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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第五章 復活の魔王軍…!?
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第八十三話 銀色の騎士 ジルバード




 酒場で始まった賞金稼ぎタクミ・ウェーダーとザリィール帝国騎士団の少女ミザール、二人の喧嘩。

 何事かと他の客たち数人も二人を囲む。


「店の中だと周りに迷惑がかかる、表に出な!」


 ウェーダーが言った。

 酔っているとはいえ、最低限の気配りは出来るようだ。

 ミザールはそれに応じ店の外の通りへと出た。

 賞金稼ぎと騎士の喧嘩ということで、物珍しさからか周囲を歩いていた者達も集まってきた。

 二人を囲むように十数人の野次馬が輪を作る。


「俺が勝ったら、オレサマとケイトの食事代を払ってもらうぞ!いいな!」


「勝った方が相手の代金を持つってことか!おもしろい!」


 その声と共にウェーダーがミザールに殴り掛かった。

 拳を左腕で受け流すミザール。

 だが、衝撃で吹き飛ばされ酒場の壁に叩きつけられてしまう。


「どりゃ!」


 酔いによりハイテンション状態になってしまったウェーダー。

 左手を握り締め、肩より上の高さで手の甲を正面に向け、ガッツポーズをとりミザールを挑発する。

 しかし所詮は酔っ払い、その姿は隙だらけだ。

 壊れた壁板の破片を拾い上げるミザール。


「うるせぇよ!」


 ミザールはウェーダーの謎ガッツポーズの隙に、全身の力を込めて彼に体当たりを食らわす。

 突然のことに回避も出来ず、体当たりを喰らったウェーダーは派手に尻餅をついてしまう。

 空にミザールは素早く屈み込んで、街路樹の砂を握りしめる。

 そしてウェーダーの両眼に向け、砂を放り投げた


「ずおぉぉ!?」


 砂の入った眼を右手で擦りじたばたと暴れるウェーダー。

 その隙に先ほど拾い上げた木の破片でミザールが殴り掛かった。

 壁板というだけあってそこそこの長さのものだ。


「オラァ!」


「なめんじゃねー!」


 そう言ってミザールを蹴り飛ばすウェーダー。

 再びミザールが飛び掛かるも、また吹き飛ばされる。

 それを何回か繰り返すこと数分。

 あまりにも見苦しい喧嘩に飽きれて、野次馬たちもだんだんと離れていった。

 最終的にその場に残ったのはアズサとメノウ。

 そしてミザールの連れの少年であるケイトだけだった。


「酔っ払いとバカの喧嘩ね…」


「ワシは見てて楽しいぞ」


「あの、なんか…すみません!」


 そう言って二人に頭を下げるケイト。

 しかし今回の喧嘩の発端はウェーダーにも原因はある。

 別にミザールのみが悪い、というわけでは無い。


「あ、謝るのはこっちの方だって!ウチの酔っ払いが…」


「本当にすみません…」


「…そう言えばさっき『お祝い』って言ってたけど?」


「ああ、ミザールの昇進祝いです、騎士団の…」


 アズサとケイトがそんな話をしている間にも、ウェーダーとミザールの見苦しい喧嘩は続いていた。

 ひたすら砂を投げつけるミザールとネックハングをひたすら狙い続けるウェーダー。


「ワシが止めてこようかのう?」


 道に座り込んで喧嘩を見ていたメノウが言った。

 これ以上続けさせても時間の無駄にしかならないのは明白。

 二人を仲裁しようとメノウがひょいっと立ち上がった。

 しかしその時…


「この場はわたしに任せてくれないか」


「なんじゃ?お前さんは?」


「ヤツの知り合いだ」


「ジ、ジルバード!?」


 ミザールを指さしながら、一人の青年騎士がメノウに言った。

 ウェーダーとミザールの間に割って入き、二人の喧嘩を止めた。

 使いこまれつつも、手入れの届いた鎧と剣。

 鎧の上からでもわかるほどの、引き締まったその身体。

 ミザールと同じくザリィール帝国騎士団の鎧を纏い、どこか清廉さを感じさせる男だ


「ミザール、何をしているんだ。こんな街中で」


「え、いやオレサマは…」


「仮にもザリィール帝国騎士団に所属する者が一般男性に拳を振るうなど…」


「だけどあいつはならず者だ!」


「ならず者…?」


 ミザールに『ジルバード』と呼ばれたその男は、彼をなだめ次に視線をウェーダーに移す。


「あーはきそ…オロロロロロロロ!」


「…う、うーん?」


「絶対ならず者だって!」


「あーさっぱりした」


 吐いて楽になったのか少し平静さを取り戻したウェーダー。

 酔いを醒ますため、水をもらいに店に入って行った。


「まぁ…いいか。ところでジルバード、なんでここに?」


「ああ、ちょっと知り合いに呼ばれてな」


「知り合い?」


「私だ」


 そう言って現れたのは、酒場の二階で仮眠をとっていたスートだった。

 先ほどの騒ぎで眠れなくなってしまい、ちょうど外に出てきたところだったようだ。


「お久しぶりです、ジルバード殿」


「スートさん、貴方と最後に会ってから一年になりますか」


「ええ」


 軽く挨拶をかわしつつ、ジルバードに何かを伝えるスート。

 それを聞くとジルバードはその場にいたメノウ達に言った。


「皆さん、わたしについてきてください」


「わかったぞぃ」


「ミザール、ケイト、君たちもだ」


「ぼ、僕たちも?」


 ケイトが豆鉄砲を喰らったような顔で言った。


「ここで会ったのも偶然とは思えない」


「いいですけど一体どこへ…?」


「王女の下へだ」



--------------------



 ジルバードに案内されたどり着いた場所。

 それは裏路地を抜けた先にある、古びた小さな教会だった。

 しっかりとした造りだが、薄汚れた壁と雑草の生い茂った庭園。

 長い間放置され、もはや廃墟同然の建物だ。


「汚い教会だな、こんなところに何の用があるんだよ」


「ここで待ち合わせということになっているが…」


「本当かよジルバード?」


「私も詳しくは聞いていないんだ」


「そうかよ」


 ミザールが教会の鉄柵を蹴り飛ばしながら言った。

 軽く蹴ったつもりだったのだが、錆びついた鉄柵は簡単に折れ、崩れ落ちてしまった。


「うわっ!?」


「あ、ミザール!」


「わ、わざとじゃねぇよ!オレサマがそんな…」


 本来ならば責められるべき事象だが、他に仕えそうな入り口も無かったため、崩れた鉄柵から一行は敷地内に入った。

 手入れのされていない庭園を進んでいく。

 と、そこでメノウがあることに気付いた。


「何か聞こえるな…?」


「…気のせいじゃないみたいだな」


 メノウだけでは無くウェーダーにも何かが聞こえたようだ。

 本来ならば誰もいないはずの廃墟同然の教会。

 しかしその中から何かが聞こえてくる。


「何かの楽器みたいだけど…?」


「パイプオルガンの音色ですね、アズサさん」


「そうなの?ケイトくん」


「ええ、けどこんな古い教会で…?」


「入ってみればわかるわよ」


 そう言ってアズサが教会の扉を静かに開けた。

 古びた室内、所々跳ね上がった木製の床。

 ヒビの入ったガラス。

 一目見て廃墟と言い切れるであろう教会。

 しかしオルガンの音はなり続ける。

 本来ならばいないはずの『修道女』が、オルガンを演奏をしていたのだ。


「こんな廃墟にシスター…?」


「ケイト、シスターってなんだ?」


「ミザールは黙っててよ…」


 彼女の奏でる美しい音色が教会を包み込む。

 しかし今はそれを聞いている時では無い。

 失礼を覚悟でメノウが演奏を続ける彼女に話しかけた。


「すまないがちょっといいかのう?」


 メノウの言葉を聞き、その修道女は演奏を止めた。

 先ほどまでとは打って変わり、静寂が辺りを包み込む。


「待ち人を探しているのじゃが…」


「そうですか」


 椅子から立ち上がり、段の上からその修道女がメノウ達に目を下ろした。

 割れた天窓から日の光が差し込み彼女を照らす。

 その少女の顔はスートとジルバードが…

 いや、ミザールとケイトもよく知る者の物だった。


「お、お前は!」


 修道女の姿を借り皆の前に現れた少女。

 それこそが王女である姫だった。

 そう遠くない未来、この国を背負うことになるであろうその少女。

 まだどこか幼さを残しながらも威厳に満ち溢れたその姿。

 肩までのミディアムヘアと黄金色のカールが、教会内に舞い込んだ一陣の風に靡いた。


「ええ、私が王都セインツブーストの王女、『サフィーネ』です』



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