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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第五章 復活の魔王軍…!?
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第八十話 切り裂け!疾風の裂脚

「隠れていないで出てこい!」


「あ~あ、見つかっちゃったぁ」


 切断された遺跡の残骸の影から現れたのは一人の少女だった。

 ひどく白く冷たい肌の色。

 それらのせいでどこか病的な雰囲気が漂っていた。


「お前さん、魔王軍の残党か?」

 

 極東拳の構えを少女に向けるメノウ。

 一見するだけでは、単なる少女にしか見えない。

 だが自分と同様に魔法無効化の力を持っているかもしれない。

 ならば、魔力の介入する余地のない極東拳の奥義が今使うには最適。

 メノウはそう考えた。


「そそ、アニスは魔王軍の一員なのでありますっ」


「アニス…それがお前さんの名前か…」


 今メノウの前にいる、アニスという少女。

 ただ彼女と対峙しているだけにもかかわらず、メノウの身体に悪寒が走る。


「お前さんがスート達を操っていたんじゃな」


「魔王軍は人手不足、メノウちゃんを仲間にするためには仕方の無かったことなのです」


「何故にワシを狙う?」


「アニス知ってますよぉ。南ザリィールのガイヤと悪戯狐ミサキ、東ザリィールのオオバを倒したのがメノウちゃんってこと」


「なッ…!」


「魔王軍への協力者を探すこと、それが目的なのです」


 南ザリィールの事件はともかく、オオバとの戦いは当事者であるメノウとカツミ、そして四聖獣士であったザクラとビャクオウしか知らないはずだ。

 何故そのことをこのアニスという少女は知っているのか。

 その疑問にはヤクモが答えた。


「私が教えたんですよ」


「ヤクモ!お前さんが!」


「私は元々、魔王軍と繋がっていたんですよ。南ザリィール四重臣として活動していた時からね…」


 無能を傀儡の軍閥長とし、南ザリィールを実質的に支配下に置く。

 そして裏では魔王軍への協力者を探し出す。

 それが数年前のヤクモの狙いだった。

 しかし、権力を持ったイーガリスの暴走による圧政。

 メノウの戦いや、元四重臣の猫夜叉のミーナの裏切り、黒騎士ガイヤの死亡。

 その他諸々の理由が重なり、その計画は失敗に終わった。


「当初の計画は失敗しましたが、確かに成果はありましたよ」


「おっと、残念じゃがワシは仲間にならんぞぃ」


「ふふふ、そうですね。それは分かっています」


 そう言うヤクモ。

 彼の言葉の後に、アニスが言う。


「メノウちゃんは可愛いから、戦力兼ペットがわりにアニスの手元に置いておきたかったのです」


「だから仲間にはならんと…」


「わかっています。アニスのものにならないものは…壊すしかありません!」


「ならば、ここで戦うか!?」


「まさかっ。アニスは戦うのは嫌いなのです」


 アニスはどこからか取り出した小さな犬の人形をメノウに見せる。

 大きさは片手で持てる程度、その人形を地面に置いた。

 麦藁を編んで作られた人形だ。

 武器か何かを取り出すかと思えば、出てきたのはただの人形。

 特別な仕掛けなども無さそうだ。


「…なんのつもりじゃ?」


「メノウちゃんの相手はこれにまかせるのです」


 そういうと、その麦藁の犬の人形に魔力を込めるアニス。

 その麦藁の人形はどんどんと巨大化し姿を変えていく。

 そして大きな魔物の姿へと変わっていった。

 以前、東ザリィール戦った、ビャクオウの操る白虎型魔物と大きさはほぼ同じ。

 これは完全な推測だが、あちらと戦闘能力はほぼ互角だろう。


「…これはッ!」


「アニスのコレクションの一つなのです」


「魔物の一種か…?」


「時間が無いので今日はとりあえず帰るのです。またね~」


 その声と共に、アニスはその場から姿を消した。

 同時にヤクモの姿も消えた。

 恐らく彼の技の一つである、縮地法を使ったのだろう。

 アニスの残していった犬の魔物。

 元が人形とは思えぬ猛き声を上げ、メノウに襲い掛かる。


「…ッ強化水壁(ウォーターバリア)!」


 強化水壁(ウォーターバリア)をバリア代わりにし攻撃を防ぐメノウ。

 先ほどの三人との連戦、そしてこの魔獣との戦い。

 療養生活を送っていたメノウにとっては、久しぶりの激しい戦いとなる。


「久々の戦いがこれほどのものになるとはのぅ…」


 そう言いつつ構えを取り、魔獣と距離を取るメノウ。

 謎の組織、魔王軍との戦いが始まった。

 アニスが造りだした犬の魔物。

 元々はただの犬の麦藁でできた人形だが、魔力が加わることによりその姿は豹変。

 恐らく、かつて東ザリィールで戦ったビャクオウの操る白虎型の魔物と大きさ、戦闘能力は共に互角だろう。


「すぐに終らせるぞぃ!疾風(しっぷう)裂脚(あし)!」


 犬の魔物との距離を一気に詰め、疾風(しっぷう)裂脚(あし)を放つメノウ。

 所詮は麦藁でできた人形が変異した魔物、この技を当てることが出来れば十分に倒せる。

 そう考えての行動だった。


『…避ケル!」


 その大きさからは想像できぬ速さでメノウの攻撃を回避する犬の魔物。

 体勢を立て直しメノウに飛び掛かった。

 全身の毛がまるで針のように尖り、仮に受け止めたとしても多大な傷を負うだろう。

 当然この攻撃は避けるしかない。


『オ前、速イ…』


「まぁの」


『攻撃スルカ?』


 単なる操り人形という訳では無い。

 この魔物には知性があった。

 とはいえ、単純な受け答えができる程度ではあるが。

 どうやらあのアニスという少女、かなり強力な魔法の使い手らしい。


「…素手での攻撃はさすがにキツイのぅ」


 かつて西ザリィールで全身の装甲に刃を仕込んだ飛竜型の魔物と戦った際、メノウはその刃ごとの魔物を破壊。

 大破とまではいかなかったが、ほぼ戦闘不能にまで追い込んだことがあった。

 しかしその戦いの後しばらくは傷のせいで、腕もまともに動かせぬ状態となってしまった。

 流石にあの時のような無茶をもう一度することはできない。


「もう一度!疾風(しっぷう)裂脚(あし)!」


 再び疾風(しっぷう)裂脚(あし)を放つメノウ。

 だが当然、先ほどと同じく軽く避けられてしまう。

 記憶だけを頼りに再現した付け焼刃のコピー技では、本家の技のキレのまでを真似ることはできないようだ。

 しかしそれがメノウの狙い。


「最初のは囮、次の疾風(しっぷう)の…!」


『ヌッ!』


「あ…ちょっと!」


 わざの構えに入る途中で超スピードでその場から離脱する犬の魔物。

 急いでメノウもその後を追う。

 廃墟と化した建物群に姿を隠しつつ、彼女の様子をうかがう。

 探しに来たメノウを待ち伏せして攻撃をする気だろう。


「(…来るか!)」


『ガァァッ!』


 廃建物の壁を突き破り、犬の魔物が雄たけびを上げメノウに襲い掛かった。

 それを避け反撃に転じようとメノウが体勢をとる。

 しかし、それと同時に再び犬の魔物は別の廃建物へと姿を隠した。

 建物の内部をさらに高速で動き回っているらしく次はどこから現れるのかが分からない。


「(地形を生かした戦いか…!)」


 あの巨体で建物の中を移動できるとは思えない。

 犬の魔物はある程度、自身の大きさを操作できるのだろう。

 魔力で生み出された魔物であるが故にできる芸当だ。

 それに加えこの『廃墟』という地形。

 メノウにとって、非常に戦いにくい条件が重なり過ぎている。


「(次はどこからくる…?右か…左か…)」


『上ダ!』


 叫び声をあげながら、犬の魔物が廃墟の建物の上階からメノウに飛び掛かった。

 メノウにとってこの攻撃を避けるのは容易いこと。

 しかし、たとえ避けたとしても再び犬の魔物は建物を隠れ蓑にして攻撃を続けるだろう。


「たとえ傷を負ったとしてもここで倒すしかないな」


 地を蹴り、宙にいる犬の魔物に向かいメノウが飛び掛かった。

 空中ならば互いに自由は効かない。

 相手の攻撃も受けることになるが、自身の攻撃も確実に当てることが出来る。


『グアァァァッ!』


幻影(ファントム)光りゅ…」


『イマダ!』


 メノウが攻撃態勢を取ったその瞬間、犬の魔物がメノウの眼に向け攻撃を放った。

 自身の尖った針のような毛を矢のようにし、狙い撃ったのだ。


「うおお!?あぶなっ…」


 首を捻りギリギリのところで避けることが出来た

 そのせいで幻影光龍壊の構えに乱れが生じてしまう。

 だが中断すれば、攻撃の的となる。

 不発覚悟で幻影光龍壊を放つ。

 二人がほぼ同時に空中で攻撃を放ち、その後地面に降り立つ。


「どうなった…?」


『グゥゥ…』


 メノウの幻影(ファントム)光龍壊は外れた。

 だがその際に発生した衝撃波と真空波が、犬の魔物の左半身を抉った。

 抉られた個所から犬の魔物の魔力が漏れ出す。

 恐らくこのまま持久戦に持ち込めば魔力切れでメノウが勝利できるだろう。


「ワシの攻撃は外れたが、傷は与えられたようじゃな」


『ウ…オォ…』


 止めを刺すべくメノウが再び攻撃の構えを取る。

 だがそれよりも一歩速く、犬の魔物は動いた。

 だが、メノウに攻撃をするためでは無い。

 狙いは…


「しまった!」


 犬の魔物の最後の狙い、それは倒れているスート達を人質に取ること。

 真は矢正面からの戦いではメノウに勝つことは不可能。

 それを悟ったのだろう。

 メノウのスピードでは、死力をかけ地を駆ける犬の魔物に追いつくことはできない。


「届け!疾風(しっぷう)裂脚(あし)!」


 メノウの攻撃も犬の魔物には届かない。

 それでも彼女は追いかけるしかなかった。


「届かなかった…」


『ガァァ!』


「(せめてまだ戦える者がいてくれれば…)」


 今までメノウはずっと仲間と共に戦ってきた。

 だが今回は違う。

 オオバとの戦いのときのように、カツミも助けには来ない。

 この状況では最悪の事態を想定せざるを得ない。

 だが…


「あれは…?」


 走る犬の魔物の前に突如現れた一人の小柄な人物。

 全身を灰色の布とマントで覆い、素顔も見えない。

 その佇まいから恐らく少女であると思われるが、真相は分からない。

 敵か味方か、『ソイツ』は唐突に表れた。

感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

また、この小説が気になった方は応援していただけると嬉しいです!

今後もこの作品をよろしくお願いします。

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