ガロルドの話
物心がついたころから孤児院にいた
シスターがいうには、赤ん坊のころに孤児院の前に置かれていたそうだ
「きっと事情があってあなたを置いていったのね、孤児院の前に置いていくっていう事は、あなたを大事に思っていて、死んでほしくなかったのよ、あなたは愛されているのよ」
そうシスターは言っていた
俺にはわからない話だけど
シスターがそういうのならそなのだろうと、ぼんやり思っていた
少しずつ大きくなるにつれて、感覚が鋭くなっていったように思う
困った事に、シスターが俺の髪を切ろうと
刃物を持って後ろに立たれるとゾワゾワとした感覚に襲われて
じっとしていられなかった
正直髪をとかされるのも嫌だったが、我慢していた
何故なのかはわからない
さらに成長すると、孤児院の食事ではまったく足りなくなった
いつも空腹状態で、機嫌も悪かったと思う
でも、孤児院も裕福ではない
足りないからといって、追加でもらえるものでもない
空腹でイライラする事が増えて
ある日、昼ごはんを食べて
足りないのを我慢していた時に、木製の皿を割ってしまった
ぐっと握っていただけのつもりが、力が入りすぎたみたいで
持っている所からバキッと割れてしまったのだ
自分でもビックリした、シスターに謝ったけど、別室へ連れて行かれた
怒られると思ったが、シスターは怒ってはいなかった
「ちゃんと謝れてえらいわね、少しガロルドとお話したい事があってここに来たの、聞いてくれる?」
予想外だったけど、素直にうなずいて話を聞いた
シスターがいう事には
俺はおそらく、どこか力の強い種族と人間との混血で
普通の人間より身体能力が高く、力も強い、でもそれは悪い事ではない
使い方によっては強くもなれる
しかし、シスターはその力の使い方を教えてあげられない
せいぜい読み書き計算くらいだと、少し悲しそうに話した
「それなら、おれはぼうけんしゃになる」そう言った
誰かが言っていた
強いやつは冒険者になればお金がいっぱいもらえると
そうすればお腹いっぱい食べれるし、孤児院にもお金が入る
そう子供ながらに思ったんだ
シスターは「冒険者は危険な仕事で、もう少し大きくなってからにしなさい」
そう言っていたけど
次の日には冒険者ギルドへ行った
受付で「ぼうけんしゃになりたい」と言えば、登録料が必要だと言われた
「お金をかせいでからはらう」と言ったけどダメだった
どうしても早く働きたかったから、受付で粘っていたら
ギルドマスターと呼ばれる男が現れて「私が出すので登録させてあげてください」
そう言って、登録させてくれた
登録用紙に書いている時に、年齢を書く所があったので6才と書くと驚かれたけど
ダメだとは言われなかった
ギルドマスターからは
「まだ、町の外に出る仕事はダメだよ。町の中の依頼を受けてお金を稼いでから、装備をととのえてからだよ」
戦う仕事だと思っていたから不満はあったが、素直に頷いておいた
さっそく町中依頼というのを受けて、銀貨2枚を稼いだ
荷物運びや、掃除など、町中依頼はたくさんあったので仕事には困らなかった
ちなみに、登録をしたその日にギルドマスターが孤児院に来て
冒険者登録をした事がシスターにバレた
でも、ギルドマスターが「私が見張っておきますのでご心配なく」そう言ってくれた
シスターは驚いていたけど「よろしくお願いいたします。」そう言って頭を下げていた
シスターからは、「ダメと言ったのに・・・仕方のない子ですね。ギルドマスターのいう事をよく聞いて、危ない事はしてはいけませんよ」そう言われただけだった
かなり環境には恵まれていたと思う、今思えば
それからは、ほぼ毎日依頼を受けてお金を稼いだ
稼いだお金は半分ほどは自分の食費に消えたが、それ以外は貯めていた
金貨が数十枚貯まったところで、胸当てや剣を買った
そこでギルドマスターへ「外へ出たい」と言った
最初は危険だから指導役を付けると言って、冒険者2人を付けてくれた
冒険者2人に連れられて初めて町の外へ出たときは感動した
世界は広い
先が見えない景色をはじめて見て、走りだしたが
冒険者2人に止められた
この頃には身体強化もそれなりに使えるようになっていて
俺を捕まえに来た冒険者2人は息切れしていた
そこから、薬草の見つけ方や、魔物と戦う時の注意
素材が取れる魔物などを教えてもらった
冒険者の基礎の基礎の部分だ
はじめて、ラビットやラットを狩り
解体も教えてもらった
これで自分で肉が手に入れられる、と喜んだが
冒険者は自分たちで肉を焼いたりは、滅多にしないんだと言う
食べるのは干し肉や、雑穀を固めたものや、硬いパンだと
絶望だ
そんなものではお腹いっぱいにならない
美味くもない、どちらかというと不味い
楽しかった狩りは絶望と共に終わった
それでも、解体して売りに出した素材でお金が手に入った
町中依頼よりも実入りが良い
それだけが救いだった
次の日からは一人で狩りに出た
でも、昼には帰って町でご飯を食べるので
移動は基本的に走りだ
昼ご飯を食べて、また走る、狩るを毎日繰り返した
はじめこそしんどかったが、それにも慣れて息も切れなくなった
狩りは楽しかったけど、獲物を持って帰るのが面倒だ
ボアをはじめて狩った時は「狩らない方が良かったかもしれない」そう思うぐらいだった
それでも、肉が大量に手に入った
孤児院に持って帰れば、調理してくれて
みんなも喜んでくれた
シスターだけは「危ない事はしないように」と言っていたが
「ボアは危なくない」と言っておいた
自分的には安全な部類だ
シスターは苦笑いだったけど
少し大型の魔物を倒すようになってから問題が起こった
剣が折れるのだ
仕方なく、切るのを諦めて、刺すようにした
これなら無理しない限り折れない
戦い方にも慣れて来た時に、大人のパーティにも誘われるようになった
「討伐依頼は稼げる」という言葉を聞いて参加した
確かに実入りは良かったが、ケガが増えた
パーティで討伐するような魔物は強い
打ち身くらいなら、2,3日寝れば治るが、切り傷はそうもいかない
仕方なく高いポーションを買って治してから孤児院へ帰った
心配させたくはない
それでも依頼をこなしていくうちに、だんだんと実力もついて来たように思う
ランクもDまで上がった
たまにギルドマスターから「無理はしていないか」と聞かれたけど
「問題ない」とだけ答えた
実力が上がるにつれて、安定して稼げるようになってきた
ソロで討伐もできる、移動も一人の方が早い
他のパーティは走ったりしないからな
10才になった時に町を出ようと思った
他の冒険者の話を聞くと、ダンジョンならもっと稼げると言っていたからだ
シスターにその話をすると
「ダンジョンは危ない所です。無理して稼ぐ必要もないです」
そう言われた
だが、いつまでもここにいるわけにはいかない
みんな成人の15才には出ていくのだ
それが少し早くなっただけだ
「俺は無理をするつもりはないし、ここにいつまでも居るわけじゃない。早いか遅いかの話だけだ」
そう言えば、シスターは困った顔になってしまった
「わかっていますよ・・・・ただ、心配なだけです。あなたがやりたい事ならば止めません、でもいつでも戻ってきて下さいね。そして顔を見せて下さい」
そう言って抱きしめてくれた
「ありがとう」
シスターがいつでも戻って来て良いと言ってくれた
俺の帰る場所があるんだと思えた
そう思ったらどこまでも行ける気がした
荷物をまとめて、旅に必要そうなものを買った
そして、孤児院で挨拶をした後に、ギルドマスターへも挨拶をした
旅立つ事を話すと、「餞別です」そう言って、ポーションやナイフをくれた
ギルドマスターは止めなかったけど
「死ぬような事はしないように、あなたの家はここにあります」そう言っていた
シスターと同じだった
俺が帰る場所はここなのだろう
また戻ってこよう
そして、町を出た
一番近くのダンジョンへ向かって、依頼を受けた
ダンジョンがある町は冒険者が多いし、仕事も多かった
稼ぎも一気に増えた
孤児院に仕送りをしても、普通に生活ができる
ここのダンジョン以外も稼げる話を聞いて、さらに移動をする
隣国のダンジョンへも行った
一緒に依頼を受けたパーティから依頼料をボラれた時もあった
長いダンジョン生活に嫌になった事もあった
でも、気が付けばBランクまでランクは上がっていた
ありがとござした!




