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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第四章 囚われの少女を追って…
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第七十五話 『光龍壊』がもたらす勝利

 オオバの放ったメノウへの攻撃が空を切る。

 あの状況で外すなとまずありえない。

 メノウがとっさに回避した訳でもない。

 攻撃の手を止め、冷静に辺りを見回す。

 そこでふとあることに気付いた。


『風…?』


 先ほどまで風など吹いていなかった。

 不気味なほどの『静』の空間の中で戦っていたのだ。

 しかし今は違う。

 風が吹き、この戦場に『動』が戻った。


「無理じゃない、勝つんだよ…!」


 そして彼女はこの場に現れた。

 風と共に現れた少女、カツミ

 たった一人で戦い、その心が今にも折れかけていたメノウにとって、これほど頼もしいものは無い。

 しかし彼女にはツッツを病院へ送ってもらう様に頼んだはず。

 そのことについて尋ねようとしたメノウにカツミが言った。


「ツッツはヤマカワさんに託してきた」


 以前メノウと戦ったカツミの兄弟子、サガ・ヤマカワ。

 あの戦いの後、カツミ達の戦力になるため独断でメノウとカツミを追っていたという。

 港町で聞き込みをしていたヤマカワと出会ったカツミ。

 その彼にツッツを任せ、戻ってきたのだ。


「そうか…」


「それにしても、とんでもない化け物と戦ってるみたいだな」


 さすがのカツミも思わず息を飲むほどの強大な敵、魔竜オオバ。

 禍々しくも雄々しいその姿にただただ驚きの感情を隠せない。


『遥か未来の世界にて君は友を見つけたか…』


「ああ、ワシの大切な友達じゃ」


 オオバの言葉を軽くいなすメノウ。

 一見何ともない言葉の応酬。

 だが、カツミは一瞬の隙を見せたオオバにすぐさま攻撃を放った。

 空へ飛び上がり、足から通常時に放つ斬撃波を二発、小手調べとばかりに放つ。


『まだ話している途中だろう?』


 避ける素振りすら見せず、カツミの斬撃波をその身で受けるオオバ。

 だが鉱石のように硬い外皮の前に、その攻撃は意味を成さなかった。

 傷をつけることすら出来ずに、二発の斬撃波はオオバに当たると同時に消滅してしまった。


「見た目通り、防御は高いか…」


 カツミは以前、肉食恐竜に同様の斬撃波を放った事がある。

 相手が外装甲を身に纏っていたというだけに、その時は表面をへこませるにとどまった。

 今回も攻撃が効くとは最初から思ってはいなかった。

 だが、全く効かないというのはさすがに予測できなかった。


『東洋の少女よ、悪いが君に用は無いのだ』


「なんだと?」


『私はこの子に話がある。静かにしてくれないかな』


 そう言うと、鞭のようにしなるドラゴンの尾でカツミを吹き飛ばすオオバ。

 何とか受け身を取ろうとするが、衝撃波をまともに受け、城の壁に叩きつけられてしまう。


『…意外にやるようだ』


 城の屋上に置かれていた補修用のレンガの山、それをカツミに投げつけるオオバ。

 彼にとってこの攻撃は、単に近くに置かれていた物を投げつけるだけのものにすぎない。

 しかし、カツミにとっては違う。

 煉瓦の塊が超高速で飛んでくるのだ。

 当たれば即死だ。


「なっ!?しま…」


強化水壁(ウォーターバリア)!」


 水をバリア代わりにし、カツミを攻撃から守ったメノウ。

 近くの貯水タンクから水を使うことが出来たのが幸いだった。

 その水を大量に使うことによってかなり強力な水のバリアを使うことができた。

 水のバリアに激突した煉瓦はそのまま砕け散った。

 多少の衝撃波は来たが、ダメージを受けることは無かった。


「助かったよ、メノウ」


「いや、このくらい当然じゃ」


『このようなものを防いだ程度で歓喜の声を上げるとは…』


 小手調べ未満のただの投擲を防いだだけで一喜一憂する二人を見て落胆するオオバ。

 どうせ戦うのであれば、せめて自分を楽しませるくらいのことをしてもいいのではないか。

 そう思うが、今の二人にそのようなことを期待するのは間違いだろう。


『これ以上戦いをつづけても下らぬ時間稼ぎをするだけだろうな』


 そう言うとオオバは勝負を終わらせるべく攻撃を放った。

 メノウ達にでは無い、今自分たちの立っているこの戦場である屋上。

 そのガラスとなっている部分にだ。

 この城は採光のためにガラスでできた部分がかなり多くなっている。

 屋上にもガラスが一部使われているのだ。


『君たち二人の立っている場所にはガラスが使われている。少し力を込めればすぐに壊れる』


 そう言いながら片足に力を込め、屋上を思い切り踏みつけるオオバ。


「うお!」


 その際に発生した衝撃波と揺れによりその場に倒れかけるメノウとカツミの二人。

 それと共にひび割れが屋上に広がり始める。

 オオバの狙い、それはこの屋上をメノウとカツミごと崩落させること。

 魔力を使い城の上階ごと消滅させることも出来たが、二人の余りにも無様な戦い方にそれすらする気が起きなかった。

 メノウに魔法は効かないため、直接消滅させることはできないが…


「ヤバいッ!」


 そう言ってヒビのまだ入っていない場所へと飛び移るカツミ。

 メノウもそれに続こうとするが…


「あッ…!」


 メノウが飛ぼうとした瞬間、彼女の足元が崩れた。

 飛び移るにも崩れた足場ではそれをすることも出来ない…


「メノウ!」


「カツミッー!」


 この床の下はそのまま吹き抜けとなっている。

 つまり落下すれば一階まで直行というわけだ。

 地面に叩きつけられればまず間違いなく、骨はバラバラに砕け散る。


「ああああああッ!」


 悲鳴を上げながらメノウが闇の中に消えていく。

 照明も一切無い、暗い城の中へと叩き落とされた。

 空を切り階下へと落下していくメノウ。


「…そんな」


 こんなところから落下しては絶対に助からない。

 喪失感から、カツミの身体から力が抜けその場に崩れ落ちる。


『どうする、このまま戦いを続けるか?それとも…』


 メノウが消えた今、戦いを続けても勝ち目はない。

 オオバにはカツミの攻撃のほぼ全てが通用しないからだ。


「…ハッ!」


 特大の斬撃波を放つも、翼から放たれた衝撃波にかき消されてしまう。

 これ以上の威力の技となるとどうしても隙の大きいモノになってしまい、このような場所での使用はほぼ不可能。

 カツミがオオバに対抗する手段は、もう存在しない。


「クソ!」


 その場に大の字になり倒れるカツミ。

 先ほどカツミは、メノウに対し『勝つ』と言った。

 だが、その言葉が自分でも信じられなくなってしまった。

 勝てるわけが無い。

 彼女の心は既に折れかけていた。


『これが正真正銘の結末、だな…』


 そう言ってカツミへ最後の攻撃を放つべく腕を振りかざすオオバ。

 もはや抵抗する気力も彼女には残されていなかった。

 眼を閉じ、全てを受け入れる覚悟を決める。

 だがその時…


「カツミ!そこから離れろ!」


「ッ!?」


 メノウの声が辺りに響く。

 幻聴ではない、紛れもないメノウの声だ。

 それを聞き、咄嗟にその場から離れるカツミ。

 一方、何が起きたのかわからず一瞬その場で固まるオオバ。

 カツミが離れたとほぼ同時に、オオバが先ほど開けた大穴から、この場に居る誰もが予想だにしないものが現れた。


『合成魔獣…魔物…だと…!』


 そこに現れたのは、先ほどメノウに破壊された合成魔獣。

 そして、それを駆るメノウだった。

 既に破壊されていた合成魔獣に、メノウ自身の魔力を可能な限り流し込むことにより彼女が自由に動かすことが出来るのだ。

 落下中に魔法を使用することにより、地面への直撃を避けたメノウ。

 着地した一階に倒れていた合成魔獣の残骸を利用し、舞い戻ってきたのだ。


「お返しじゃ!」


 メノウが合成魔獣に魔力を流し込み、それに反応して合成魔獣の身体が動き出す。

 青龍の後脚が一瞬でオオバとの距離を詰める。

 対する攻撃を玄武の鎧で防ぐ。

 朱雀の翼で空へと舞いあがり、白虎の爪がオオバの岩の様に固い外皮を砕く。


『ウオォッ!』


 この戦いで初めてその表情を崩す。

 体格では両者ほぼ互角、戦闘能力自体はオオバの方が上。

 だが予想だにしないメノウの行動を前に、完全に不意を突かれてしまったのだ。

 白虎の爪が腹を抉り、朱雀の羽が左腕を削る。


『調子に乗るな!』


 オオバが合成魔獣を駆るメノウに向けて、最大の必殺技を放つ構えを取る。

 それはドラゴンという生物が使う、最高の破壊力を持つブレス攻撃。

 全てを消滅させる高熱波だ。


「させるか!疾風虎狼殺!」


 メノウへの注意をそらすため、最大の必殺技である疾風虎狼殺を放つカツミ。

 その一撃がオオバの左腕を切り落とした。

 先ほどの朱雀の翼により、外皮を削り取られていたこと、そしてカツミの攻撃に対し全くの無防備状態だったのが幸いだった。

 尾で薙ぎ払い、彼女を床に叩きつける。


「ウグッ…!」


 鈍い音と共にカツミの顔が苦痛に歪む。

 恐らく数本の骨が折れたのだろう。

 先ほどの尾での一撃、そしてこの攻撃。

 いつカツミは意識が飛んでもおかしくない状況なのだ。

 しかし、それ以上の激痛を受けながらオオバは眼前の合成魔獣に目を移す。


『このガラクタがぁ!』


 怒りを露わにし、合成魔獣の右半身を、口から吐いた疾風波で破壊するオオバ。

 だが既にメノウはその場から離れ、ある細工を合成魔獣に施していたのだ。

 破壊されていた身体に無理矢理に魔力を送り混んだ結果、きわめて不安定な状態で復活した合成魔獣。

 そんな状態の合成魔獣に攻撃したらどうなるか…


「答えは一つ…じゃ…」


 オオバに攻撃された合成魔獣は内部から崩壊をはじめ、その場で巨大な爆発を起こした。

 左腕を失い、超近距離で爆発を受けたオオバだがまだその体は崩れない。

 城の細い屋根をへし折り、それを槍代わりにしメノウに投げつける。


『もう終わったのだ!一度退場した者が戻ってくるんじゃあない!』


「終わってないから戻ってきたんじゃ!」


 その攻撃を避け、最後の力を込めてメノウがオオバに攻撃を放つ。

 最初に放つも、通用しなかった幻影(ファントム)光龍壊。

 その構えから放つ技、それは…


「『幻影(ファントム)炎龍壊 』!」


 炎を纏った一撃。

 メノウの一撃がオオバのドラゴンの身体を貫いた。


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