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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第四章 囚われの少女を追って…
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第七十話 メノウの静かなる怒り

 

 大技、幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)を放ったメノウ。

 幻影の中に紛れ、一瞬の隙をつき敵を討つ。

 残像撃と光龍壊、二つの幻影技の合わせ技だ。

 メノウの放った幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)はツッツの後ろにあった廃倉庫までをも破壊した。

 辺りには瓦礫により発生した煙や、吹き飛ばされた破片で視界がとても悪くなっている。

 メノウ達、二人の姿も見えない。


「い、いくらなんでもやりすぎだろ…」


 その状況を見ていたカツミが言った。

 幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)はメノウの技の中でも最高クラスの威力を持つ。

 その威力は、直撃すれば大型肉食恐竜型の魔物ですら粉々になる。

 それをツッツに向け放ったのだ。

 彼女がそう思うのも至極当然だろう。


「甘いねぇ、お嬢ちゃん?」


「誰だ!?」


「ここだよ、ここ」


 辺りに何者かの声が響き渡る。

 カツミはその声のする方向を向いた。

 埠頭の隅の、古びたコンテナの積載施設。

 そこに『ヤツ』は居た。


『ノルタード・ハーザット』


 ツッツを狂わせた張本人、そして異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)研究のスペシャリストだ。

 静かだが、狂気を交えた喋り。

 骨が浮き出るほどに痩せたその身体を壁に寄りかからせて、カツミに語りかける。


「あの程度ではツッツちゃんは死なないんだよねぇ」


「何者だ貴様…!?」


「ノルタード・ハーザット、世界最高の科学者にして文化人さ」


「文化人だと?知るか!」


「手厳しいねぇ、見た目はいいのに性格きついのはいやだね~」


「…ツッツをあんなのにしたのはお前だな」


 それを聞き、軽く笑みを浮かべるハーザット。

 答えはYESということだ。


「ほら、見てみなよ」


 ハーザットが少し離れた場所を指を指しながらそう言った。

 その方向を見ると、メノウとツッツが再び戦いを始めていた。

 先ほどの、幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)はツッツに対して不発だったのだろう。

 無傷のツッツに対し、瓦礫の破片でメノウは身体に少し傷を負っていた。


「バカな!光龍壊はメノウの最強攻撃パターンのはず…」


「違う違う、そう言うことじゃあなくてさぁ…」


 カツミ達が話していることにも気づかず、メノウとツッツは戦いを再開する。

 大技である、幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)を避けられたからか、どこかメノウの動きにキレが無いように感じる。

 一方、大げさなジェスチャーを織り交ぜ、カツミを挑発するかのように振舞うハーザット。

 イラつきを隠せぬカツミだが、さらに話を続ける二人。


「ツッツちゃんが異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)って言うのは知ってるよね?」


「ああ、ザクラから聞いたさ」


「じゃあ問題、ツッツちゃんの異能者としての『力』って何?」


 とぼけたような態度でカツミに問いかけるハーザット。

 以前、ザクラは異能の力の有無のみを言ってツッツを攫って行った。

 東ザリィールで、一旦ツッツと再開した後も、ヤマカワとの戦いの後までは特に変わった様子は無かった。


「(ツッツの異能の力…?)」


「本当にわからないかなぁ~?」


「うるさいぞ、少し黙ってろ!」


 ツッツの異能の力、何か妙なことは無かったか。

 記憶を紐解いていく。

 寺院に行く際に、異様に疲れを感じぬツッツに違和感を感じはした。

 あの体力増強が異能の力なのか…?


「体力増強は単なる強化手術、異能の力とは関係ないよ」


 ハーザットは首を傾げ、人たち指を突き立てて左右に小さく振りカツミを挑発する。

 あまりにも安直かつ、くさい挑発に若干の苛立ちを隠せぬカツミ。

 だが、ハーザットの言うことが本当ならば、ツッツの異能の力とは一体…?


「それはメノウちゃんとツッツちゃんの戦いを見ればわかると思うよ」


 メノウとツッツの戦い、最初こそメノウが優勢だったものの、今の状況はそうとは言えなかった。

 メノウの攻撃は全てが回避され、逆にツッツにカウンターを喰らってしまっている。

 先ほどの光龍壊(こうりゅうかい)以降の攻撃全てが、かわされてしまっているのだ。


「あの攻撃を全て避けきるだと…?」


 メノウの攻撃を全て避けきる、そのようなことが可能なのか。

 攻撃の数発を何とか避けるくらいならば可能かもしれないが、『全て』というのは不可能だろう。

 その時、カツミの脳内にある記憶が蘇る。


「採石場の戦い…!」


 そう、かつてシェンとの戦いでツッツが見せた奇跡。

 青龍型の魔物の攻撃により破壊された大量の瓦礫を、メノウはツッツの助言により全て避けきった。

 時を同じくして、その場にいたシェンはその瓦礫の餌食になった。

 つまり、ツッツがいなければメノウもシェンと同じ運命をたどっていたことになる。


「…まさかツッツの能力は!?」


 カツミの導き出した答え。

 ツッツの持つ能力の正体…


『未来予知能力』


 採石場での爆散した瓦礫の回避、そして今の攻撃回避。

 それが『未来予知能力』によるものならば説明はつく。


「ある程度察しはついたかい?」


「…おい!どうやったらツッツを元に戻せる!答えろ!」


 ハーザットに飛び掛かり、威嚇の斬撃波を放ち、脅しをかけるカツミ。

 しかしハーザットは表情一つ変えずにその場に佇むのみ。


「戻す方法は、ないね」


「あるはずだ!言え!その顔ズタズタに引き裂くぞ!」


「ないない」


「…クソッ!メノウ!」


 このままでは埒が明かない。

 そう考えたカツミはハーザットを無視し、メノウの援護に向かった。

 このままツッツと戦い続ければ、彼女はなぶり殺しにされるだけだ。


「ツッツ!お前の相手はあたしだ!」


「カツミ!お前さん…」


「メノウ、一旦下がって…」


「…頼むぞぃ!」


「…ああ!まかせろよ!ヒャッ!」


 そう言いながら、衝撃波を放つカツミ。

 しかしそれも避けられてしまう。

 ツッツの注意がメノウからカツミに移る。


「邪魔しないで…くださいよ!」


「…うッ!」


 先ほどの攻撃に対する反撃を受け、別の倉庫の壁に再び叩きつけられるカツミ。

 未来予知の力がどれほどのものなのか試すため、起き上がると同時に衝撃波を乱射する。

 だが先ほどと同じく、その全てが避けられてしまう。


「数を限界まで増やしたんだぞ!それを全て…!?」


 威力度外視で、今彼女が放てる最大の数の衝撃波を放った。

 しかしその全てが避けられてしまう。

 まるであらかじめその動きを知っていたかのよう。


「全部わかるんですよ、何がどのように動くかっていうのが」


  そう言って不気味な笑みを浮かべるツッツ。

 今まで見たことも無いような表情に戦慄を感じる。

 その時、ハーザットの声が聞こえた。


「ツッツちゃ~ん!殺してもいいけど身体をバラバラにしちゃいけないよー!」


「わかりましたーご主人さまー!」


 背筋にぞっとするものを感じるカツミ。

 体勢を立て直すため、一旦距離を取りツッツから離れる。


「…ッ!」


 構えを取り、いつでも攻撃に移れる体勢をとる。

 一方、お返しとばかりにツッツが足元の小石をカツミに向けて勢いよく蹴り飛ばした。

 単なる小石とはいえ、その速度と威力は銃のソレを遥かに超える。

 何とか初発、二発目、三発目と避けていく。


「なめてんじゃねーぞ!ツッツ!」


「ははっ…」


 カツミとツッツの戦いを先ほどの倉庫の上から眺めるハーザット。

 しかしそこに…


「高みの見物とは言いご身分じゃのう…?」


 ハーザットの後ろに立っていたのは、戦いを一人抜け出していたメノウだった。

 先ほどの交代の際の一瞬の会話からメノウの真意を汲みとったカツミ。

 あえて派手な戦いをし、メノウから注意をそらす。

 この戦いにおいて、カツミはツッツとハーザットの気を引くための囮だった。

 メノウはハーザットを討つためにここに来たのだ。


「お、お前は!?」


 ここにきてようやく、今のツッツと戦っているのがカツミ一人ということに気付いたハーザット。

 油断せず、冷静に戦況を分析していれば、メノウが一人場を離れたことに気づいていただろう。

 それが出来なかったのは、ただ己の策に溺れたから。

 その一言に尽きる。


「ツッツはお前さんのせいでおかしくなった。なら…」


 そう言って右手の拳に魔力を集中させるメノウ。

 薄い赤色に染まっていく右腕。

 それを見たハーザットは彼女が何をしようとしているのかがすぐにわかった。

 彼女の眼に宿る明確な『殺意』が、彼を怯えさせる。


「ま、待て!それだけは…!」


 必死で命乞いをするハーザット。

 メノウの迫力の前に腰を抜かし、その場に倒れこむ。

 必死に言葉を取り繕い、何とか見逃してもらおうとする。

 だが、当のカツミはそんなことはに耳一つ貸しはしない。


「それだけは…なんじゃ?」


「ゆ、ゆる…」


「聞こえんよ」


 小声で、淡々と呟くメノウがゆっくりと構えを取る。

 もはや彼女の心は決まっていた。


「ここで貴様を殺すことには、一筋の迷いも無いわ!」


「ま、待て…ッ!はなせばわか…!」


「消えろッ!」


 メノウの魔力で朱く輝きを放つ拳がハーザットの身体を貫いた。


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