を探せ!!」
ガロルドの一言に同調した住民からのヤジが飛び交う
隊長は「ぐぬぬぬっ」とか言って、顔が真っ赤だ
隊長「覚えていろよ・・・おい!お前!あいつらが変な所へ行かないか孤児院までついていけ!」
衛兵「は、はい!」
お目付け役に一人を残して、どこかへ行ってしまった
「なんて気分が悪い奴、あれで隊長?」
ガロルド「隊長職は貴族が多いからな、無能でもなれる」
「なるほど、あれじゃあ捜査も進まないか」
シゼ「ほんと、むのーーだぜ」
「こら、君は脱走したらダメでしょう?みんな心配してたよ?」
シゼ「おれはマルリねーちゃんをさがしてたんだ。おれがさがさないとむのーにはむりだろう?」
そう言って得意げなシゼ君、可愛いんだけどね
「だって、衛兵さん。任せておけないって。上司に言っといて」
衛兵「ぐっ、上司は選べないので・・・・」
「部下は大変だね・・・」
この衛兵さんも、あの隊長には苦労しているみたいだな・・・
ガロルド「孤児院まで一度行こう」
「うん、そうだね」
シゼ「ダメだ!ねーちゃんをさがさないと!」
今にも走り出しそうなシゼ君をしゃがんで捕まえた
「そうだね、だから一回孤児院まで戻って、司祭さんに探して来るって言おう?」
シゼ「え?とめないのか?」
きょとんとした顔も可愛いな
「うん、一緒に探そう。シゼ君が協力してくれたら私も助かるな、私はルラ。よろしくね」
ガロルド「ガロルドだ」
シゼ「ほんとに?いっしょにさがしてくれるのか?」
目に涙をいっぱいに溜めてそういう
「もちろんだよ。がんばろうね」
シゼ「うん・・・・」
ぽろぽろと泣くシゼ君
きっと、助けたくて、じっとしてられなかったんだよね
泣くシゼ君を抱っこして「じゃあ急がないと!」そう言って走り出す
「ちょ、ちょっと!」そう言って焦ってついて来る衛兵さん
シゼ「すっげー!早い!」
「でしょう?私たちSランク冒険者なんだから!任せて!」
ガロルド「ああ、任せろ」
シゼ「あはははは!」
笑顔になったシゼ君と、必死についてくる衛兵さん
子供は笑顔が良い
「まってくれぇ~」という声が聞こえてくるので、少しスピードを落として
孤児院まで走った
へろへろの衛兵さんを見て笑うシゼ君
シゼ君に笑顔が戻って良かった!
ありがとござした!




