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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第四章 囚われの少女を追って…
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第五十九話 逃亡…?

 東ザリィール四聖獣士の一人、白虎のビャクオウからの挑戦を受けたカツミ。

 今まで出会ったザクラとシェンのことを踏まえると、所謂初見殺し的戦法をとられると非常に戦いづらくなる。

 となれば、できる限り相手のペースを崩しカツミのペースへと持っていくことが勝利への鍵となる。


「カツミ、もしいざとなったらワシが…」


 そう言うメノウをカツミが制する。

 シェンとの戦いの傷が癒えぬ今、メノウが戦うのは危険だ。

 どうもメノウとシェンは相性が悪いらしい。

 以前の南ザリィールでのミサキとの戦いと同様、ここはカツミが戦うこととなる。

 もっとも、ビャクオウもそれを望んでいるようだが。


「いや、ここはあたしがやらせてもらおう」


「…わかった」






 そして彼の指定した日時となり、カツミとビャクオウの戦いが始まった。





 もちろん、ビャクオウは魔物を従えての戦いだ。

 警戒をしつつ拳を構えるカツミ。

 ビャクオウが従えるのはホワイトタイガー型魔物、大きさは普通の虎とそう変わらない。

 こいつがどれほどの力を持っているかわからぬ今、警戒しつつ攻撃を放つ。


「(軽く様子見と行くか…!)」


 カツミが放ったのは単なる衝撃波。

 威力もそこまで高くは無いが確実に当たるように精度を高めてある

 戦う相手の強さを測るには最適な技だ。

 それを被弾したホワイトタイガー型魔物は大きくのけぞりった。


「なんだ、以前の青龍と比べたら随分と弱い…?」


『グウゥゥッ…!』


 こんどはホワイトタイガー型魔物が反撃に出る。

 その鋭い爪と牙でカツミを切り裂くべく飛び掛かる。

 しかし、それもカツミに軽く避けられてしまう。


「ホワイトタイガー型魔物では少々キツイ…か…」


 ビャクオウが吐き捨てるように言った。

 元々ホワイトタイガー型魔物は、複数体で運用する強襲タイプの虎型の魔物を改造したもの。

 確かに、幾らか出力や装甲に手を加えてはいる。

 それでも大型肉食恐竜型魔物などと比べるとその戦闘能力は遥かに劣るのだ。

 カツミは西ザリィールでメノウと共に大型肉食恐竜型魔物と交戦。

 そしてシェンの駆る青龍型魔物の戦いも目撃している。

 ホワイトタイガー型魔物に手ごたえの無さを感じても仕方が無い。


「(この分だと意外と勝負は早く付きそうだな)」


 開戦からわずか数分、既に戦いは佳境に入っていた。

 確かに普通の虎とホワイトタイガー型魔物を比べると強力ではあるが、桁外れと言うわけではない。

 その動きも速いと言えば速いのだが、カツミならば十分に眼で追える程度の速さでしかない。

 スタミナの消耗もほとんど無く、カツミは息すら上がっていない。


「倒せる、倒せますよ!カツミさん!」


 ツッツが叫ぶ。

 戦いに関しては全くの素人である彼女が見てもはっきりとどちらが優勢かわかるほどに、この勝負は一方的だった。

 カツミの腕から放たれる衝撃波や斬撃波の一発一発がホワイトタイガー型魔物を破壊していく。

 素早い動きて敵を翻弄するタイプの戦術をとる魔物なのだろうが、カツミの速さについて行けないのでは意味が無い。


「カツミ~!そのまま倒せ~!」


「ああ!」


 メノウの声援を受けたカツミが一気に決めるべく大技を繰り出す。

 両腕から放たれる大型斬撃波をホワイトタイガー型魔物めがけて放つため、構えを取る。

 これが直撃すれば確実に勝てる。

 しかしその思いがカツミに一瞬の隙を与えてしまった。


「…ここら辺が限界だな」


 それを見たビャクオウはホワイトタイガー型魔物に指示をとばす。

 もっとも、この一瞬で反撃に移しなおかつカツミを撃破するのは到底不可能。

 仮に避けて戦いを再開しても勝てる見込みは無い。

 既にホワイトタイガー型魔物は大きなダメージを負っている。

 となれば、とる戦術は一つ…


「戦いはここで終わりだ!」


 その叫びと共に、ビャクオウは懐から閃光弾を取り出す。

 そしてそれをカツミに投げつけた。

 突然の出来事に困惑するカツミ。

 メノウ達も閃光弾の光に目を思わず閉じてしまう。


「光に紛れて…攻撃してくる気か!?」


 目を閉じ、神経を研ぎ澄まし辺りの気配を探る。

 何者かが近づいて来ればその気配を掴みとりすぐさま反撃が取れる姿勢だ。

 しかし、どうも様子がおかしい。


「(…やられた!)」


 ビャクオウのとった戦術、それは『逃亡』だった。

 あのまま戦いを続けても無駄だと判断したビャクオウ、彼は逃亡の道を選んだのだ。

 初見の正統派戦士としての印象からは想像できぬ、あっさりとした結末に驚きを隠せぬカツミ。

 しかし、勝利には違いない。

 複雑な心境はさておき、とりあえずの危機を凌いだことは喜ぶべきだろう。





 その夜、メノウ達は荒野の真ん中を走る道路の脇道で野宿をしていた。

 たき火を囲み、南ザリィールで揃えた食料を食べる三人。

 適当な缶詰数個と干し肉、干し魚、そして保存用のパン。

 それらを水で流し込み、明日に備える。


「結局、あの後何も来なかったのぉ…」


「ま、そっちのほうが平和でいいけどな」


 ビャクオウとの戦いの後も、メノウ達は常に警戒を張っていた。

 以前の西ザリィールのザクラの時ように何者かが襲ってくるかもしれぬと考えたからだ。

 しかし結局、敵の追っ手が来ることは無かった。

 ビャクオウの目的は一体なんだったのか、その疑問が皆の頭から消えることは無かった。


「あのビャクオウって人は一体なにが目的だったのでしょうか?」


「う~ん…ワシにもわからん…」


「あの男、自身もそこそこの強さは持っているみたいだったな…」


 ホワイトタイガー型魔物と戦っている最中、カツミはビャクオウのことを常に監視していた。

 もし妙な動きをするようであれは、その前に何らかのアクションを起こせるようにするためだった。

 しかし、現実はそうはうまくいかなかった。

 事実カツミはビャクオウに一瞬の隙をつかれ逃亡を許してしまっている。


「もしアイツが中途半端な実力しかないのならそもそも戦いなんて挑もうとはしない…」


 ビャクオウは一瞬の隙を反撃では無く、逃亡に使用した。

 たった一瞬の間に一転攻勢か逃亡かの判断をし、それを行動に移す。

 何があっても常に冷静さを欠かさずに状況を分析する。

 下手な実力では決して出来ぬことだろう。


「よほど魔物の力を過信していたか…」


「今回はただの様子見、ということは考えられませんか?」


「そうかもしれないな、まぁ下手な力は災いの元だ。自分の力を知っておくのは悪くは無いけどな」


 これのいい例が以前戦ったシェンだ。

 彼はカラス片の落下に巻き込まれる瞬間、冷静さを失い逃げることができなかったのだから。

 青龍型魔物の力を自分の力と思い込んだが故の破滅の道。

 同情などできるわけも無い。


「そういえばワシと以前戦ったシェンは…」


 そう言ったその時、メノウは以前から気になっていた『あること』をふと思い出してしまった。

 シェンとの戦いの最期の瞬間の、ツッツの叫び。

 まるであの叫びは何かを『見通していた』かのようだった。

 あのままあの場所にメノウがいれば、岩の破片に巻き込まれず無傷でいられる。

 そう知っていたかのようだった。


「(ツッツの異能の力…まさか…?)」


 ツッツが異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)としての力を持っているのではないか。

 その考えを必死に否定しようと考えを巡らせるメノウ。

 もしツッツが異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)であることを認めてしまえば、再び彼女を危険な目に合わせてしまうかもしれない。

 自分の手の届かない遠くへ行ってしまうかもしれない、そんな気がしたからだ。

 だが、考えに考えるほど、メノウの思いとは逆の方へと進んでしまう。

 メノウの中で否定が肯定へと変わる、それを否定できずただただ困惑するのみ。


「(全てツッツが異能の力を『本当に』持っているのであれば辻褄が合ってしまう…)」


 ツッツが攫われたのは敵の間違いであり、異能の力など彼女は持っていない。

 それがメノウの考えであり、願望でもあった。

 もしツッツがただの少女であれば、このまま彼女を西ザリィールへ送り届けるだけで済んだはずだ。

 しかし、異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)であることが確実ならば話は違う。

 彼女に安息の地など存在しない、あるのは追われの身となる生活のみ。


「メノウさーん?」


「…メノウ?」


「おおぅ!?」


「どうしました?難しい顔して…」


「腹でも痛いか?」


 しばらく黙って一人で考え事をしていたメノウ、それを心配したツッツとカツミが話しかけてきた。

 二人の顔を見てふと気が抜けた。


「いや、なんでもないわい…」


 あまり複雑に考えていても埒が明かない。

 これまでの旅でも幾多の困難があったがそれを乗り越えてきたのだ。

 身体を伸ばしあくびをした後、地面に寝転がる。


「とりあえず、しばらくは東ザリィールにいることになるのぅ…」


 夜空を眺めながら、メノウが小声で呟いた。



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