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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第四章 囚われの少女を追って…
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第六十三話 裏切り…!?

 

 その翌日。

 道場の外の広場にてメノウとヤマカワによる手合せが行われることになった。

 実力者であるメノウと寺院出身のヤマカワ。

 二人の試合を寺院の門下生に勉強も兼ねて見せるためだ。

 カツミはかつてヤマカワと勝負したことがあるからと今回は辞退した。


「あの人は強いぞー」


 観戦するカツミが叫ぶ。

 広場ではメノウとヤマカワが対峙。

 その周りを、距離をとった門下生たちと師範のガウドが観戦している。

 そして、ツッツと静かにそれを見ていた。


「手加減はしないぞ!」


 その声と共にヤマカワがメノウに襲い掛かった。

 空気を切り裂く真空の手刀、以前カツミも使用した開陽の技だ。

 踏み込みと同時に真空の手刀をメノウに振りかざす。


「はッ!」


 ヤマカワの手刀が空を切り裂く。

 それを回避すべくメノウも跳び上がり、空中で手刀を受け流す。

 地上に着地し、対峙する二人。

 二人の戦いが破しまった。

 このままでは周囲に被害が及ぶ。

 メノウもそれを察し、戦いの場を少し離れた位置へと変えた。

 着地し間合いを取りつつ、距離を取って行く。


「カツミの技と同じか」


 この一連の流れは以前、メララートの砂漠でカツミと対決した時と同じ流れだ。

 あの時メノウは頬に一筋の傷を負った。

 カツミの技を完全に回避できなかったのだ。

 しかし今回は違った。

 上手く回避することに成功したメノウ。


「今の技は開陽の技の中ではかなり初歩的な技の一つだ」


「ほう…」


「この技にはいくつかの上位種が存在する」


 その声と共に再びヤマカワがメノウに襲い掛かる。

 正面からの拳の連打だ。

 非常に速い速度だが、威力自体は大したことはなさそうだ。


「この攻撃を避けきれるか!?」


 平凡な単なる殴打なのか…?

 いや、そんなわけはない。

 この男がそんな平凡な一手を打つわけが無い。


「…避けるしかない!『幻影(ファントム)残像撃(シャドー)2』ッ!」


 そう感じたメノウは幻影を囮にその攻撃を全て避けきった。

幻影(ファントム)残像撃(シャドー)2』、以前メノウが青龍型の魔物との戦いで使った技の派生だ。

 以前の幻影(ファントム)残像撃(シャドー)とは違い、水蒸気により幻影を発生させるのでは無い。

 自身の魔力で幻影を呼び出しそれを囮に敵の攻撃から抜け出す。

 そして一瞬だけ自身の速度を上げるのだ。

 残像撃(シャドー)が持久戦向けの技ならば、こちらは超短期決戦向けの技と言える。

 多用はできないがあちらよりも実用性、確実性、そして戦略性においてすべての点で上回っている。


「たッ!」


 ヤマカワの拳を全て避けきったメノウ。

 最終的に彼の拳はメノウが経っていた地面に激突した。

 普通ならば自爆と笑い飛ばすだろうが、今回は違った。


「な、何!」


 ヤマカワの攻撃を受けた地面はその拳を中心に多数の巨大な斬撃痕が残されていた。

 深さは浅いが、大きさはかなりの範囲に及ぶ。

 もしこの直撃を受けていたらと考えると、とても笑ってなどいられない。

 カツミの技などと比較にならぬほどの威力だ。


「これも避けたか、中々素早いな」


 しかし冷静に考えてみると大した技では無いことに気付く。

 技など当たらなければ意味が無いのだ。

 避けてしまえばどんな高い威力の技も無意味だ。

 幸いこれらの技は以前のカツミとの戦いである程度を見切っている。

 ヤマカワの技も源流はカツミと同じ、ガウドから学んだもの。

 パターンを掴めばあとは避けることは難しくない。

 これはメノウの予想に過ぎないが、彼の実力はカツミとほぼ同じ。

 技のキレもほぼ同じ程度だろう。


「威力は高いが、避けきれぬ技では無い…」


 カツミの強さの元はその実力に加え、天才的な技のセンス、軽快な身のこなし。

 そして相手の弱点を瞬時に見抜く慧眼にある。

 確かにこのヤマカワもそれらを持ってはいるが、カツミより圧倒的に勝るとは思えない。

 部分的に勝っている点は確かにあるが、劣っている点もある。


「何を笑っている」


 ヤマカワの蹴りと共に足から放たれた斬撃波がメノウを襲う。

 カツミの愛用する腕から放つタイプの斬撃波とは違い、数倍巨大なものだ。

 しかし、そのスピードはカツミの物と比べるとやはり少し劣る。

 そこに活路を見出した。


「お前さんにこの動きが見切れるか!?」


 幻影(ファントム)残像撃(シャドー)による疑似的な多重影分身。

 カツミの前では何回か使用した技なので、もし彼女と再び戦うことがあれば見切られてしまうだろう。

 しかし初見のヤマカワにこの技を見切るのはほぼ不可能。


「高速移動…ッ!?いや、違う…!」


 この技が単なる高速移動による分身では無いことを理解するも、それへの対抗手段が追いつかない。

 下手に止めようとして攻撃をしても返り討ちに会うだけ。

 この攻撃の性質がわからない以上、ヤマカワは何もできないのだ。


「クッ…!」


 ここにきて初めて顔に焦りか見えてくる。

 それと同時にメノウも一気に勝負に出た。

 間合いを詰め、ヤマカワに幻影の一撃を放ったのだ。


「『幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)!』」


 ヤマカワの左手を掴み、力を込めその勢いのまま身体を地面に叩きつける。

 この『幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)』はシェンとの初めての戦いでも使用した技。

 あの時は幻影を纏ってはいなかったが、今回は違う。

 避けることも出来ず、まともに攻撃を受け地面に叩きつけられるヤマカワ。


「ぐ、ぐぅ…」


「じゃがさすがにもう動け…」


「それはどうかな!?」


 その叫び声と共にヤマカワが立ち上がり攻撃を仕掛けてきた。

 普通の人間がこの攻撃を受け立ち上がってきたという事実に驚きを隠せぬメノウ。

 上手く衝撃を逃されてしまったようだ。

 完全に虚を突かれ、攻撃を受けてしまった。

 メノウの腹に掌底波を打ち込んだ。


「な、何ぃ…」


 攻撃のパターンが変わった。

 突きの連打に打撃、これまでとは全く異なる攻撃に戸惑いを隠せぬメノウ。

 苦し紛れに反撃を繰り出すもそれをも棒を使った防御で避けられる。

 前半で魔力消費の激しい幻影(ファントム)残像撃(シャドー)と『幻影(ファントム)光龍壊(こうりゅうかい)』を使用してしまったことが裏目に出てしまった。


「どうだ!」


「くッ…」


 ヤマカワの一転攻勢の前にたちまち逆境に立たされるメノウ。

 これまでの戦術はメノウを油断させるためのものだった。

 あえてカツミと同じ戦術を使っていたのだ。

 そして『詰め』で自身の戦法へと切り替える。

 完全に彼の戦術を読み違えてしまった。

 そのことを悔やむメノウ。


「終わりだ!」


「く、それなら…」


 残った魔力を使い、最後の一撃を繰り出す。

 二人の攻撃はほぼ同時だった。

 ヤマカワとメノウ。

 二人の勝負、その勝利者は…


「結構…効いたぞぃ…」


「ふ、ふふ…」


 二人が同時に膝をつく。

 勝負は引き分け、となった。

 あくまで模擬試合とはいえ、その内容は限りなく実戦に近かった。

 もし本気で戦っていたらどうなっていたか…?


「いい勝負だったぞぃ。またいつか戦おう」


「ああ。いつかまた、な」


 未来の再戦を約束するメノウとヤマカワの二人。

 それを見ていた門下生たちも二人の戦いに興奮を隠せずにいた。

 その興奮を胸に寺院へと戻っていく門下生たち。

 試合の後片付けのために数人がその場に残った。


「いやあいい勝負だったな。こんどあたしもヤマカワさんと戦ってみようかな?


「ふふ…」


「でもちょっと加減してほしいよな。地面がすごい抉れてるぜ」


「そうですね…」


 それを見ていたカツミが嬉しそうに言った。

 二人とも無事に終わり、ほっとしているのだろう。

 一方、ツッツはそんなカツミとは対照的に非常に冷静淡々としている口調で呟いた。

 二人がメノウの下に駆け寄る。


「ありがとう、メノウ。感謝するよ」


「ワシも…な。まぁ、勝ったのは嬉しいことじゃ」


「そうだな。ツッツもそう思うだろ?」


「そうですね…確かに嬉しいですね…」


 ツッツの言葉が不思議と心に響く。

 それと共に、先ほどまで鳴いていた虫たちが一斉にその声を止める。

 不気味な静寂が辺りを包む。

 そして…


「…ッ!」


「カツミッ!あぶな…ア゛ッ!」


 ツッツの放った手刀がカツミを…

 いや、彼女を庇ったメノウを貫いた…


感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

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今後もこの作品をよろしくお願いします。

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