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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第五章 復活の魔王軍…!?
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第九十話 復讐の青龍


古代遺跡の森での特訓を初めて三週間が過ぎた。

大会開催まではあと一週間ほどに迫っている。

特訓の成果もあり、付け焼刃程度ではあるがショーナの実力を底上げすることはできた。


「肉体的な特訓はここまでじゃな。後は魔法を教える」


「おう」


「時間も無いから簡単なヤツと有用なヤツを少しだけやるぞ。まずは比較的簡単な硬質化から…」


結局、一週間ほど前の川での話からメノウとショーナの距離が縮まることは無かった。

あれから何度か気持ちを伝えようとしたが、メノウはそれを聞き入れなかったのだ。

ショーナにはメノウが何を考えているのかが分からなくなっていた。

彼女の話す魔法の講義も耳にうまく入ってこない。


「聞いておるのか?」


「あ、ああ。聞いてるよ」


「…まぁいい。次はクリア・セオリーの使い方を教えるぞぃ」


「おう」


いつもの過酷な特訓とは異なり、静かな魔法の講義が森の中では行われていた。

あまりに退屈な内容に、ミザールは一人眠りに入ってしまった。

もっとも、クリア・セオリー自体が難易度のかなり高い高等魔法の一種。

解説自体がかなり高度なものになってしまうため、彼が退屈な内容と捉えてしまうのも仕方が無いと言える。


「魔法の解除はもちろん、暗示や幻術、その他諸々に応用できる…」


「ふむふむ」


「使い方はまずは…」


講義が始まって数時間。

最初の調子を維持しつつ講義を続けるメノウ。

それに何とかついて行くショーナ。

昼寝から覚め、川の方へ魚を捕まえに行ったミザール。


「あの二人もよくやるよな…ん?」


釣り糸を垂らして少し時間が過ぎた。

ふとその間に何かの視線を感じる。


「この気配…」


辺りを見回し、その視線の主を探す。

森の中に隠れているらしく姿は確認できなかった。

しかし数は分かった。

三体、敵意を持った『何か』が潜んでいるようだ。


「隠れてないで出てこいよ!」


気配の主に叫ぶミザール。

それに答えたのかソイツは森の中から姿を現した。

小型獣型の魔物だ。

鞘から剣を引き抜き、飛び掛かってきた小型獣型の魔物を両断。

残る二体はその気迫に怯えたのか、ずくに逃げて行ってしまった。

騎士団から配給された護身用の剣とはいえ、その切れ味は並みの剣を遥かに超える。


「…森の中にいたってことはあの二人は」


急いでキャンプ地へと戻るミザール。

彼の想像通り、メノウとショーナも既に小型獣型の魔物と交戦していた。


「はッ!」


脚から放つ斬撃波、『疾風の裂脚』で小型獣型の魔物を数体纏めて切り裂くメノウ。

拳で内部装甲ごとの魔物を破壊するショーナ。

辺りには十数体の小型獣型の魔物の残骸が転がり、その中央に背中合わせに立つ二人。

あれだけの数を相手にしながらも、二人はほぼ無傷だった。


「硬質化って便利だよな」


「便利じゃろう?」


どうやらショーナは、先ほど習った硬質化の魔法を早速使っていたらしい。

の魔物を拳で殴り飛ばしているにもかかわらず、傷を負っていないのはそのためだ。


「なんだ、二人とも無事だったのか」


「当たり前じゃよ」


メノウのその言葉に答えたのか、森の奥から更なる敵が現れた。

地響きとともに、空気を割くかのような咆哮が聞こえた。

木をなぎ倒し、小型獣型の魔物の残骸をその足で踏み砕いて行く。


「ほぅ、これはこれは…」


「こいつは…恐竜!?」


「大型肉食恐竜型の魔物だ!でも青い…?」


現れたのは『大型肉食恐竜型の魔物』、いやそれを改造し造られたという『青龍型の魔物』だ。

背中に飛竜の翼を、前足に鋭い飛竜の爪を装備した特殊仕様。

数年前、メノウが東ザリィールで交戦したものと同型だ。

一目見てその時の戦いを思い出したメノウ。

しかし、一部違う部分があった。

…全身に幾何学的紋様が刻まれているという点だ。


「青龍と、いうことは…」


「まぁ、僕も当然いるわけだけど」


「やっぱりな」


木の影から姿を現した、元東ザリィール四聖獣士の少年シェン。

青龍型の魔物と同様の紋様をその腕に刻んでいる。

以前、灰色の少女から受けた忠告の通りになってしまった。


「『灰色の』が言っていた通りじゃったか」


「あれ?キミ達は僕が来ること知ってたの?」


「さあな」


「じゃあ意味ないね。今回は最初から本気でいかせてもらうよ」


これまでにシェンはメノウと二回戦ったことがある。

一回目は単なる様子見、二回目は東ザリィールでの戦い。

そのいずれも彼を倒してきた。

しかし今回は以前とは少し状況が違う。


「灰色のが言っていたことが気になるのぅ…」


以前ショーナと灰色の少女の話を盗み聞きしていたメノウ。

その時、灰色の使用所の言った言葉は『シェンという男に気をつけろ』と言う物だった。

シェンの体に刻まれた奇妙な紋様、そして灰色の少女の言葉。

青龍型の魔物に気をつけろ、というのならば話は分かる。

しかし『シェン』に気をつけろと言うのは一体…?


「気を抜かないで!」


「灰色の…ッ!」


その声と共に現れたのは、灰色の少女灰色の。

青龍型の魔物の前に立ちはだかった。


「貴女はヤツの相手を。私は魔物の始末をします!」


「お前さんは一体なぜそこまで…」


「そんなことはどうでもいいでしょう、ミザールたちは離れて!」


深く被ったフードのせいで顔こそはっきりと見えないが、少なくとも彼女は信頼できる。

以前の魔獣の時もそうだった。

そしてショーナへの忠告。

正体は明かせないのには何か理由があるのだろう。


「灰色のッ!頼むぞぃ!」


「…シェンは頼みますよ!」


「ああ!まずはシェン!お前さんを先に倒す!」


「へぇ、それはおもしろい」


大型のの魔物に対し勝負を長引かせるとのはスタミナの関係で不利になることは、今までの戦いでわかっている。

事実、前回の東ザリィールでの戦いではメノウの魔法に対して補正が掛っていなければあのような勝利は無かった。

灰色の少女がどれほどの強さを持つかはわからないが、ここでメノウがとる作戦は一つ。


「お前さんを速攻で倒し、灰色のに加勢するまで!」


「そう上手くいくかな?」


「いかせてみせる!」


「へぇ…」


「過去の亡霊に何ができるかぁ!幻影(ファントム)光龍壊!」


速攻で決着をつけるため、メノウがとった策。

それは幻影(ファントム)光龍壊を速攻で使用すること。

対峙するシェンに幻影(ファントム)光龍壊を放つメノウ。

しかし、勝負を急ぐことほど愚かな者はいない。


「過去にこだわってるのはどっちかな?メノウちゃん!」


その声と共にシェンも構えを取り技を出す。

それは…


「魔技、『反転幻影(ファントム)光龍壊』!」


「なに!?」


メノウの持つ幻影(ファントム)光龍壊、それを完璧に模倣したシェンの放つもう一つの幻影(ファントム)光龍壊。

威力はほぼ互角、二人の拳が激突する。

その衝撃は凄まじく、それだけで周囲一帯の木が折れ、地面が抉られるほど。

使用者同士でなければメノウとシェンも一瞬で吹き飛ばされていただろう。


「こんなカビの生えたような昔の技に、いつまでこだわっている気だよ!」


幻影(ファントム)光龍壊、その技の原理自体は確かに難しいことでは無い。

全身に魔力を纏わせ疑似的に硬質化。

その後、敵を貫くと同時に纏っていた魔力を放出し内部からの破壊を可能とするのだ。


「この程度の技ならコピーなんて難しくないんだよ、この紋様の力があればね!」


彼の腕に刻まれた紋様が不気味に輝きを増す。

幻影(ファントム)光龍壊のコピー技自体は彼が初というわけでは無い。

もともとこの技自体が、かつてメノウと共に学んだ『ファントム』という戦士の技のコピー。

それを彼女が改良して造りだしたのだ。

数年前、メノウと共に旅をした少女カツミも簡易的ではあるが幻影(ファントム)光龍壊のコピー技を使用している。


「カツミの技とは違う、完全にワシのコピー技…!」


「ハッ!」


ここまで互角だった拳にさらに魔力を込めるシェン。

徐々に強めるのではなく一気に魔力を流し込んできたのだ。

突然の出来事に対応できず、押し負けたメノウはそのまま弾きとばされてしまう。

折れ曲がった木に叩きつけられかけた彼女をショーナが受け止めた。


「クッ…!」


「ショーナ!?」


「こ、これくらい軽いものさ…」


「ありがとうな、ショーナ…」


「へへ…」


ショーナが軽い笑みを浮かべながら言った。

しかしメノウを受け止めた際の衝撃が意外と強かったのか、彼自身もダメージを受けているようだった。

反対に、攻撃を受けたメノウ自身には大きなダメージを見られなかった。


「それにしてもシェン、お前さんがここまで強くなっていたとは少し驚いたぞ…」


「まぁね、以前メノウちゃんが戦ったスート達とは違うんだよ!」


「正直、これは結構キツイ状況じゃな…」


シェン対メノウとショーナ。

そして青龍型の魔物対ミザールと灰色の少女。

古代遺跡の森の特訓、最後の戦いが始まった…


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