異世界探検
宿屋を出て私はとりあえず色々なお店を見てみることにした。お店はお祭りのときの出店のような屋台もあれば地面にシートを引いてその上に商品を置いているお店やしっかりとした建物の中に商品が置いてあるようなお店もあった。私はお腹が空いてたので、出店のような屋台で串焼きを数本買って食べた。味付けは塩胡椒だけでやや硬かったけど美味しかった。
そのまま私は歩いていくととある小さなお店に目が行った。そのお店では腕時計が売られていたのだ。中には女性用の小さめのものもあった。金額はやや高いが、入れ替わるタイミングを見つけるためにも私は買うことにした。腕時計の表示が日本と同じだから、おそらくこの世界でも日本と同じような進み方をしているのだろう。ここまで買ったとき私はいつ入れ替わるのかが分からない以上いったん宿屋に帰ることにした。道は人に聞かなくても、通ってきた道をすべて覚えてるから問題なく帰れるのだ。
帰ると言えばお姉ちゃんと得るときはいつも私が先導していたな。お姉ちゃんと私の性格や得意なこととかは真逆なことが多かった。お姉ちゃんは直感がよく当たる代わりに記憶力が悪く、逆に私は記憶力はとても良かったけど直感を信じて行動すると大変な目にあうことが多かった。お姉ちゃんの直感は確かに当たるのだが、お姉ちゃんが私のことを頼りにしてくれているという状況がうれしかったからいつも私に先導させてもらってたんだった。
私は特に何事もなく宿屋に着いた。
「おや、もう帰ってきたのかい。はい、これあなたの部屋の鍵ね。この街に来るのは初めてのようだったけどどうだったかい。」
「え、どうして私がこの街に来るのが初めてってわかったんですか?」
「あー、私も昔、旦那と仲間と冒険者をやっていたんだけどね、私たちが新しい街に来た時の様子にそっくりだったからだよ。」
「そうなんですね。お二人とも強いってお聞きしていたんですけど冒険者の方だったんですね。すごいなあ、私はたぶん冒険者にはなれないですね。どうしても血を見てしまうと過去のトラウマが蘇って動けなくなってしまうんですよね。私がこんな年で独り立ちすることにしたのも、あそこにいるとどうしてもトラウマが蘇ってしまうからなんですよ。両親から一緒に引っ越すことも提案されたんですけどあと数年したらどうせ独り立ちするつもりだったので。」
「あら、そうだったのね…」
よし、何とか納得してもらえたようだ。どうせいつかは聞かれると思ったから帰っている間に考えたのだ。といっても真実も多いけどね。血を見てしまうと動けなくなることや独り立ちを考えていたことは本当だしね。
「もうどんな仕事に就くかとかは決めたの?」
「あ、いえまだです。これからいろんなところを回って決めるつもりでしたので。」
「それだったら、もしあなたが字の読み書きができるんだったら冒険者ギルドの受付嬢なんてどうかしら。やはりあなたのトラウマも少しづつ直していくべきだと思うのよ。それに、サリーっていう子がここで働いていることは今日出るときに伝えたと思うんだけど、あの子の姉がこの街の冒険者ギルドの副ギルド長で受付系の仕事の代表なのよね。それで今ちょうど人手不足で困っているそうなのよ。ちょうどいいと思うんだけどあなたはどうしたい?」
「まだ、どんな感じかあまり掴めてないので、とりあえず明日、冒険者ギルドに行くだけ行ってみようと思います。」
「それがいいかもね。まぁこの街には色々とお店があるからゆっくりと決めるといいよ。一応あなたが行くことだけは伝えておくわね。カレンさんに会いに来ましたって言いなさい。そうしたら通してもらえるようにしといてあげるわ。」
「わざわざありがとうございます。あ、すみません。食事っていつ頃から出されているんですか?」
「食事かい。食事なら朝の6時から9時までと夜の6時30分から9時までやってるよ。ただ夜は人が多いから早めに来たほうがいいかもね。」
「ありがとうございます。それでは私は一旦部屋に戻りますね。」
私は部屋に戻って、部屋を改めて再確認した。部屋にあるのは、壁掛け時計とベット、クローゼット、机くらいだった。神様がくれたこの世界の常識によるとこの世界には魔物と呼ばれる生き物がいるらしく、そして魔物を倒したりしてその魔物から得た素材などで生計を立てたりしているのが冒険者と呼ばれる人達らしい。多くの人が冒険者になるそうだが、おそらく血を見ると固まってしまう私にはなれない仕事だと思ったから即座にあきらめたのだ。そうなるとかなり就ける仕事が限られていくから今回のおばあさんのお誘いはとてもありがたい。
私は神様からもらった荷物を宿を出るときにまとめてアイテムボックスの中に入れてたため、取り出して整理しながら6時30分になるのを待った。しかし私の意識は6時になると同時に飛ぶのだった。。