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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
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第五話 刺客の少女ミーナ

 南の地区マスリの町のD基地を陥落させたメノウとショーナ。

 その知らせは直ちに国中に知れ渡った。

 あれから一週間、二人を始末すべく更なる刺客が送られた。

 しかしそんな刺客のことなど全く知らない二人。

 やがて二人は深い谷に吊るされた吊橋に差し掛かった。

 谷底には激流、もし落ちたらタダでは済まないだろう。

 幸い、吊橋は丈夫なようだ。


「見つけたよ、深緑眼の女!」


 しかし、橋を渡るメノウたちの前に『ソイツ』は突然現れた。

 そう言って現れたのは、メノウたちより少し年上といった少女だ。

 この辺りではまず見かけぬ、極東の国の物と思われる服を着ている。


「また変なのが現れたのぉ…」


「お前、何者だ!?」


 ショーナが叫ぶ。


「いや、アタシは以前アンタたちが倒したブルーシムと同じ『南ザリィーム四重臣』の一人さ」


「南ザリィーム四重臣…?知らんのぉ…」


「ブルーシムより強くて偉いんだぞぉ!」


「いや、俺は聞いたことあるぜ…」


 そう言いながら、ショーナが語りだした。

『南ザリィーム四重臣』、それはこの南ザリィームを統治する支配者の下にいる四人の戦士のことだ。

 その権力は一部限定的ではあるものの、時の将軍にも匹敵する。

 全ザリィーム国内での権限による自由な活動が許されている。

 他の東、北、西、中央のザリィームにも『似たような地位の人物』たちは存在するらしいが…


「へぇ、よく知ってるな。褒めてやるよ」


「別に嬉くねぇよーだ」


 南ザリィーム四重臣のメンバーは、以前倒したD基地の『ブルーシム』。

 今目の前にいるこの少女。

 そして後二人の謎の人物…


「かわいげのないガキだなぁ、あんただけ先に吹っ飛ばそうかい?」


 少女が手に持っている長い棒をショーナに向ける。

 だが、その時点では攻撃はせずさらに標的をメノウに変えた。


「アタシの目的はただ一人、アンタさ」


「ワシも有名になったものじゃな…」


「あれだけのことをすれば嫌でも有名になるさ」


 少女が言った。

 それと同時に手に持った棒を構える。

 恐らくあと少ししたら攻撃を仕掛けてくる、メノウは確信した。

 ショーナと馬のアゲートを吊橋から戻らせる。

 吊橋の上での戦いに巻き込ませないために。


「…お前、名前は?」


「ミーナ、『猫夜叉のミーナ』だ!」


 そういうと、ミーナが棒を構え突進してきた。

 小手調べとばかりに、棒で連続突きを繰り出す。

 ミーナの連続突きを軽く避け続けるメノウ。

 それを見たショーナは少し疑問に感じた。


「(さっきアイツは『自分がブルーシムより強い』と言っていた。けどあの戦い方ではとてもそうは見えないぜ…)」


 ミーナの今の戦いを見る限り、どうしてもブルーシムより強いとは思えない。

 単純に直線的な攻撃を連続して繰り出すだけなら、ブルーシムの重い一撃の方がはるかに強力だ。

 しかし、ショーナかそう思うのも仕方がない。

 幅の狭い吊橋の上での戦いとなるとどうしても三次元的な動きの戦いは難しい。

 となれば、その攻撃はどうしても単調にならざるをえない。

 攻撃を受けるメノウは、攻撃を仕掛けるミーナの動きをほぼ予測し、避けることができるのだ。


「全部避けたか、結構やるじゃない」


「あんなもの全部当たったら、たまったものでは無い!」


「なら当ててやるよ!」


 そう言うと、ミーナが再びメノウに向かって突進する。

 吊橋の両側の手すりのロープを足場代わりとし、身軽な動きでメノウを翻弄する。

『猫夜叉のミーナ』の名前の由来はこの身軽さにある。

 猫のような素早さ、身軽さで敵を翻弄し混乱させたのちに敵を倒すのだ。


「確かに早いが、見切れんほどでも…」


「そうかな!?」


 ミーナが棒を、メノウの頭上から思い切り叩きつける。

 当然、その攻撃もメノウは避けた…はずだった。

 だが…


「あ、かぁ…!」


 頭上からの攻撃をメノウは体を右に移動させることで避けた。

 しかしその瞬間、ミーナの持っていた棒が割れ、メノウの横腹に叩きつけられた。

 脇腹を抑え、思わずその場にひざまずくメノウ。


「なんだ!あの棒!?」


「この棒は内部に特殊合金製の極細糸(ワイヤー)を通した特性の三節混さ!」


 三節混とは多節混の一種。

 非常に簡単に説明するならば三個連結したヌンチャクのようなもの。

 しかしミーナの三節混は特殊な仕組みが施してあるのだ。

 通常は棒状態で闘い、いざというときは三節混状態で戦うこともできる。

 その最大の利点は棒形態を警戒した相手の意表を付けるというところだ。

 事実、メノウも棒形態での攻撃を避けたつもりが多節混状態での攻撃を受けてしまった。


「さすがのアンタも、極東の武具である三節混までは知らなかったようだね」


「ま、まさかワシが攻撃を受けてしまうとはのぅ…」


「まあ知らなくても当然だけどな!」


 極東には珍しい武術や武器がある。

 いつか勉強しよう。

 そう考えるメノウ。


「極東か、『勉強する』必要があるのう…」


 よろよろとメノウが立ち上がる。

 横腹を抑え、顔をゆがめている。


「(そう言えば、俺はメノウがまともに攻撃を受けているのを一度も見たことが無い…)」


 この時ショーナは思った。

 今まではメノウの超人的な攻撃力のみを見てきた。

 しかし、その防御力は知らなかった。

 もしかして、防御力そのものは普通の子供と変わらないのか…?


「中々扱いづらそうな武器じゃ…お主、あのブルーシムとかいうやつより数段強い…」


「ありがとう、よ!」


 ミーナがさらに攻撃を続けるべく間合いを取る。

 メノウも同じく間合いを取る。


「(クソッ!俺は見てることしか出来ねぇのか!)」


 ショーナが心の中で叫ぶ。

 今、ショーナの下には以前にマスリの町の基地から拝借した剣がある。

 だが、素人がいくら剣を振るっても素早く身軽なミーナに当てることはできないだろう。

 下手に使っても、メノウに当たりかねない。


「(情けねぇ…)」


 そんなショーナをよそに、二人の戦いは激化していた。

 先ほどの一撃以降、多節混による攻撃を警戒するようになったメノウ。

 それによりミーナも攻めがし辛くなっているのだ。


「ここは逆に…正面からいくよ!」


 攻めかねていたミーナが痺れを切らし、メノウに飛び掛かる。

 メノウが少し後ろへ小さく後退した。

 と、その時だった。



 二人が戦場としていた吊橋が突如爆発したのだった。



 轟音と共に、崩れ落ちる吊橋。

 残骸が谷底の激流に落ちていくのが確認できた。

 爆風で吹き飛ばされるショーナとアゲート。


「メ、メノウ!」


 急いで谷底を覗き込むショーナ。

 しかし、あまりの深さにメノウがどうなったのかは確認できなかった。

 誰が橋を爆破したのか、あのミーナか?

 いや、爆発はミーナとメノウが激突するまさにその瞬間だった。

 自身が巻き込まれる瞬間に爆発などさせないだろう。


「嘘だろ…」





 ----------------




 少し時間が経ち、夜になった。

 あれからショーナはかつて吊橋のあった場所で待ち続けた。

 谷底に降りようとも考えたが、切り立った崖と激流に阻まれそれも無理だった。

 降りれるような場所もない。

 待ち続けても、メノウは姿を現さなかった。


「まさか、メノウは…」


 たき火の火を見ながら、最悪の事態を想定する。

 いくらメノウとて、あの爆発では…


「いや、そんなはずねぇ!」


 不安を振り払うべく大声で叫ぶショーナ。

 食料を一心不乱に食べ不安を消そうとする。

 だが、一度思った疑念は消えなかった。


「メノウ…」


 そう言うと、どっと一気に疲れが湧いてきた。

 ショーナは深い眠りにおちた…




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