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幽霊探し -中-

 捜索開始から数日後、一匹の猫から吉報が入る。


「『人間ではない旅装束の者を見た』?本当か。どこで」

「にゃー」

「そうか。助かった」


 人海戦術ならぬ猫海戦術で男を見つけ出した。

 少女へ知らせるために、猫をひと撫でしてその場を後にする。




---




 教えてもらった学校に着くと、校門付近で少女を待っていた。


「誰あの男の人」

「誰かの彼氏じゃね?」

「スタイル良いじゃん」

「モデルだったりして」

「ここにモデルが来るわけないっしょ」

「それはそう」


 授業が終わり各々帰宅し始めた頃。教室の窓に女子生徒がかたまっていた。恋愛に敏感な、年ごろの女子高生たちが湧きたっている。


「顔見えないし、雰囲気イケメンじゃないの」

「いや、さっき近くで見たけどイケメンだったー!」

「伏し目気味でクール系って感じ」

「でも頭に猫乗っけてんの」

「何それ、かわよ〜」

「わざわざ見に行ったの?ウケる」

「話しかけに行こうかな」

「ならあたしも行きた~い」


 少女も気になって校門へと目をやる。黒髪、くせ毛、長身。目を凝らして見ると頭に黒猫を乗せている。どう見ても、そこにいたのはついこの前会ったばかりの人物だった。


「えっ、猫宮さん!?」

「ヒマリの知り合い?」


 ヒマリと呼ばれた猫宮の依頼主である少女が、クラスメイトに詰め寄られる。最近浮ついてるのは彼氏のせいだったのかと、あらぬ誤解をされ始めた。


「で?ほんとのところ、ヒマリの彼氏なの?」

「か、彼氏じゃないよ!!」

「じゃあ紹介してよ~」


 なおも詰めてくるクラスメイトたちの包囲網から、抜け出すことに成功する。今のうちにと急いで猫宮の元へと向かう。


「ごめん、急いでるから!」

「え?うん。また明日ねー」

「また明日ー!」

「転ばないようにねー!」

「はーい!おわっ、とと」


 忘れずに挨拶をして教室から飛び出した。慌てたせいで注意された直後に、何もないところでつんのめる。


(幽霊さんに夢中だったから気づかなかったけど、猫宮さんって確かに、カッコい……いやいやいや!私には心に決めた幽霊さんがいるから!!)


 少女は誰かに言うわけでもなく、一人勝手に心に誓った。




---




 校門に着くと猫宮が何かを言う前に、学校の知り合いから見えないところまで引っ張っていく。


「何かありました?」

「『何かありました?』じゃないですよ!なんで学校に『来る』ってメールしてくれなかったんですかっ!皆に誤解されちゃうとこでした」

「あー。早く伝えようと思ってたら、連絡するの忘れてた」


 普段猫宮はスマートフォンを積極的に使わないため、連絡ツールの存在を失念していた。基本的に依頼のメールを読む際に開く程度であり、また現代の若者にしては珍しく、SNSに疎い。いい加減Limeアプリを入れろとはよく言われているのだが、現状標準メールアプリで事足りているため、採用されることはない。そもそも、電波が届かない森や山の奥地にいることが多く、携帯電話を持っていても使えないことがざらだ。


「押しかけてしまいすみません」

「そっ……そうでしたか。私の方こそ気にし過ぎました。ごめんなさい」

「それこそ気にせず。それより──」


 教室で猫宮を見たときから薄々勘づいていた。わざわざ学校に来てまで、いち早く知らせたい依頼内容とくれば──。


「見つかったんですね」


 当たりだとばかりに猫宮は口角をあげた。


「待たせているので、行きましょうか」

「はい!」


 しっかりした猫宮の足取りを頼りに、少女は探し求めていた男の元へと向かう。



(やばい)


(やばいやばいやばい)


(どうしよう急にドキドキしてきた)


(あっメイク崩れてないかな?そもそもメイクしてきたよね?うん大丈夫今日もバッチリおっけー)


(寝ぐせとかないよね??ああーー全部気になってきたぁー!もう心臓バックバクだぁぁ!)


 先までの勢いはどうしたのか、いざ会うとなった途端緊張感に襲われていた。些細なことが気になって仕方なくなり、挙動不審になっている。


(お付き合いすることになったらどこ行こ~。いきなり遊園地はハードル高いよね?カジュアルに公園でクレープ分け合いっことかがいいかなぁ)


(ロマンチックな映画を一緒に観るとか、あっ!お化け屋敷デートとかいいじゃん!さりげなく腕にぎゅってできる!!)


 今度は交際に至っていないというのに、デートの予定を考え始めていた。


「怖がるフリしてボディタッチとか……可愛い見た目の割に下心丸出しで……おーこわ」

「トゲのある言い方っ!」


 少女の顔色がころころ変わって、落ち着きがなく心配になる。


「……って、何で知ってるんですか!心読みましたよね。猫使いはエスパーなんですか!?」

「『猫使い』とは?読むも何も口に出てましたがねぇ」

「へっ?い、一体いつから……?」

「『やばい』ってところからずっと」


 つまり、緊張し始め身だしなみが気にして、デートプランを考えていたことまでのすべてを猫宮に聞かれていたということ。


「全部じゃないですか!!!!」


 あっと言う間に、ゆでだこ少女の出来上がり。

★猫宮さんの質問コーナー★


Q1)猫宮さんってイケメンなのー?

A1)何で俺に聞くんだ。知らねぇよ。


Q2)猫宮さんは自分がイケメンだと思うー?

A2)全く。やたら面のいい奴を知ってるから余計。


Q3)おはぎは猫宮さんってカッコいいー?

A3)にゃんっ!

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