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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第五章 復活の魔王軍…!?
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第七十九話 暗躍の魔王

 


「メノウさん、貴女は私達『魔王軍』の障害となりうる者。仲間にならないのならば、消えてもらうまで!」


 スートの言い放った言葉、その中に含まれる『魔王軍』という単語。

 それが何かはメノウには分からない。

 だが、それが重要なキーワードであるということは分かる。


「ん…?魔王軍…?魔王…!」


『魔王』という言葉を聞き、メノウはあることを思い出した。

 それは数年前、カツミと東ザリィールを旅していた時のことだ。

 大羽との戦いの後、ずっと入院していた二人はある日、街で行われていた『祭り』を目撃した。

 その祭りの名は『魔王封印祭』、毎年ザリィール帝国中で行われるという催しだ。

 約百年前に魔王を封印したことを祝う祝祭だと地元の者から聞いた。


「まさかあの…?いやまさか…」


「魔王をこの地に呼ぶのは数年後、今はまだ準備期間というわけです」


 ヤクモが静かな口調で語る。

 カードを弄りながらも、その行動と語りには隙が無い。


「さぁ、メノウちゃん、アナタも私たちの仲間になる気になった?」


「俺達と共に来れば、このような素晴らしい力が手に入るぞ」


 アズサとウェーダーが言った。

 軽く四人を見回しメノウが言った。

 彼女の答えは…


「当然、断る!」


 その叫びと共にメノウは地面を…

 いや、今立っている『遺跡の屋上』に拳を振りかざした。

 先ほどのヤクモのカードの爆発により僅かにできていた亀裂。

 その部分に拳を入れ魔力を瞬時に送り込む。

 メノウの立っていた部分のみが砕け、彼女は下の階へと脱出した。


「な…」


「姑息な手を…追え!」


 悔しそうな表情を浮かべながらスートが叫ぶ。

 攻撃に対する反撃は想定していたが、このような方法での逃亡は想定外だった。

 ウェーダーとアズサがメノウを追う。


「さっさと降参した方が身のためだぜ!」


 そう言いながら遺跡の一室でメノウに殴りかかるウェーダー。

 拳を避けても、そこから放たれた衝撃波が彼女を襲う。

 遺跡の壁に叩きつけられ、その場に倒れかける。


「次の攻撃は喰らわん!」


「チッ…!」


 追撃をギリギリで回避し、反撃の一撃を彼の腹に向けて放つ。

 大した攻撃では無かったが、今の一撃により、彼と距離を取ることが出来た。

 その隙に遺跡から出るメノウ。


「…もしかして」


 今のウェーダーの攻撃の受け方を不審に思うメノウ。

 大した攻撃ではないとはいえ、一般人がメノウの攻撃を受ければ間違い無くなんらかのダメージを負うはずだ。

 傷は追わないまでも気絶くらいはするだろう。


「考え事?随分と余裕ね!」


 そう言いながらメノウに向けて分銅鎖を投げつけるアズサ。

 左腕を鎖で拘束され攻撃の自由が奪われる。


「うっ!?」


「追い詰めたぜぇ、メノウ!」


 さらにそこに再びウェーダーが現れる。

 鎖でメノウの左手の動きを封じられている今、先ほどの様に上に逃げることはできない。


「どう?私達と一緒に来る気になった?」


「だから言ったじゃろう、『断る』とな」


 メノウがアズサの誘いをざっくりと切り捨てる。


「だってさ、ウェーダー」


「そうか、じゃあここで消えてもらうしかないな」


 ここにきてメノウの疑惑が確信に変わった。

 この二人の様子は最初からどこかおかしかった。

 態度、力、そして魔王軍…


「(この二人からは自分の意思が感じられん…!)」


 まるで魔物か何かと戦っているような感覚。

 いや、本能で戦う分魔物の方がまだ意思のようなものを感じられる。

 だがこの二人からはそれすら感じられない。

 与えられた命令を遂行するだけの人形。

 言い表すのならばまさにそれだ。


「(この二人は何者かに操られている…!ならば、その繋がりをここで断つ!)」


「終わりよ!」


「死ね!」


「死なんわ!お前さんがこっちに来いほら!」


 アズサの分銅鎖を勢いよく引き寄せ、彼女の攻撃を中断させる。

 そしてそのままの勢いでそれを振り回し、ウェーダーに激突させた。

 悲鳴を上げその場に倒れこむ二人。

 今なら二人から反撃を受けることは無い。


「二人とも元に戻れ!クリアセオリー!」


 洗脳、暗示、先入観。

 その他諸々を無にするメノウの魔法『クリアセオリー』、普段ならは被術者に触れなければならないが今回は例外だ。

 アズサの分銅鎖を伝わり二人に直接魔法をかけることが出来た。

 クリアセオリーを受けた二人は意識を失いその場に倒れた。


「あの二人がやられるとは…」


 以前、西ザリィールで出会った時よりもメノウは遥かに強大な力を手に入れている。

 それを確信したスート。

 あの事件から約一年でこれほどの力を身に着けるとは俄かに信じがたい。

 だがこの光景を目にしては信じるしかない。


「次はお前さんじゃ」


「くっ…!」


「いいのか?ワシに魔法攻撃は効かんぞ?」


 魔導杖を変えるスートに対しメノウが言い放つ。

 ドラゴンの力を持つメノウに対して魔法効果は全て無力と化す。

 自分以外の魔力を全て打ち消す、ドラゴンの特異能力によるものだ。

 このことを知る者は、カツミ以外殆どいない。

 しかしスートはそれをハッタリなどでは無く事実だと見抜いた。


「ならば!」


 その声と共に魔導杖から隠し刃が飛び出した。


「仕込み刀!?」


「その通り!そして『硬の66』…!」


 さらに、スートは刀身を対象に吸熱魔法を使用。

 メノウ自身に魔法は効かない。

 だが、魔法を使用した攻撃は有効。

 氷刀と化した仕込み刀を手にメノウに斬りかかった。


「(…やはりこやつも)」


 当初、メノウはこう考えていた

『スートがウェーダー、アズサ、そしてヤクモを操っている』、と。

 しかし彼と対峙してそれが間違いであることに気が付いた。


「(本当に操っているのは…)」


「どうしましたか!?反撃の手でも考えていますか?」


「お前さんの相手をしている暇は無い!『強化水壁(ウォーターバリア)』!」


 水の壁を生み出す魔法、強化水壁(ウォーターバリア)

 それをスートに対して使用し、彼を水の壁の中に閉じ込める。

 水とは言えその強度はかなりの物。

 並みの通常兵器の攻撃でも数発ならば耐えてしまうほど。


「これで攻撃を封じたつもりか!」


 凍気を纏った刀を強化水壁(ウォーターバリア)に突き刺すスート。

 それと同時に徐々に、水の壁が凍り始める。

 所詮は水、凍ったあとに軽い衝撃を当てれば軽く砕けてしまう。

 だがこれこそメノウの狙い。


「刀を水の壁に突き刺したな?」


「…は!」


 金属は魔力を伝達する。

 そして強化水壁(ウォーターバリア)により発生した水の壁はメノウの魔力により生み出されたもの。

 仕込み刀の柄は木製だがその程度なら問題なく魔法を通すことが出来る。


強化水壁(ウォーターバリア)の魔力を全てクリアセオリーに変換させてもらうぞぃ!」


「しまっ…」


 急いで刀を引き抜こうとするも既に凍り付いているためそれは不可能。

 手を離す、その考えが思い浮かんだ時にはすでに手遅れだった。


「クリアセオリー!」


「うぉッ!?」


 水の壁が消滅しクリアセオリーの魔力に変換される。

 先ほどの二人と同様、スートもその場に倒れた。

 これで三人は元に戻った。


「さて、次は…」


「ふふふ、私にもそれを使いますか?」


「いや」


 一連の戦いを眺めていたヤクモにメノウは目を向ける。

 スートが操っていたわけではないのならば、真に操っていたのは彼ということになるが…


「お前さんは正気じゃろう?」


「そうですよ」


「しかしお前さんがあの三人を操っていたわけでもない…」


「そこまで見抜きましたか…」


「あの三人を操っていたのは、貴様じゃ!」


「そこは…!」


「極東奥義『疾風(しっぷう)裂脚(あし)』!」


 脚部から放たれた斬撃で、ヤクモの後方にあった変電設備を両断したメノウ。

 かつてカツミの使用した極東拳の奥義『疾風(しっぷう)裂脚(あし)』、蹴りと共に脚部から斬撃を放つ、基本的な奥義だ。

 技の名前こそカツミは叫ばなかったが、彼女が多用していたためメノウもそれを真似ることが出来た。

 その狙いは…


「隠れていないで出てこい!」


「あ~あ、見つかっちゃったぁ」


 切断された遺跡の残骸の影から現れたのは一人の少女だった。

 ひどく白く冷たい肌の色。

 それらのせいでどこか病的な雰囲気が漂っていた…


感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

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