#1 終わりと始まり
ここは、DRMMORPG(仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム)ー『ロストユース』
2060年に満を持して発売して、発売したフルダイブMMOだ。
感覚を繋ぐインターネットと言われる6Gは20年前に実現していたのだが、電波障害などの影響に大きく作用され感度調整機能が不安定となり、体調不良を起こすものが続出した。そのため安全性を保障できないとし、一部の大企業を除いて廃止された。
その後20年のときを経て、通信の効率化を突き詰めることで電波の安定性は向上し一般化され、「フルダイブ」と言われる体のすべての感覚をオンラインゲームで体感することができるようになった。
このゲームの凄まじいところはそのデータ量と圧倒的自由度だ。
このゲームでなれる種族は人間やエルフ、ドワーフ、天使、獣人などの人型。ゴブリンやオーク、悪魔といった外見は不気味ななモンスター。二足歩行ですらない、大きな昆虫や魚にすらなれる。
さらに職業といわれるものがあり、通常プレイで獲得できる基本職から、期間限定イベントをクリアした場合や一部のランカーのみが持つ上級職などがある。
これによりそれぞれのプレイヤーは意図的に作りこまない限り全く同じキャラクターを作ることはできないほどの種類がある。
さらに、このゲームは多くのスポンサーがついている。医療関係者や自衛隊などは実際にリアルで行っている軍事訓練や手術のシミュレーションに使うこともあるほどだ。リアリティのある体験をしながら、現実では行えないような危険な行為をすることも珍しくない。
しかし、現実社会すらも支えてきたこのゲームはドルイドの新作発表に伴い、たった4年で終わりを迎えようとしている。
・
・
・
ここは世界に名を轟かせた元世界2位のギルド『龍の王冠(ドラゴン's クラウン)』
辺り一面マグマに包まれており、建物は魔王城のようにも地獄の門のようにも見える。
全盛期100人規模だったそのギルドもサービス終了が迫っていると知り、多くの者が辞めていった。
そこにはギルドマスターとその弟がいた。
弟の名は炎道 大輝、オンラインでは「ラージラ・インフェルノ」を名乗っている。名前の由来はlarge+怪獣ゴ〇ラをもじったものだ。
種族は竜人。その見た目は黒い角が額に2本生えており、赤黒い肌に黄色く光る血管が浮き、それは尻尾まで通っている。はたから見なくとも、悪魔そのものだ。
リアルでは環境汚染しきってしまったこの世界を少しでもマシにしたいと考え、7年前大学卒業と同時に、兄が務めていた有名なエネルギー開発の会社に入った。
2060年現在、10年前に起きた第三次世界大戦による地球の傷跡は未だ癒えてない、それどころか10年経っても冷戦状態なだけでいつ戦争が起こるかわからない状況だ。
そんな中、会社は6年前に急に方針を変え、とあるゲーム会社に大金を投資し始めた。その企業こそ『ロストユース』を作った株式会社ドルイドだった。
会社は俺たちにそのゲーム会社の支援をするように言い、俺たち兄弟と他5人を派遣した。
仕事として俺は宣伝やイベントの発案、クラウドファンディングといった仕事の手伝いをやらされた。他6人はそれぞれ別の手伝いをやっていたようだが詳細は知らない。
ゲームでは一番最初に手を貸してくれた企業だからと言い、俺たちに強いキャラクターの作り方を教え、イベントの敵役をさせてくれることもあった。
それらの思い出は、俺たちの会社と関係があるのか?と疑問に思いながらも充実した時間だった。ドルイドへの派遣が終わると、一緒に派遣されていた同僚や兄も帰りたくないと不満を垂らすほどだった。
そんな俺はこのゲーム最後の日に兄に呼び出されている。
「兄貴、急に呼び出してなんだよ」
兄の名は炎道 快虎オンラインではライガ・インフェルノを名乗っている。
種族は俺と同じ竜人だが、対照的に角は1本角であり、青い肌色に紫の血管のようなものが同じように尻尾まで通っている。
「おお、ラー。俺たちって結局五分五分の勝率のままだっただろ?だから最後に一勝負して、どっちが強いか決めようぜ」
弟は呆れる。今日は仕事が溜まっていたせいで、夜11時まで残業だったのだ。本当は今すぐにベッドで死んだように眠りたい。
「まあ、最後だからいいけど汚い戦法使っても文句言うなよ!?」
「おいおい、今更過ぎるだろ?俺たちはダブルスで初心者相手に即死コンボをして、掲示板に晒されたのを忘れたのか?ドルイドさんにも相当苦言を呈されただろ?」
「いや、あれは富裕層のボンボン二人が課金で性能を盛って挑んできたからだろ、俺たちは悪くない。」
ライガはどこか嬉しそうにも寂しそうにも見える顔をする。
すると、3メートルはあろうかという紫のオーラを放つ槍を構え、遠くから見れば獣人のようにも見える全身鎧を着用する。
「強制終了まで時間が10分しかないぞ、とっとと最後の勝負を始めよう!ルールは体力の半分までだ!」
それを了承し、ラーも自身の主力武器である業火を纏う双剣とイベントで倒したマグマのような龍から作った全身鎧を着用する。
「「では尋常に....勝負っ!!」」
衝突の轟音と共に二人の最後の戦いが始まった。
前のめりにラーがライガの懐に入っていこうとするが、その槍のリーチと俊敏性により、間合いを詰められない。
距離を取らない理由はライガはリーチを活かした戦いをし、遠距離でも鬼火を飛ばしてくる。この鬼火自体には大した威力はないが次に与えるダメージを1.5倍にする効果と相手の魔法を軽減、威力の弱いものなら相殺する効果がある。これがダブルスで即死コンボを可能にした理由でもある。
ラーは苛立たしさを感じながら、このままでは勝てないと考え自身の足元に地雷系魔法を設置していく。
ライガはそれを看破するスキルがあるが、相手の行動を制限することができるというメリットがある。
しかし.....
「間抜け!」
ライガはラーの足を払い、槍による突きを行った。
「ー——っ!!」
ラーはそれを寸前で双剣により防ぐが、その槍の勢いに吹き飛ばされる。後ろには自身の仕掛けた地雷魔法があり....
ドゴオーーーン....
まるで大砲を受けたようなクレーターが空いた。
その一撃でラーは動けなくなり、最後の勝負はいとも簡単に兄であるライガが勝った。
「おいおい、鈍り過ぎじゃないか?1年前とは比べ物にならないくらい弱くなってるぞ。寝てんのか?」
....違う、何かがおかしい。自身の設置した地雷型魔法で自爆しても俺は種族による炎への耐性により大したダメージにはならないはずだ。それなのに全く起き上がれない。
「ぐっう.......痛い、」
急に全身に強い痛みを感じ、鎧からリアルな血が流れている。
ラーはその痛みに困惑する。フルダイブとはいえ、痛覚は実装していなかったはずだ。
そのはずだが、全身はまるで本当に地雷に突っ込んだかのように激痛が走っている。
「どうやら、・・・ようだな、ほろこれを飲め」
ライガがポーションを渡してきたので、ラーはそれを必死に飲み干す。
すると、みるみるうちに痛みが引いていき、ラーは安堵した。
「ラーいや大輝、見てみろ俺たちは異世界に来たみたいだぞ」
「おかしなことを」と考えながらも、異変に気付き周りを見回す。
すると、自分たちのマグマに包まれたギルドは跡形もなくなっており、二人の周りは草原だった。
「強制転移されただけじゃないか?さっきのもシステムエラーで痛覚が伝わっただけじゃ...」
ラーは事態を呑み込めずにいるが、あの痛みを思い出し軽くえづいてしまう。
「いや、ここは異世界で間違いない。さあ行くぞ!」
「行くってどこに?」
余裕なくラーが答えると、ライガは満面の笑みで言う。
「そりゃ、異世界でやることといったら理想の嫁探しに決まってるだろ?」
「.......は?」
小説自体初めてです。オーバーロードやSAOの前語りを参考に書いてますが、おかしなところがあれば意見・感想お願いします。