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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第四章 囚われの少女を追って…
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第六十二話 我が名はヤマカワ!極東の技を持つ男

 メノウ達が寺院を訪れてから『一週間』が過ぎた。

 敵の追っ手が来ないか、最初の数日はメノウ達も警戒していた。

 以前のビャクオウのこともあるため油断はできない。

 しかし、今回は特に敵らしき者は姿を見せなかった。

 さすがの彼らも、この場所まで来ることはできない。

 ということか…


 ツッツはこの寺院で預かるに当たり、雑用係を任せられることとなった。

 この寺院は食料や人手もあまり足りていないのが実情。

 娘であるカツミの頼みとはいえ、いつまでもツッツを客人として置くことはできない。

 多少の労働はしてもらわなければならないようだ。

 それはメノウとカツミも同じ。

 二人は昼食を食べ終わり、寺院の近くにある滝の近くに来ていた。


「水汲みなんて修行時代以来だな…」


「まさかこんなに立派な滝があるとは思わなかったぞぃ…」


「滝行でもするか?」


 カツミがメノウに冗談交じりに言った。

 ここの滝は水量も多く、寺院の生活用水としても活用されているほど。


「メノウ、いつごろ出発する気だ?」


 水を汲みながらカツミが尋ねる。

 そしてそれを同じく水を汲みながら聞くメノウ。


「用も済んだし長居は無用だ」


「そうじゃな。あ、下山分の食糧だけなんとか用意しないといけないのぅ…」


「確かにな。いくらあたしの家とはいえ、さすがに食料まで分けてもらうのは気が引ける」


「まぁの…」


「あ、そうだ」


 そう言って滝壺の岩場に飛び移るカツミ。

 人一人が立てる程度の細く、長い奇妙な形をした岩だ。

 滝壺を見るとそのような細長い岩が何本か立っていた。


「この岩は足場代わりにこんな形になっているんだ」


「ほう」


「昔はあたしがよく修行場として使っていたのさ。よく下流の方で釣りとかもしたな…」


 そう言って辺りを見回すカツミ。

 昔のことを思い出しているのだろうか。

 それを見たメノウは、カツミの立つ岩とは別の岩に飛び移る。


「修行か…」


「どうした?」


「そう言えば、以前の約束を忘れておったな…」


  メノウがふと言葉を漏らす。

 この東ザリィールへ来る道中、メノウとカツミか交わした約束。

 それは…


「あ、『アレ』かぁ」


「そう、しばらくは時間もあるようじゃ。この機会にやってやるわ!」


「ああ、頼む!」








 ------------------------






 最初は水汲みに来た二人だったが、すっかりそれに夢中になってしまった二人。

 気が付くと既に日は沈みかけていた。

 しかし、約束の『アレ』は既に果たされたようだった。


「まさかこんなことまでできるとは…」


「どうじゃ、すごいじゃろう?もっと褒めてもよいぞ」


「ああ、ありがとうよ…」


 そう言って岩から飛び降りる二人。

 汲んだ水を少し飲み、水桶を台車に何個も乗せる。


「仕事さぼっちまったの怒られるかな…?」


「まぁ、その時はその時じゃ」


 そう言って台車に最後の水桶を乗せるメノウ。

 と、その時…


「メノウさーん!カツミさーん!」


 寺院の方向からツッツが叫びながら走ってきた。

 ただならぬ様子に二人も彼女の下へ急いで駆け寄る。


「どうしたのじゃ、ツッツ!?」


「また四聖獣士か!?」


「いえ!それが、道場破りのようです!」


「なんだと!」


「と、とにかく来てください!」


 そう言われ、急いで寺院へと戻る二人。

 一体なにがあったのか、ただ事ではないだろう。


「あ、あれです!」


 寺院前の広場を指さすツッツ。

 そこに広がっていたのは驚きの光景だった。

 修行生十数人辺りに倒れ、その中央に佇む一人の男。

 黒髪の長身、やせ形の青年だ。


「なんだ…一体…?」


 この寺院は東洋武術を知る者ならば一度は耳にしたことのある流派。

 実態がどのようなものかを知らぬものは多いが、その名を狙い道場破りをしようとする者も多いという。

 しかしその大半は、この山に阻まれそれを断念する。

 それを乗り越えてやってきた者も僅かにいたが、それも大半が撃破されている。

 だがこの事態はその逆。

 伝承者候補では無い修行生相手とはいえ、あの青年は十数人を相手にし一方的に勝利している。


「グッ…」


 その場に残ったのは、修行生の中では一応は最強の実力を持つカッカ。

 数年後、もし伝承者候補を決めるのならば真っ先にその名を上げられるだろう。

 しかし今の段階ではあくまで他の修行生より少し腕が経つという程度。

 まだその可能性を完全に開花させているわけではない。


「まさかこの程度とはな…」


 以前のカツミと同じようなことを口走る男。

 速く鋭い、そして正確な動きの拳でカッカを圧倒する。

 それを必死で避け続けるカッカ。

 彼の動きは他の修行生よりは確かに速い。

 しかしそれでも道場破りの男と比べるとかなり見劣りしてしまう。


「逃げ続けるだけで勝負になると思っているのか…!?」


「うお!?」


 男の拳を紙一重で避け、反撃の一撃を与えるべく拳を握るカッカ。

 体勢を一瞬崩し、男の攻撃圏内から外れる。

 地面ギリギリから体をバネのように伸ばして男の顎へ今持ちうる最高の攻撃を放った。


「やった!」


「…ッ!」


 一瞬油断し、目の前の相手から視線を外したカッカ。

 しかし、今の一撃が男に怒りの炎を与えてしまった。

 そんな彼の腕をつかみ、カウンターを放つ道場破りの男。

 男は、道場へ続く階段に向かって彼を投げとばしたのだ。


「危ない!」


 道場の階段は石で作られている。

 激突すれば大怪我は免れない、そう感じたメノウがカッカの身体を受け止める。

 しかし、自分より一回りは大きい彼の身体をいきなり、それも無理な態勢で受け止めるのは少々難があったようだ。

 体勢を崩し、階段ギリギリの位置でその場に倒れこんでしまった。

 だがなんとかカッカの激突を避けることはできた。


「ふぅ、何とか大丈夫だったみたいじゃな…」


「あ、ありがとうよ…悪いな、格好悪いところばかり見せて…」


 カッカがそう言いかけたその時、道場の扉を開け、ガウドが現れた。

 辺りを見回すと、道場破りの男に語りかける。


「久しぶりだな、『ヤマカワ』…」


「ふふ…」


 道場破りの男『サガ・ヤマカワ』、なにやらガウドと既知の仲のようだ。

 それも当然のこと。

 彼はかつてカツミと共に修行をした、兄弟子だからだ。


「まったく、オレがいた時より随分と軟弱になったものだ。この寺院も」


「カッカらは道場破りと言っていたが?」


「道場まで案内しろと言ったら、何故か勘違いされ襲われたんでね」


「返り討ちにしたという訳か。まったく…」


 修行生の弱さを嘆くヤマカワ。

 とはいえ、カッカたちの実力を完全に舐めているわけでは無い。

 過程を治めた自分を相手に攻撃を当てることができただけでも、大したものだ。

 ヤマカワは、内心ではそう思っていた。


「それよりも師父、カツミの奴がここにきているだろう?」


「何故それを…」


「空に輝く『龍使い座』の星が俺を導いてくれたのでね」


 意味深なことを言うヤマカワ。

 ここでの修業を終え、大陸の各地を旅していたという彼。

 たまたまこの近くを通りがかり、星に導かれるままにこの地へと再びやって来たという。

 あの修行の日々以来に。


「道場破りって言うからなんだと思ったら、ヤマカワさんだったのかー」


 そう言いながらカツミがヤマカワに駆け寄る。

 彼女にとっては数年ぶりの、久しぶりの再会となる。

 思わず笑みがこぼれる二人。


「今の修行生に『客人は丁寧にもてなせ』と言っておけ!」


「あたし達だって襲われたんだよ」


「ふふふ…」


「ははははは!」


 久しぶりの再会を喜ぶ二人。

 不思議な縁が二人を再会させた…

感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

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今後もこの作品をよろしくお願いします。

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